2025.1.31
HDDの不良セクターとは?よくある症状、原因と対処法
データが保存できない、ファイルが開けないなど、PCや外付けHDDのデータトラブルが発生した際に考えられる原因の一つが、ハードディスク(HDD)の「不良セクター」です。一般にはあまり知られていない「不良セクター」とはどういうものなのでしょうか? 発生したらどう対処すればいいのでしょうか? 不良セクターが発生した時のよくある症状、原因と確認・修復・復旧などの対処法についてわかりやすく解説します。
1. 不良セクターとは
不良セクターとは、HDDやSSDに発生するデータ障害の一種です。このページではHDDの不良セクターについて解説します。
1-1. セクターと不良セクター
HDDには「プラッター」という円盤状の部品が内蔵されており、PC等のデータはここに保存されます。プラッターの保存領域は細かく分けられており、一つ一つの小さな保存領域のことを「セクター」といいます。データは複数のセクターに分散して保存されます。「不良セクター」とは、損傷や劣化によりデータの読み書きができなくなったセクターのことです。

1-2. 不良セクターが発生するとHDDはどうなる?
現在販売されているHDDの多くは、1つのセクターのサイズが512バイトまたは4096バイト(4KB)ですが、そのうちの1バイトでも読み書きができなくなるとそのセクターは使えなくなり、不良セクターとなります。
プラッター上にはあらかじめ予備のセクター(代替セクター)が用意されており、不良セクターが発生した場合には代替セクターに置き替わり、問題なく動作するように設計されています。
しかし、不良セクターが多くなると代替セクターへの置き換えができなくなるため、HDDのデータ障害が発生し、様々な問題が起こります。
2. 不良セクターの種類
不良セクターは、物理的不良セクターと論理的不良セクターに分類されます。
2-1. 物理的不良セクターとは
磁気ディスクの摩耗など物理的な損傷が発生してデータの読み書きができなくなったセクターや、製造時の不良により正しく動作しないセクターのことを「物理的不良セクター」といいます。物理的不良セクターは修復ができないため、数が多くなると、そのHDDは使用できなくなります。
2-2. 論理的不良セクターとは
HDDを強制終了させたり、ディスクの安全な取り外しを行わずに強制的にHDDを抜くなどした場合にセクターへの書き込みエラーが発生し、データに論理的な不整合が出ることがあります。このようなセクターのことを「論理的不良セクター」といいます。論理的不良セクターは多くの場合、修復またはHDDの初期化によって正常な状態に戻すことができます。
3. 不良セクター発生時によく見られる症状
不良セクターが多くなると、データの読み書きが正常に行われなくなり、以下の症状が発生します。
・ファイルが開けなくなる
・ファイルを開く時に時間がかかる
・データの読み書きが遅くなる
・PCがフリーズする
・PCが突然終了・再起動する
・異音が聞こえる
・PCが起動できなくなる
これらの症状が見られる場合は、不良セクターが発生している可能性があります。
4. 不良セクターが発生する原因
不良セクターが発生する主な原因として、以下のような例が挙げられます。
①HDDの製造段階で発生する不良セクター
HDDの製造過程において不良セクターを完全になくすことは困難なため、メーカーではある程度の不良セクターができることを前提に、問題なく動作するように設計して製造・出荷しています。しかし製造過程において不良セクターが想定より多くなった場合には、新品であっても正しく動作せず、初期不良となる可能性があります。
※バッファローではこのような初期不良が起きることがないように、出荷前の検査を実施しています。特にNAS製品では、生産過程でHDDを選別、専用検査や長時間稼動させて安定動作を確認するエージングテストなどを実施しており、将来のトラブル発生を低減させた高い信頼性を実現しています。
②プラッターの劣化
HDDのプラッターには寿命があり、長く使用しているとプラッターの表面に塗布された磁性体が劣化し、物理的不良セクターが増えていきます。これらの不良セクターが多くなると、HDDが正常に動作せず、様々な症状が発生します。
③磁気ヘッド等の劣化
プラッター以外の構成部品も、長く使用していると経年劣化による障害が発生し、正常に動作しなくなることがあります。例えば磁気ヘッドは本来、プラッターに接触しない構造になっていますが、故障によってプラッターに触れてしまうと、プラッターに傷が付き不良セクターが発生する可能性があります。
④動作中の衝撃
HDDがデータの読み書きを行っている時にPCや外付けHDDに強い衝撃を与えると、本来はプラッターに触れずに動作している磁気ヘッドがプラッターに触れて傷が付き、物理的不良セクターが発生する可能性があります。衝撃で磁気ヘッドに不具合が発生した場合は、その場では問題がないように見えても、使い続けるとプラッターに傷が付き、不良セクターが増える可能性があるため注意が必要です。
⑤動作中の強制終了・接続解除・給電停止
HDDがデータの読み書きを行っている時にシステムを強制終了したり、外付けHDDを外したり、突然電源を落としたりした場合も、プラッターに磁気ヘッドが触れて傷が付き、物理的不良セクターが発生する可能性があります。また、データの書き込み中にこれらの操作を行った場合には、データエラーによる論理的不良セクターが発生する可能性もあります。
⑥不適切な環境での使用
温度が高い場所や低い場所、湿度が高い場所、埃の多い場所など、不適切な環境でHDDを使用すると、HDD の内部部品が正しく動作しなくなり、不良セクターの原因になることがあります。
5. 不良セクター発生時の診断・修復・復旧方法
PCや外付けHDDなどに3章に挙げた症状が見られる場合、不良セクターが原因になっている可能性があります。不良セクターが疑われる場合には、以下の手順で正しく対処しましょう。
5-1. データをバックアップする
