スマートフォンなどの充電に欠かせないモバイルバッテリー。近年、従来のリチウムイオン電池の弱点を克服し、より安全性の高い「半固体電池」が注目を集めている。
各社から新製品がリリースされる中、バッファローも半固体モバイルバッテリーを発表した。 新しい技術の採用にあたり、バッファローはどのようなアプローチをとったのか。自社の評価基準にとどまらず、第三者機関を巻き込んだ念入りな部材選定と開発の裏側を、商品企画担当の根本と、開発担当の河端が語る。
リチウムイオン電池の課題と「半固体」という新技術
—— 新技術である「半固体電池」を採用したモバイルバッテリーがついに発表されました。改めて、この技術に着目した理由を教えてください。
根本: モバイルバッテリーは私たちの生活に欠かせないものですが、従来のリチウムイオン電池は、万が一の過度な衝撃や破損時に発火する危険性をゼロにすることは困難でした。ニュース等で事故の報道を目にされた方も多いと思います。
そうした中、内部の電解液をゼリーのようなゲル状に保持することで、発火や液漏れのリスクを大幅に低減した「半固体電池」が実用化レベルに達しました。お客様にさらに安全な製品をお届けするために、この新技術の採用を検討することは必然の流れでした。

コンシューマ
マーケティング部
根本 将幸氏
「燃えにくいからこそのリスク」。カタログスペックを疑う技術者の視点
—— 画期的な新技術の登場ですね。すぐに採用の判断となったのでしょうか。
河端: いえ、そこは慎重になりました。開発の人間というのは、基本的に「新しい技術だから、カタログスペック通りに安全だろう」とは信じない生き物なんです(笑)。
確かに半固体電池は安全性を飛躍的に高める技術ですが、市場に出たばかりの段階では、長期間の過酷な使用環境下でどのような未知の挙動を示すか、誰も完璧には予測できません。
根本: 商品企画としても同じです。実は採用検討の初期段階で、いくつかの電池メーカーから半固体電池の安全性をアピールするデモ映像を見せられたんです。従来のリチウムイオン電池と半固体電池、それぞれに釘を刺す「釘刺し試験」の比較映像でした。

周辺機器開発部
河端 俊徳氏
—— どのような映像だったのですか。
根本: 従来のリチウムイオン電池は、釘を刺した瞬間にバッテリーから火が噴き出して激しく燃え上がりました。それに対して、半固体電池は釘を深く刺しても「何も起きない」んです。確かにすごい技術ですし、電池として飛躍的に安定していることは映像を見てよく分かりました。 ……だが、待てよ、と。
—— 待てよ、ですか。
根本: ええ。半固体電池は新しい技術ですが、中身が外気に触れれば内部で化学反応が起き、それによってガスが発生するリスクは理論上残ります。
従来のリチウムイオン電池なら、破損時に、激しく発火することで逆に「危険だ」とすぐに気づいて対処できます。しかし、半固体電池のデモ映像は、釘が刺さって中身が完全に露出している異常な状態なのに、発火しないからこそ「静かなまま」だったんです。
もし実生活において似たような破損が半固体電池で起き、「燃えない」からこそお客様が異常に気付かず、そのまま手元に置いて様子を見てしまったらどうなるか。気付かないまま、長期間、生活空間に意図していないガスが発生し続けることにならないか。
映像の裏にあるこの「逆説的なリスク」に気付いた時、ハッとさせられました。
未知のリスクだからこそ、第三者機関と徹底検証する
—— 優れた技術だからこそ生じる、新たな死角ですね。
河端: おっしゃる通りです。セルが破損して空気中の水分と反応した場合の挙動は、既存の安全規格ではまだ十分にカバーしきれていません。
未知の要素を含む新技術だからこそ、自社の社内基準だけで「ヨシ」とするのはメーカーとしての慢心です。そのため、この分野の高度な分析能力を持つ国内の大手第三者機関の協力を仰ぎ、客観的なデータでリスクを潰し込むことにしました。
湿度約100%、72時間。極限環境での試験をクリアした、確かな信頼性。
—— 外部機関では、どのような検証を行ったのですか。
河端: 我々が求めたのは、通常の生活環境ではまず起こり得ない「最も過酷な状況」でのテストです。
バッテリーのセルをあえて破壊して内部を完全に露出させ、そこに飽和水蒸気(湿度ほぼ100%の空気)を丸3日間(72時間)にわたって送り込み続けるという試験を行いました。もし成分が空気中の水分と反応してガスを出すのであれば、意図的に最悪の条件を整えたこの環境下で、必ず検出されるはずです。
—— その過酷な試験の結果はどうだったのでしょうか。
河端: 極微量の成分まで特定できる「イオンクロマトグラフ」という精密分析機器を用いて測定を行っていただいた結果、懸念された有害なガス成分は「検出限界以下」でした。
つまり、精密機器の限界まで測定しても検出されなかったということです。この第三者機関による客観的な実測データを得て、初めて「この部材ならお客様に安心して提供できる」と確信し、開発を進めました。
根本: 発売のタイミングとしては少し後発になりましたが、私たちにとってはこの「外部機関と連携した念入りな調査と部材選定」の期間こそが、バッファロー製品として世に出すために不可欠なステップでした。

