プロジェクトメンバーとのコミュニケーションが生む、
必然のデザイン。
── 「WTR-M2133HPシリーズ」と「HD-LDU3シリーズ」、2つの商品で「レッド・ドット・アワード」を受賞するという快挙ですが、まずは受賞の感想を聞かせてください。
池上:「レッド・ドット・アワード」は、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン・デザイン・センターが主催する世界的なデザイン・コンペティション。中でも「プロダクトデザイン賞」は幅広い工業商品を対象にそのデザインの品質を競い合うものです。今回「WTR-M2133HPシリーズ」と「HD-LDU3シリーズ」という2つの商品で受賞を果たすことができましたが、まずはバッファローのデザインフィロソフィが受け入れられたことが素直に嬉しかったですね。
── 「WTR-M2133HPシリーズ」の特長とはどのようなものでしょうか。
池上:「WTR-M2133HPシリーズ」はバッファローの家庭用商品としては初となる3本の電波「トライバンド」に対応したWi-Fiルーターです。5GHzが2本、2.4GHzが1本という3本の電波に対応し、機器側が自動で最適な電波を判別。通信の混雑状況を判別して空いているバンドへ誘導する「バンドステアリング」で混雑を解消し快適な通信を実現します。通信の優先順位を設定できる「アドバンスドQoS」の「4Kモード」にも対応しており、これからの4K映像をより安定して視聴することが可能です。安定した大容量通信が求められる動画配信サービスでもストレスなく楽しめる、まさに次世代のWi-Fiルーターといえるでしょう。
── デザインコンセプトはどのようなものだったのでしょうか。
池上:これまでのWi-Fiルーターは、家具の裏や部屋のすみに「隠すもの」という固定概念がありました。ですがそれでは家具や壁に遮断された電波が住宅のすみずみまで届かないのです。そこで発想を転換し、目に見える場所に置いても違和感なくインテリアにマッチするデザインにすることを心がけました。細かな装飾に金属を採用したり、塗料もパール調のホワイトを特別に調合するなど、細部にもこだわったデザインを施しています。
── 丸い筐体と中央のアンテナが非常に印象的ですね。
池上:丸い部分からは360?度全方位に向けた無指向性の2本の電波が発信されています。一方で中央の可動式アンテナは指向性の電波を担っており、大容量のデータをやりとりするテレビなどに向けることで、よりスムーズな通信を実現する仕様です。これまでのWi-Fiルーターのスタンダードとは一線を画すデザインですが、備わっている機能とコンセプトから導き出された、いわば「必然のデザイン」なんですよ。
── 「HD-LDU3シリーズ」の特長とはどのようなものですか。
池上:従来品(HD-LCU3シリーズ)と比較して26.5%もの小型化に成功しているという点が大きな特長です。また、小型化のために筐体とハードディスクの間の空気層を減らしたことで、ハードディスクからの発熱をより効果的に放熱できるようになりました。これによって、音漏れの原因となる通気孔をなくし、さらに防振用シリコンゴムを用いて内部をフローティング構造にすることで、動作音と振動音の両面から静音性を強化しています。
── 「HD-LDU3シリーズ」におけるデザインコンセプトを教えてください。
池上:もっとも大きな命題として与えられていたのは、小型化をいかに実現するかということ。これまでのHDDの延長線上で、いかにプロダクトとして洗練させるかに重点を置きました。例えば、HDDは内部に回転するディスクを収納しているという構造上、極めてデリケートな機器です。そのため、直線重視のソリッドなデザインを施し、より繊細さを強調することで「大切にあつかわなくてはいけない」というイメージをデザインから導くことを目指しました。側面のスリットは放熱性を高めるためのあしらいですが、この細さも、放熱性と繊細さを両立するベストなバランスを求めて何度も試行錯誤を重ねています。ロゴについても、パソコンだけでなくテレビの周囲に設置されることを考慮して、必要以上の強調は避けモノトーンに仕上げることで周辺機器やインテリアとの調和を図っています。
── 今回の「レッド・ドット・アワード」受賞で、今後のプロダクトデザインになにか変化はありそうでしょうか?
池上:バッファローのプロダクトデザインの特長は、デザイナーのみで完結するものではなく、マーケティングや設計と何度も打ち合わせを重ねて、機能やコンセプトにフィットしたデザインをコミュニケーションの中から生み出す点にあると考えています。今回「レッド・ドット・アワード」を受賞したことは、いわば自分たちの歩んできた道が正しかったことが証明されたものだと思います。今後も「新しいスタンダードを作る」バッファローのDNAを大切にしながら、さらにバッファローらしいデザインを突き詰めていきたいですね。