── 「EasyStation for Backup」はファイルサーバー機能を持たないパソコンのバックアップ専用のハードディスクです。とても大胆な商品特性ですね。
商品企画段階で、日本全国の営業に同行し、さまざまな現場のユーザーにどのようなニーズが潜んでいるかを聞き取り調査してきました。その中で見えてきたのが、従業員数名のスモールビジネスやスタートアップ企業では、専任のネットワーク管理者を置く余裕はなく、ファイルサーバー機能を持った高機能なNAS(※1)を導入してもなかなか使いこなせていないという事実でした。
── 具体的にはどのようなタイプの企業でしょうか。
弁護士事務所や税理士事務所といったいわゆる士業。また、起業して間もないベンチャー企業やスタートアップ企業ですね。個人情報や企業の機密等、データが消失しては取り返しがつかないにも関わらず、バックアップが取られていないケースが非常に多いんです。小規模かつバックアップの必要性が高いお客様。ここにニーズがあると睨みました。そのニーズに対するバッファローからのアンサーが、使用推奨人数8名までのバックアップに特化した「EasyStation for Backup」というわけです。
── ファイルサーバーとしての機能を削除した理由を教えてください。
何度も検討を重ねたのですが「あえて削除する」決断をしました。まずは導入コスト面。今までになかった「バックアップ専用機」という新たな商品ジャンルを受け入れてもらうためにも、企業が購入に踏み切りやすい、減価償却が不要な10万円未満に価格を抑えることは必須でした。また、これまでのNASのアクシデント事例を検証していくと、ファイルサーバー機能に関わるものが非常に多かったんです。そこでバックアップ専用機としての信頼性を極限まで高めるためにも、あえての単機能にしました。この決断は、大胆ですが必然だったと思っています。
── コスト面、安全面の両面でのメリットがあるということですね。
はい。サルベージ業者に損失したデータの抽出を依頼すると、破損状況にもよりますが法人向けサービスでは概算で30万円前後の費用がかかる場合が多いようです。また、お客様にとっても業務の遅滞は避けられません。そういった事態へのリスクヘッジとして「EasyStation for Backup」は決して高すぎる投資ではないと思っています。
── バックアップ完了までの手順を教えてください。
ITリテラシーが低くてもミスなく使えるよう、可能な限り手順を省きました。具体的には、付属のUSBメモリーをパソコンに接続し専用のアプリケーション「Backup Navigator」をインストール。次にバックアップを行うかどうかを聞かれるので、YES。手順はこれだけ。わずか数クリックでバックアップが完了します。
── 逆にバックアップデータを復元する際はいかがですか?
同様に非常に簡単です。先ほどと同じUSBメモリーを復元先のパソコンに接続し「Backup Navigator」をインストール。「バックアップデータを復元しますか?」と聞かれるので、任意のパソコンを選んでOKをクリックすれば復元完了。こちらも数クリックの作業です。Wi-FiにおけるAOSSをはじめ、難しい手順を簡単にするのはバッファローのDNA。「EasyStation for Backup」にも、そのDNAは受け継がれています。
── UPS(※2)にも対応しているのですね。
例え小規模環境であっても、リスクヘッジのためのバックアップデータを損失することが許されるわけではありません。地震の多い日本でバックアップ専用機を謳う以上、対応は必須であると考えました。事実、東日本大震災以降、UPSの注目度が非常に高まっているんですよ。これ以外にも、「バックアップ専用機」という新ジャンルを市場に投入するわけですから、思ってもいなかった要望が生まれることは充分あり得ます。そういった要望はきちんと精査して、ファームウェアの更新、「Backup Navigator」のアップデートといった方法で対応していきたいと思っています。
── 「バックアップ専用機」という新ジャンル。ずばり勝算は?
高機能NASから機能を省いたのではなく、HDDに機能を付加したと考えれば充分に「足し算」がある商品です。これまで高機能NASやHDDではフォローできていなかったお客様のニーズに応えられる商品だと自負しています。今から反響が楽しみですよ。
※1 NAS…Network Attached Storageの略。ネットワーク接続型のハードディスク。
※2 UPS…Uninterruptible Power Supplyの略。停電時に一定時間電力を供給する装置。