※これは一般的な使用環境での再現ではありません。製品の基礎的な耐久性を検証するための、当社規定の条件下における極限負荷テストです。 ※本試験結果は、実使用環境における無破損・無故障を保証するものではありません。
スペック上の数値よりも、実生活の「安心」を届ける責任
—— 安全性については、これ以上ない確かなエビデンスが得られたわけですね。一方で、最近のモバイルバッテリー市場では「半固体電池は長寿命」というアピールも多く見受けられますが。
根本: 半固体電池は確かにその技術特性から、長寿命に期待できる面があります。実は、私たちも電池メーカーから、「サイクル寿命2,000回」いった電池自体の仕様を入手しています。ですが、検討を重ねた結果、バッファローとしてその数字をそのまま利用し、本商品の製品仕様やプロモーションに採用することはできない、と判断しました。
—— 電池メーカーから正式なデータが出ているのに、あえてその数値を採用しなかったのですか?
根本: はい。その試験の基準は、JIS規格などで定められた試験基準に基づいたものです。しかし、実のところ電池への負荷を最小限に抑えた、限定的な条件下における試験数値にすぎません。具体的には「5時間かけて充電し、5時間かけて放電する」といった非常に穏やかな試験内容なんです。
その条件下であれば、半固体電池のポテンシャルから「2,000回」という長寿命は実現可能です。 しかし、それは20W~30Wの急速充電が当たり前となった、現在のモバイルバッテリーの実利用シーンを想定すると、あまりに乖離しているのではないかと考えました。
—— 実生活での使われ方を考慮すると、その数字は「正しくない」と。
根本: はい。このような実際の使われ方とかけ離れた試験結果の数値をベースに「長寿命」を謳うことは、お客様に誤った認識を与えてしまう可能性があります。その結果、本来は寿命を迎えているバッテリーを「まだ大丈夫」と使い続けさせてしまうことにつながりかねない。半固体技術によって「安心」をお届けするにあたって、それは、私たちが最も避けなければならないリスクだと考えました。
—— あくまで「現実の安全性」を優先したのですね。
根本:もちろん、この半固体技術自体のポテンシャルを否定しているわけではありません。実は現在、販売する製品と同等の先行生産版を入手してテストを継続しているのですが、私たちの想定よりも劣化が進みにくいという非常に良い結果が出ています。特定の数字を独り歩きすることは避けたいですが、製品寿命の面でも、この半固体技術には大きなポテンシャルを肌で感じています。
—— 誠実な判断と検証があってこその、自信ですね。
根本: ええ。「半固体電池採用」や「理論上の寿命」という言葉に寄りかかるのではなく、万が一の際の安全性の根拠をどこまで掘り下げて検証したか。カタログ上のスペックで競うことより、そこにある「誠実さ」でお客様に応えたい、それがバッファローとしての姿勢です。
河端: モバイルバッテリーは、大切なご家族のいるリビングなどで日々使われる製品です。だからこそ、新しい技術を採用する際はカタログスペックを鵜呑みにせず、外部の知見も取り入れながら「見えない部分の安全」を徹底的に確認する。それが、メーカーとしての責任です。
根本: 実測データに基づき、私たちが自信を持ってお届けする半固体モバイルバッテリーです。どうぞ、毎日の生活で安心して使い倒してください。

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