不良セクターが疑われる場合、現在は動作していても徐々に状態が悪化し、いずれ動作しなくなる可能性があります。HDDに重要なデータが保存されている場合は、別の外付けHDD/SSDやNASへのバックアップを行いましょう。このような事態に備えて、普段から定期的にバックアップしておくことをおすすめします。
ただし、バックアップ作業を行うことでHDDに負担がかかり、状態がさらに悪化して、バックアップ中にデータを読めなくなる可能性があります。失いたくないデータが保存されている場合は、不調になってからのバックアップ作業は行わず、すぐにデータ復旧の専門業者に相談されることをおすすめします。
5-2. 自分で診断・修復する
不良セクターはWindowsに標準搭載されているツールや市販のソフトウェアを使って検出することができます。HDDの状態によっては修復も可能です。
◎エラーチェックを実行する
①スタートメニューから「エクスプローラー」を開きます。
②PCの左の「>」をクリックして表示されたディスク名の中から、診断したいディスクの名前を選んで右クリックし、「プロパティ」を選びます。
③「ツール」タブをクリックして、「エラーチェック」のチェックボタンを押します。
④「ドライブのスキャン」をクリックします。
◎チェックディスクを実行する
①スタートボタンの右にある検索窓に「cmd」と入力し、「コマンドプロンプト」を右クリックし、「管理者として実行」を選択します。
②「chkdsk C: /r」と入力し、リターンキーを押します※。
※「C:」は一般的なPCの内蔵ドライブに設定されているドライブレターです。外付けHDD等の診断を行う場合は、エクスプローラー等で該当するドライブレターを確認し、文字を置き換えて入力してください。
◎システムファイルチェッカーを実行する
①スタートボタンの右にある検索窓に「cmd」と入力し、「コマンドプロンプト」を右クリックし、「管理者として実行」を選択します。
②「sfc /scannow」と入力し、リターンキーを押します。
◎不良セクター修復ツールを実行する
①スタートメニューから「ターミナル(管理者)」を開きます。
②「Repair-Volume C -Scan」と入力し、リターンキーを押します。
※「C」は一般的なPCの内蔵ドライブに設定されているドライブレターです。外付けHDD等の診断を行う場合は、エクスプローラー等で該当するドライブレターを確認し、文字を置き換えて入力してください。
◎市販のツールで診断・修復する
各メーカーから提供・販売されているツールを使って診断・修復を行うことができます。ツールの詳細については、各メーカーにお問い合わせください。
故障予測サービス「みまもり合図」
バッファローでは、不良セクターなどの状態変化を監視し、故障の前兆をお知らせするアプリ「みまもり合図」を提供しています。みまもり合図の詳細およびダウンロード方法については、以下のページをご参照ください。
ただし、上記の作業を行うことでHDDに負担がかかり、状態がさらに悪化する可能性があります。失いたくないデータが保存されている場合は自分で診断・修復作業は行わずに、データ復旧の専門業者に相談されることをおすすめします。
5-3. データ復旧の専門業者に依頼する
重要なデータが保存されているHDDの修復作業に失敗した場合でも、データ復旧の専門業者に依頼することでデータを取り戻せる可能性があります。バッファロー正規データ復旧サービスでは、他メーカーの製品を含めた様々な記録メディアの診断・復旧を行っています。相談・診断は無料ですので、一度ご相談ください。
5-4. メーカーに修理依頼をする
不良セクターの修復作業に失敗した場合は、メーカーに修理を依頼することでPCや外付けHDDを回復できる可能性があります。ただし不良セクターが多いHDDを修理に出すと、多くの場合新品のHDDに交換され、保存されていたデータは消去されます。データ復旧が必要な場合は、修理に出す前にデータ復旧業者に相談されることをおすすめします。
6. 不良セクターが疑われる時にやってはいけないこと
PCや外付けHDDに不調が見られ、不良セクターが疑われる場合、症状の悪化を防ぐことが重要です。以下のような行為は症状の悪化につながりますのでご注意ください。
①再起動を何度も繰り返す
PCが不調な時は再起動によって改善される場合がありますが、何度も繰り返し再起動を行うとHDDの状態が悪化する可能性があります。
②外付けHDDの接続・解除を何度も繰り返す
外付けHDDが不調な時はいったん接続を解除して、接続し直すことで改善される場合がありますが、接続・解除を何度も繰り返すとHDDの状態が悪化する可能性があります。
③HDDを叩く、振る、逆さまにする
障害が発生したPCや外付けHDDは、叩く、振る、逆さまにするなどの行為で回復することはありません。逆に部品の損傷や状態の悪化につながります。
④HDDを分解する
HDDは精密機械であり、自分で修理することは困難です。一度分解すると元に戻せなくなりますのでご注意ください。
⑤バックアップを取らずに修復作業を行う
不良セクターの修復はWindowsに標準搭載のツールで行えますが、修復作業中にHDDの状態が悪化し、起動できなくなる可能性があるので注意が必要です。重要なデータが保存されているHDDの修復作業は必ずバックアップを行った後で実行してください。
⑥データ復旧を行わずに修理に出す
PCや外付けHDDをメーカー修理に出すと、HDDに保存されているデータが消去される可能性があります。重要なデータが保存されている場合は、修理に出す前にデータ消去の可能性を確認し、データ復旧が必要な場合は修理に出す前にデータ復旧業者にご相談ください。
7. 不良セクターが原因で読めなくなったHDDのデータの復旧はバッファローへ

不良セクターが原因で読めなくなったHDDのデータを復旧したい場合は、信頼できる業者に依頼されることをおすすめします。バッファローのデータ復旧サービスは診断・見積り無料、一律固定料金で安心してご利用いただけます。HDDのメーカーならではの高い技術力、万全のセキュリティ体制で対応させていただきます。