Products DNA -ものづくりの系譜-

今も昔もこれからも、「顧客志向」こそバッファローのDNA。無線LAN20周年記念『Products DNA』対談。

下村:今年、バッファローが初めての家庭用無線LAN商品を発売して20周年を迎えます。今回はその記念すべきタイミングに、バッファローにおける無線LANの創成期をつくった松浦フェローとこれまでの歴史を振り返るとともに、これからの無線LANの展望を話していきたいと思います。

松浦:私が入社した1996年は、無線LANの通信規格「802.11」がちょうど定まりかけた頃でした。今でも思い出すのは、面接で「入社したら無線LANの新規商品を手掛けたい」と当時の経営陣にアピールしたこと。まさか本当に担当することになるとは思いませんでしたが(笑)。

下村:初めての商品「AIRCONNECT」が世に出たのはそれから3年後、99年のことでしたね。

            

松浦:ええ。「AIRCONNECT」では当時の商品開発としては異例の5~6人でチームが組まれて始まりました。当時の社長であった創業者の牧から何度も言われたのは「家庭用として迎え入れてもらうために、子機単体で3万円を切る、システムで10万円を切る価格にする」ということでした。バッファローを含めたメルコグループが掲げる4つの理念のひとつに「顧客志向」があります。メーカー視点ではなく、お客さまが真に必要とされる商品とはなにかという視点から、ものづくりに真摯に向き合っていくというもの。無線LANの開発もその視点からスタートしています。無線LANというお客さまのライフスタイルを大きく変える可能性を秘めた商品をいち早く届けることはもちろん、一般的なご家庭でも十分にご購入いただける価格に抑えなくてはなりませんでした。そのために採用した手法が有線LANの筐体をほぼそのまま流用するというものでした。社内からは「弁当箱」なんて言われ方もしましたね(笑)。

            

下村:今でも「AIRCONNECT」における「弁当箱」の筐体はバッファローで語り継がれていますね。

                

松浦:開発チームとしては不本意でしたよ。どうせなら新ジャンルの商品にふさわしい新たなデザインの筐体をつくりたかった。ですがそれでは商品価格に跳ね返ってしまう。お客さまにとって本当に喜ばれる選択はなにかを考えて、つらい選択ですが決断をしました。

            

下村:フィロソフィーに従ったということですね。そこから現在まで続く「AirStation」シリーズが生まれたわけですね。

            

松浦:「AirStation」開発のキーワードは「インターネットシェアリング」と「ホームゲートウェイ」です。ひとつのインターネット回線を複数のパソコンで共有すること、そしてCATVやxDSLといったあらゆるネットワークと接続し、ご家庭にインターネット環境を提供することを目指して開発された商品です。

                

下村:常に最新の規格にいち早く対応してきたこともバッファローの歴史であると思います。「802.11g」の規格が発表された当時、世界に先駆け「802.11g」に対応した「AirStation」を開発・発売したことも話題になりましたね。私自身、まだ学生の頃に初めて手に取ったバッファローの商品がこの「802.11g」対応の「AirStation」でした。

            

松浦:世界初にこだわったというよりも、お客さまに一日でも早く新しいご提案をしたい。その強い想いの結果が世界初の商品化ということであったわけです。「顧客志向」を貫いた結果であるといえると思います。

                

下村:一方で、使いやすさにこだわりぬき、「かゆいところに手が届く」機能を開発することもバッファローらしさのひとつです。ワンボタンで接続設定から暗号化までを行う「AOSS」の機能をバッファローが開発したことはその最たる例ではないでしょうか。

            

松浦:「AOSS」が生まれる少し前、「802.11」規格におけるセキュリティーの脆弱性が指摘され、法人がこぞって無線LANの利用を取りやめた時期がありました。「802.11」で対策の議論が始まりますが、結論を出すのに時間がかかります。その対策が業界団体の「WPA/WPA2」になるのですが、設定が煩雑になっていきます。そこで生まれたのが「AOSS」でした。ワンボタンで高いセキュリティーを誇る通信環境を構築できるこのシステムは、安心して無線LANを利用できるとお客さまに高い評価をいただきました。

                

下村:今では携帯用のゲーム機にも搭載されているほど一般化された機能です。既存の規格を利用するだけではなく、業界の仕組みを自分たちからつくりに行ったという点で極めてバッファローらしいエピソードだと思いますね。

松浦:現在下村さんが開発に携わっている「Air Station connect」。無線LANの親機と中継機が連携して家中すみずみまで電波をいきわたらせる「メッシュネットワーク」の考え方は、単に電波の強力化、高速化を目指すのではなく、既存の技術を組み合わせることでお客さまに便利な利用環境を提供するものです。こうした商品開発も「顧客志向」の理念が体現されたものだと思いますね。

                

下村:ありがとうございます。私自身バッファローで開発に携わるようになって以来、ミーティングの場で何度も「顧客志向」の言葉に触れました。議論の中で迷いが生じると全員が立ち返る、いわば「原点」ですね。「AirStation connect」は1台の無線LAN機器におけるスペック上の通信速度を追い求めるのではなく、お客さまそれぞれの利用環境で快適な通信を「実感」してもらうためのシステムです。寝室や書斎、リビングにダイニングなど、スマートフォンの普及により自宅で無線LANが必要な場所はありとあらゆる箇所に広がりました。そうした点から、お客さまにとって本当に必要なのは、必ずしも「強力な電波」だけではなく、デッドエリアのない「すみずみまで届く電波」だと考えたわけです。「AirStation connect」は、親機がやりとりする電波を文字通り「中継」する中継機を自宅の各所にセットすることで、良質な電波を家中に届けます。また、親機と子機がセットになったパッケージをご用意し、セッティングの労力を最小限にとどめて最適な環境を提供できるようにしています。

            

松浦:バッファローのDNAとは、「提案」にこそあると思います。単なるハードウェア生産だけなら、必ずしもバッファローが手掛ける必要はありません。そこにどんな「提案」があるのか「、提案」を生むためのどんな「工夫」が秘められているかにこそバッファロー「らしさ」があります。そうした意味で「Air Station connect」も十分バッファローが手掛けるにふさわしい商品であると思いますね。

                

下村:近日中にも最新の無線LAN規格「Wi-Fi6(11ax)」に対応した商品を発売します。この規格の大きな特徴のひとつは、ひとつのルーターに多数の機器を接続したとしても速度を低下させることなく高速かつ安定した通信が可能になるということ。白物家電をはじめとしたさまざまな電化商品がインターネットと接続する「IoT」の時代がまさに到来しつつある今、「802.11ax」の規格に対応した無線LAN商品を国内法に準拠した形で発売することは、「お客さまへの新しい提案」を旨とするバッファローにとっての責務であると考えています。この大きな可能性を持つ規格を今後どのように料理していくのか、今から胸の高鳴る思いですよ。

            

松浦:現場のみなさんがこれからもバッファローらしさあふれる商品をつくり続けてくれることを大いに期待しています。

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