ユーザーのニーズにアンテナを張り、
法改正を契機にサービスをスタート。
── まずはテレビ番組録画用HDDに新しく搭載された機能、「みまもり合図 for AV」について教えていただけますか。
畑田:「みまもり合図 for AV」は、これまでPC用HDDに搭載されていた機能「みまもり合図」の、テレビ番組録画用HDDに対応した新バージョンとなります。搭載されるHDDは今回新発売する「HD-LDS-Aシリーズ」と「HDV-SAMU3-Aシリーズ」です。 HDDは物理的なディスクにデータを書き込み・読み取りする構造上、劣化を免れることはできません。使用する環境や頻度にもよりますが、いずれは故障し、使用することができなくなります。「みまもり合図 for AV」は、HDD自体の劣化状態を検知し、故障をしてしまう前にユーザーにLEDでお知らせするものです。「みまもり合図」はPC用のHDDを想定した機能のため自己診断情報をクラウドにアップして異常を検知するものでしたが、「みまもり合図 for AV」はテレビ番組録画用HDDに搭載される機能のため、クラウドではなく機器内部で異常を検知してお知らせする仕様となっています。
浜武:劣化のお知らせ時にはオレンジのLEDを点灯させます。劣化状況の判断にはバッファローが多くのHDDを取扱う中で蓄積したノウハウをもとに、HDDへの通電時間や書き込み・読み取りの回数をはじめさまざまな基準を設けています。
── HDDにとって故障はいずれ訪れる避けられない宿命ということですね。一方、2019年1月より新しく「録画番組引越しサービス」がスタートします。こちらはどのようなサービスでしょうか。
浜武:テレビ番組の録画データはテレビとHDDの間で1対1の紐づけがなされていて、データをほかのHDDに単純に移し替えただけでは視聴できず、またHDDが故障した後では復旧も難しいものなんです。そこで、「みまもり合図 for AV」と対になるサービスとして、「録画番組引越しサービス」を開発しました。これは「みまもり合図 for AV」でHDDに劣化が検知された場合、バッファローに連絡・送付することで、新しいHDDに紐づけ情報ごとデータを移行するサービスです。
畑田:有償にはなりますが、1TBのHDDで13,000円(税抜)からと、一般的な価格と比べて安価な価格設定としています。録画した番組データは、内容によっては失われると二度と手に入らないものもあります。お客さまのかけがえのないデータを守るために、バッファローとして打ち出した新たな提案が「みまもり合図 for AV」と「録画番組引越しサービス」なんです。
※価格は2019年11月時点のものです。
── なるほど。開発にはどのくらいの期間を要したのでしょうか。
畑田:開発そのものは約1年ですが、構想はおよそ3年前から始まっていたんです。お客さまからのヒアリングをはじめとしたリサーチで、録画データがHDDの故障によって失われてしまうことへの打開策が求められていることはわかっていました。事実、録画用HDDに関してバッファローに寄せられる問い合わせの約4割近くがデータに関するものだったんです。そうした状況もあり何度も話し合いを重ねていましたが、著作権法の定めにより複製機能を持たない外付けHDDの録画番組の一時的なコピーは認められておらず、データ移行のサービスを展開することができなかったんです。それが今年5月の法改正で対象機器が見直され、複製機能を持たないHDDへのデータ移行が認められることになりました。
浜武:有正直、「今だ!」と思いましたね。対象機器さえ拡大されれば実現できるサービスとして青写真はすでに出来上がっていましたから、あとは実現に向けて全力疾走するだけです。20社以上の家電メーカーのテレビを解析し、紐づけの情報を探り当てて録画番組のデータ移行を可能としました。この間、わずか2ヵ月です。このタイミングで「みまもり合図 for AV」と「録画番組引越しサービス」を提供できたのは、ユーザーの声に常にアンテナを張っていたバッファローだからこそだと思いますね。
畑田:まだ世の中にない機能やサービスを提供していく。この姿勢はバッファローにとっていわばDNAです。とはいえ、どこにもない機能やサービスを世の中に浸透させていくのは並大抵のことではありません。胸を張って提供できる機能とサービスが仕上がったわけですから、ここから先はマーケティング担当の腕の見せ所だと思っていますよ(笑)。