日々のSNSから、動画視聴、ゲーム、そしてこれから広がるAI利用において、通信速度は日常のクオリティを大きく左右します。「iPhoneは毎年最新型に買い替える!」というガジェット好きの方も多いと思いますが、そのiPhoneの性能を最大限に引き出す「足回り」、つまりWi-Fiの性能アップはちゃんとできているでしょうか?
Wi-Fiは、どんどん進化しているのに、そのままでいいの?
最新のiPhone 16シリーズは、無印もProも含めて全機種が最新規格『Wi-Fi 7』を搭載しました。台数の多いiPhoneにWi-Fi 7が搭載されたということは、今後のiPadや、Macはもちろん、他のパソコンやスマホにも、一気に普及が始まるということでもあります。
今、Wi-Fiルーターを新しいものに更新しておけば、iPhone 16シリーズをきっかけに普及が進むであろうWi-Fi 7対応機器を快適に利用できるようになります。自宅への導入にはとてもいいタイミングです。
みなさんのご自宅では、どんなWi-Fiルーターをご利用でしょうか?
2012年以前の機器(Wi-Fi 4=IEEE 802.11n)は論外としても、2013~2018年までに導入された場合は『Wi-Fi 5』(当時は11acと呼ばれていました)という規格のはずです。その後、2019年に『Wi-Fi 6』、2022年に6GHz帯を使えるようになった『Wi-Fi 6E』、そして今年、3つの周波数帯の通信速度と安定性が向上した『Wi-Fi 7』が登場しています。
こう書くと複雑に見えますが、iPhoneなどスマホはどんどん高速化し、大量のデータを扱えるようになっているので、通信規格もそれに対応して進化しているということです。Wi-Fiルーターはつい長期間使い続けてしまう設備ですが、最新デバイスの利便性を享受するためには、定期的に更新すべきなのです。
今回紹介する、最新のWi-Fi 7対応のトライバンドルーター、WXR9300BE6Pは高性能だが、比較的リーズナブル。この支出で、高いお金を出して買うスマホやパソコンの性能を十全に引き出せるようになると考えると、安いものです。
通信速度が速い! ……だけじゃない!
では、Wi-Fi 7は何が優れているのでしょうか?
Wi-Fi7の理論的な最大通信速度は36GbpsでWi-Fi6の9.6Gbpsの約3.7倍に向上しています。また、WXR9300BE6Pは各帯域2ストリームの通信のため、現実的には帯域幅160MHzでの理論値は2882Mbps通信となっています。
単純に、通信速度が速いというだけではありません。現在の家庭でのデバイスの利用状況に合わせたさまざまなアップデートが施されています。家庭で使うのに、以前のままのWi-Fiルーターではダメな理由をご説明しましょう。
まず第1に、6GHz帯を使えることによる接続の安定性が一番のメリットです。6GHz帯はWi-Fi 6Eから利用可能となったのですが、Wi-Fi 7では、MLO(Multi-Link Operation)という複数の周波数帯を利用した通信が可能になっています。ある周波数帯で電波が途切れても、他の周波数帯にスムーズに切り替えることができるのもWi-Fi 7の特徴です。
みなさんのご自宅が住宅密集地だったり、マンションだったりすると、Wi-Fiに接続する時に他のSSIDが数多く見えるのではないでしょうか?
マンションや住宅密集地にお住まいの方は、Wi-Fiの設定をしようとすると、近隣のSSIDが画面に入り切らないほどたくさん表示されるのではないでしょうか? この状態は非常に電波が混雑していることを表しています。Wi-Fiはあるチャンネルを誰かが使っていたら、それを避けるようにしてチャンネルを切り替えることでお互いに邪魔をしないようになっているのですが、それでも数多の電波が飛び交っていると、それらを避け続けること自体がロスになります。
しかし、Wi-Fi 6Eから利用が始まった6GHz帯は混雑とは無縁です。大変混雑している2.4GHz帯、5GHz帯を混雑した幹線道路に例えると、6GHz帯は、言わばまだ利用者の少ない新設の高速道路のようなものです。これを利用しない手はありません。
遅延の少なさも、最新デバイスでのAR/VR体験やゲームなどでは大きな効果を発揮します。
通信効率も向上しており、チャンネルの割当ても細かくなっています。Wi-Fiに繋がっているのは昔のようにパソコンだけ、スマホだけではありません。部屋ごとのスマートスピーカー、テレビのセットトップボックス、部屋の温度センサーや、屋外のセキュリティカメラ等々、最近ではエアコンや冷蔵庫など調理家電なども含め、数多くの機器がWi-Fiを利用するようになっています。Wi-Fi 7なら、数多くのデバイスを接続することが可能です。
設定の引っ越しも簡単!
