日経BPガバメントテクノロジー 2024年秋号
自治体ITシステム満足度調査 2024-2025 ストレージ部門 1位
[調査概要]
「日経BPガバメントテクノロジー 自治体ITシステム満足度調査」は、日経コンピュータ誌が企画・実施した「顧客満足度調査」(対象は民間企業を含む1万2122社・団体の情報システム部門)のうち、官公庁・自治体の計146団体からの回答を集計したもの(調査票発送数は1622団体)。調査の実務は日経BPコンサルティングが担当した。官公庁・自治体に限定した回答率は9.4%。調査期間は2024年4月1日から5月21日まで。郵送法で実施した。
機能を厳選して安定稼働を最優先に
徹底した顧客調査で取捨選択
「ストレージ」部門で自治体から最大の支持を集めたのは、法人向けNAS(ネットワーク接続型ストレージ)「テラステーション」の発売から20周年のタイミングで初受賞となったバッファローである。従来から定評のあったコスト競争力に加え、無料の遠隔管理サービス「キキNavi」、トラブル発生時にもデータを復元できる「スナップショット機能」、ADEC認証に対応した確実なデータ消去など、自治体が最も重視する「安定稼働」へのこだわりが結実した。
導入規模ごとに多様な製品群
OSはLinux、Windowsに対応
一般向けストレージ製品などで知名度が高いバッファローは、2004年に法人向けNAS「テラステーション」の初代製品を発売した。同社の富山強氏は、「企業などの部門単位で購入しやすいように、1テラバイトの容量を確保しつつ、全額経費計上できる10万円以下の価格に設定して、まだ認知度が低かったNASを市場投入しました」と当時をなつかしむ。
その後、デスクトップ型やラックマウント型など、導入規模に応じた製品ラインアップを取り揃ええ、2023年度には出荷台数が累計125万台を突破した。「簡易サーバー機能など、海外ベンダーが採用した多機能化に追従せず、ストレージの安定稼働にこだわり続けた姿勢が受け入れられたと見ています」と、富山氏は受賞の喜びをかみしめた。
自治体におけるNASの用途は、「支所など小規模な拠点ではファイルサーバーに使われ、大規模な拠点では、サーバーやクライアントPCのデータ・バックアップ用として主に用いられています」と富山氏。小規模拠点向けに提供しているデスクトップ型の「TS3020シリーズ」では、容量が2テラバイトで税抜10万円以下の機種もある。大規模拠点向けの「TS71210RHシリーズ」などではラックマウント型も用意され、240テラバイトの機種も揃ええている。
NASのOSは、Linuxベースの独自OS、あるいはWindowsサーバーと相性が良い「Windows Server IoT for Storage」を選べる。売れ筋は中規模拠点向けの「TS5020/WS5020シリーズ」で、監視カメラで撮影した動画データの保存先などにも使われている。
世界基準のデータ消去機能
遠隔監視サービスは無償で提供
富山氏が強調する「ストレージデバイスとしての安定稼働」へのこだわり。それを支える主な機能を紹介しよう。
バッファローは2023年、「データ適正消去実行証明協議会」(以下、ADEC)の認証を取得したデータ消去機能を大部分の機種に搭載した。既存の購入者でも、ファームウエアの更新により無償で機能追加できる。これは、OSなどからアクセスできない領域も含めたHDD全体に一定パターンを書き込み、データを上書き消去する方式である。この機能により、HDD廃棄時の確実な消去が実現する。
この方式は「米国国立標準技術研究所」(NIST)が定めたデータ抹消の国際規格に準拠したもので、ADECはその対応製品を認証する第三者機関である。総務省が地方公共団体向けに策定した「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」にも対応した消去機能であるため、「官公庁の積極的な採用につながっています」と、富山氏は語る。
2019年からは、技術者不足に悩む顧客の管理負担を軽減する狙いで、遠隔地からインターネット経由でNASの監視、簡易操作を可能にするリモート管理サービス「キキNavi」を無料で提供している。NASの稼働状況をWeb画面で確認できるほか、障害が発生すると通知メールが届いて、障害内容を確認できる。保守管理会社が複数の法人顧客の機器を管理する場合にも便利な機能だ。
キキNavi では、トラブル発生時などの再起動やシャットダウン、ログ取得、ファームウエアのアップデートなどを遠隔操作できる。ユーザー追加、共有フォルダー作成、アクセス権限設定などの作業も可能である。「これらの設定データをキキNavi側へ自動で保存しておき、NASの交換時にそのデータを引き継ぐこともできます。現在までに累計1万社、9万台を超える利用に達しています」(富山氏)
安心のデータ復旧機能
ランサムウエア対策を強化
HDDの故障やサイバー攻撃に備える機能も充実している。4台以上のHDDでディスクアレイを構成する多くの機種が、出荷時に「RAID 6」に設定され、HDD2台までの同時故障であればHDDの交換によりデータを復旧できる。また、NASとキキNaviのそれぞれにおいてログイン時の2段階認証に対応し、不正アクセスを防止する。
2019年には、誤って削除、上書きしたデータを復元できる「スナップショット機能」を、大規模拠点向けの機種に搭載し、2023年からは中規模拠点向け機種にも展開した。この機能により、ランサムウエアの被害を受けてデータが暗号化された場合でも、その前の状態に復元できる。この機能では、指定したタイミングで定期的に復元ポイントを作成し、ファイル構成を記録しておくことで、トラブル発生前の状態に迅速に戻せる。
今後、ランサムウエアの感染拡大を防ぐ目的で、「異常ファイル操作検知機能」を追加する予定だ。NASに保存されたファイルの拡張子を監視し、攻撃を受けた疑いがある場合はメールなどで通知が届く。スナップショット対応機種の場合は、復元ポイント間の変化量も監視して、攻撃を受ける直前の状態に復旧できる。
そのほかの故障対策としては、前に紹介した「キキNavi」の有料オプション「キキNaviクラウドバックアップ」がある。これを利用することで、クラウド環境にデータや設定情報をバックアップでき、データの復元も可能になる。
バッファローは、安定稼働につながる多彩な機能を提供する一方で、必要性の低い機能の搭載は見送ることで、コスト競争力を維持してきた。「国内拠点の技術者が顧客への訪問を重ね、機能の取捨選択を判断するためのヒアリングを入念に継続してきました」と富山氏は語る。例えば、「キキNaviでは、NASの状態監視を必要十分な間隔に間引いたり、CPU消費率のグラフィック表示機能は見送ったりすることで、無償提供につなげました」(同氏)
このほか、自治体の強い要望から生まれた取り組みとしては、故障時にバッファローから交換用HDDを送付する際、古いHDDは自治体が処分し、バッファローに返送しなくてもよい保守メニューもある。また、7年の長期保守サービスも用意した。
こうしたマーケティングの強化により機能を厳選した、「かゆいところに手が届く製品」がバッファローの躍進を支えている。