── 新たに無線LAN親機のフラッグシップ「WXR-2533DHP」が誕生しました。
上部に設置した4本のアンテナが非常に特徴的な商品ですね。
内蔵アンテナにするという選択肢ももちろんありました。ですが、「あえて」外部アンテナを採用したのは「無線性能(つながりやすさと高速性)を最大限に引き出すため」、この点に尽きます。
無線LANの電波はアンテナを中心として同心円状に広がります。つまりアンテナを立てた状態では水平方向に、寝かせていれば垂直方向に同心円状の電波が飛ぶわけです。10年前であれば、パソコンを設置しているデスクに向かって電波が飛ぶように設定しておけば事足りたかもしれません。
しかし、現在の無線LANのニーズはスマートフォンに移行しています。スマートフォンの利用シーンは、ソファに座ったりベッドに寝転がったり、歩きながらということもあるでしょう。小さな筐体に内蔵しているスマートフォンのアンテナは向きによっても大きく感度が変わるので、横になっただけで途端に電波状態が悪くなることもあります。そうした送受信のストレスを取り除くためには、必然的に家屋の隅々にまで電波を行き渡らせることが必要です。
「WXR-2533DHP」の外見的な特長でもある4×4のアンテナは、細かく角度を変更することで同心円状に広がる電波の方向を調整することが可能です。つまりご家庭の間取りに合わせて、まるでオーダーメイドのようにオンリーワンの電波状態に整えることができるのです。
── アンテナを一直線に並べた形状も革新的です。
四隅に並べるより一列に並べた方が高効率なのです。ただ、アンテナ同士の間隔が短すぎると電波が干渉を起こします。「WXR-2533DHP」のアンテナ間隔は両端が8cm、中央が9cmとなっていますが、これは試作ボードに1cm間隔で穴を開けて固定し、電波状況を測定することで得られた最適値。比較的大型の筐体を採用しているのも、高速化したCPUを放熱するためにしっかりと内部のエアフローを確保していることや、コスト的には苦しい決断でしたが大型ヒートシンクを装着していることも理由のひとつです。
「WXR-2533DHP」はバッファローにおける無線LAN親機のフラッグシップですから、過酷な状況でも正常に動作する信頼性を確保しなくてはなりません。一見すると見栄えを重視したデザインワークに見えるかもしれませんが、そのひとつひとつに性能に紐づいた「理由」が隠されているのです。
── 原寸大の「アンテナ向き調整用ガイド」が提供されているとは、ユニークですね。
アンテナ設定の自由度を大幅に向上させたことで、4本のアンテナをどの角度に調整すればよいのかわからないという状況も充分に考えられます。
そこで「バッファローが提案するオススメの角度」を原寸大で紹介したシートをWebサイトにアップしています。これは、バッファローが性能測定に使用しているモデルルームで、4本のアンテナをどの角度に設定すれば最も高いパフォーマンスが得られるかを、調整と測定を繰り返すことで得られた答えです。
アンテナの間隔もそうですが、「WXR-2533DHP」は4×4のアンテナという今までにない特性を持つ商品だけに、調整と測定にかけた労力はケタ違いでしたね。朝に作業を始めて、ふと気がついて外に出てみるともう真っ暗…という日を何度繰り返したか知れません。
── 性能だけでなく使いやすさにもこだわっている印象があります。
「WXR-2533DHP」は4ストリームMIMOに対応し、802.11acに準拠。5GHz帯の規格値では1733Mbps、実効スループットでも1258Mbpsという、バッファローでも史上最速の通信速度を誇る文字通りのフラッグシップです。ですが、本当の意味で求めたのは速度ではなく、「使いやすさ」と「信頼性」なのです。スペック上の速度だけを求めるなら、アンテナ調整ガイドなど不要ですし、コストのかかる大型ヒートシンクを採用する必要もない。ですが、「この子(WXR-2533DHP)」がそれぞれのお客様のご家庭で長く役に立つためには、欠かすことのできない作業であり、部品です。速度は使いやすさを向上させる、ひとつの要素でしかありません。
── まるで「わが子」を語るかのようですね。
開発も子育ても同じだと思います。手塩にかけた分だけちゃんと応えてくれる。その点、「WXR-2533DHP」は胸を張って手間ひまをかけたといえる商品です。どこに嫁に出しても恥ずかしくない商品に仕上がっていると思います。