実際に、筆者の自宅に、WXR9300BE6Pを設置して試してみました。
WXR9300BE6Pは、高価で巨大なフラッグシップモデルWXR18000BE10Pに次ぐ『ハイパフォーマンスモデル』という位置づけ。サイズは小さいものの、上部に突き出した4本のアンテナが特徴的。
ちょっと派手な気もしますが、外部にアンテナを突き出した方が通信速度や、電波の届く範囲においてはやはり優位。内部的な干渉も避けられるそうです。アンテナの方向を自由に動かせるため、全方向にまんべんなく向けることもできますし、横方向に強く電波を吹いてその方向の部屋の通信速度を高めたり、上下に吹いて他の階の回線状況を良くしたりすることができるのです。
設定も、昔より簡単になっています。
特に、従来からバッファローのWi-Fiルーターを使っている人なら、無線引っ越し機能を使ってSSIDや暗号化キーをコピーしたり、「スマート引っ越し」を使ってスマホ経由で設定をコピーすることができるので、とても簡単。付属のマニュアルを読めば、機械の設定が苦手な人でも、簡単に設定できるでしょう。iPhoneの機種変と同じく、Wi-Fiルーターの機種変も簡単になっているのです。
なんと、自宅でのベストリザルトである1.1Gbpsをマーク
設置が終わったところで、簡単に速度を計測してみました。
筆者の自宅は光ファイバーの2Gの回線を契約しており、パソコンに直接有線接続して計測すると1Gbpsぐらいの速度を引き出せます。光ファイバー回線を導入しているご家庭なら、多くの場合、筆者宅と同様1Gbpsぐらいなのではないかと思います。実際に利用するWi-Fi環境としては、従来のWi-Fi 5のルーター使用のWi-Fi通信で(時間帯にもよりますが)200~600Mbpsぐらいという状態でした。もしかすると、通信プロバイダー提供の古いWi-Fiルーターを使っていると、20~30Mbpsというお宅もあるかと思います。これでは在宅勤務もままなりません。
実際にWXR9300BE6P経由でiPhone 16を接続して速度を計測してみると、なんと、接続してすぐになんなく1.1Gbpsを叩き出してくれました。
あっさりと、1.1Gbpsで通信。筆者の自宅の環境だと光回線自体の最大速度なので、これ以上は出ないほどの数値。
これはもう、有線の速度に肉薄しているので、筆者の自宅の環境では、これ以上は出ないという速度です。おそらくWXR9300BE6Pの性能としては、もっと速い通信が可能なのですが、あっさりと筆者の自宅に来ている光回線の上限速度に到達してしまいました。
広いお宅なら、メッシュ接続が有効
もし、自宅が広かったりして、1台では電波が届かないようなら、複数台のWi-FiルーターをWi-Fi EasyMeshで接続して、ネットワークエリアを広げることができます。対応機種を使えば、Wi-Fiルーター同士を高速なWi-Fi 7で接続できるから、高速で広いネットワーク環境を作ることができます。
今や、寝室や子ども部屋であったり、地方なら離れのような場所でもインターネット回線が必要だと思います。お子さんが自室でiPadを使って勉強するためには、離れた部屋でも高速な通信が可能であるようにしておく必要があります。
新しいiPhone 16シリーズを買ったら、その快適な速度をキチンと引き出すために、また今後増えていくWi-Fi 7機器を活かすためにも、早めにWi-Fi 7対応Wi-Fiルーターを導入することをお勧めします!
(村上タクタ)
Profile of 村上琢太(ムラカミ タクタ)
雑誌編集者・ライター。ThunderVolt編集長であり、その他のテック系メディアにも執筆する。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育……など趣味誌の編集者を経て、2010年からテック系のメディアを立ち上げる。2児の父。