#178 バッグデザイナー、バッグビジネス創業者 杉本 奈緒子

第178回目の@Professional Usersはバッグデザイナー、バッグビジネス創業者の杉本 奈緒子（すぎもと なおこ）さん。ITエンジニアや外資系でのマーケティングの仕事を経て2年前に起業。かねてから自分が使いたかったビジネスバッグがなかったことを発端に2017年、ビジネスバッグのビジネスを創業します。企画やデザインはもちろん、IT業での経験も活かし管理や写真撮影等も自身で手がけています。そんな杉本さんは以前からバッファロー機器のヘビーユーザーでもあり、今回新たにバッファローのネットワーク対応HDD(NAS)、LS220D0202G(2TBモデル)をバッグ作りのクリエイティブに導入したとのこと。早速LAVAが杉本さんが作業している東京・外苑前にあるオフォスを訪れお話を伺いました。

——個人的にはずっと登場して欲しかったバッグ関係のクリエイター、そしてバッグビジネス創業者の杉本 奈緒子さんです。杉本さんがバッグのクリエイティブにたどり着くまでの経緯を教えてください。

バッグとの最初の出会いは小学校低学年ぐらいですかね、出身地である静岡の西武百貨店でHIROFのバッグを偶然見たんです。その値段がなんと7万円でした。当時お小遣いを週に100円もらっていた私には衝撃的なプライスでした（笑）。それがとても印象的だったんです。なぜか大きなインパクトを受けたんですね。

——ちなみに今はHIROFのバッグはお持ちですか？

はい、6個持っています。子供の時は値段を見て一体ゼロがなん個並んでいるんだと驚きましたが、今ではそれを買えるようになったことが単純に嬉しいですよね。

——もの作りに興味を持ったきっかけは？

母が洋裁をしていたんです。その影響で私もお裁縫が好きになりました。母は趣味でレザークラフトもやっていました。そういった環境が身近にあったのは大きいですね。

——学生時代はどんな生活でしたか？

正直クリエイティブな方向に進むつもりはありませんでした。クラリネットも吹いていましたが部活で活動する程度です。どちらかというと理数系で、理科と数学が好きでした。特に高校の物理の授業が好きで、大学は理学部物理学科に進みました。

——僕が最も苦手なジャンルですが、物理や数学はなにがそんなに面白いのですか？

物理の面白いポイントは自然現象が予測できるところ。例えば物を落としたら何秒後に地面に落ちるかを予測できますよね。物を動かすにはどれぐらいの力がいるか？それを計算式で表現できる。そこから将来が予測できます。そこが面白いと思い物理を勉強しました。

——へー、将来も予測できるんですね。でも今の今まで物理が面白いと思ったことは一度もありません（笑）。だから僕は計算が苦手なんですね。その後普通に就職ですか？

はい、当時はインターネットが盛んになっている時期で、これは物理の勉強の延長だとも思いソフトウェアの企業に就職しました。私が担当していたのはマッサージチェアのモーター制御。

——それはというと？

例えば炊飯器の「炊飯」というボタンを押すと30分後にご飯が炊き上がりますよね。それは当たり前のことなんですが、その当たり前のことを誰かが自動にしてくれているからできるんです。私はその自動にする仕事をしていました。

——今回はいつもより違う脳が働くインタビューです（笑）。かなり頭を使うようになってきました。他にはその会社でどんなことを？

マッサージチェア以外だとファックス付きの電話機にも携わっていました。電話機の中にある住所録の画面表示を出す機能を作っていました。例えば2000行のプログラムを書くと、そのうちのたった1行でも間違えただけでボタンを押すと表示の上下が逆に動いてしまいます。それぐらい細かい作業でした。でも好きだった数学とコンピューターの基礎からできている仕事ですし、なによりパソコンやスマホの中で動くのではなく日常使う家電が動くのが面白く、私にはとても興味深い仕事でした。

——その後また会社を変わりますね？

はい、そのソフトウェアの会社は3年弱で退社して次にスタートアップ、いわゆるベンチャー企業に転職しました。そこには5、6年いてその次に外資系のIT企業に。そしてさらに別の外資の会社へと移ります。この仕事を続けている時にふと思ったんです。欲しいバッグがない。ではどういうバッグを私は欲しいのか？まずパソコンが入る大きなバッグ。そうなるとパソコンは重いので同時に耐久性を兼ね備えたバッグ。なおかつお客様先に行っても自分のスーツに合わせられるデザインのバッグ。女性向けのバッグはお洒落でかっこいいものがたくさんありますが、女性用のビジネスバッグは少ないんです。その頃からやんわりですがバッグのブランドを作ることが頭の中に生まれました。そして2社目の時に自身でビジネスを立ち上げる人たちと知り合う機会がありました。大抵は普通に学校に行って普通に就職してという生き方。そうなるとこの世の中、雇われている人が大半です、私もそうでした。でも2社目の時も3社目の時もそうではない個性的な人たちがいたんです。自分でビジネスを立ち上げる人たち。その人たちに会えて自分はやりたいことをやってもいいんだなと思えたんです。自分は今まで真面目すぎた。でも自分の興味のあるものがあればチャレンジしていいし、苦手は苦手として受け止めていい。なのでこの先会社を作るのもいいし、フリーランスになって好きなものを作ってもいい。週5日働いて定期的に給料が振り込まれる。でもそうでない働きかたもあるしそれを私がやってもいいんだ。2社目以降の会社でそれを知ったんです。

——一体どこで今に繋がる話が出てくるのかなと思っていましたが、そういう経緯だったんですね。杉本さんらしいルートだと思います。

ありがとうございます。それと3社目と4社目で製品マーケティングの仕事をしていたんですが、そのポジションは作る側から販売店やお客様まで全体が見えるポジションです。売上を上げ利益を出すためにすべての役割、そして全体を見渡す仕事です。その仕事がかばん屋を立ち上げる前の段階で大事な経験になりました。この仕事をしなかったらもしかしたら起業していなかったかもしれません。ビジネスも全体像が見えていないとかばん屋を立ち上げてもなんとかなるだろうと思えないと思います。

——起業前にビジネススクールに通っていますね？

はい、会社のお昼休みの時に同僚に「いつかかばん屋さんの会社を作りたいな」と話したら「ビジネススクールに行ってみれば？」と話してくれました。そこから1週間で小論文をそのビジネススクールの入試のために提出して合格しました。

——さすが早いですね。

ありがたいことに、合格をいただくことができました。学校に行くと飲食関係やまったく違うジャンルの方々がたくさんいて、それまでIT企業しか知らない私にはとても刺激的でした。すでに会社を立ち上げている人もいました。そこで初めて「なんとかなるかな」と思えました。そして会社を辞めて41歳で起業をしました。

——なんとかなると思えてすぐになんとかなりましたか？

一般的に起業するときは大抵の人はお試しをします。家賃や生活費もあるので会社に属しながら製品を作ったりアプリケーションを開発します。そして事前に宣伝もしてユーザーを集めます。そしてビジネスの目処が立つ、黒字になりそうだ、売上が立つ。それらの準備をしながら仕事をシフトしていきます。それが一般的な起業するパターンですしそうすべきです。お客さんがいてくれて初めてビジネスが成立します。とはいえ私の場合その下準備をまったくせずにスタートしてしまいました。現時点で2年目に入りましたがスタートしてから諸々の準備を始めているので、まだうまくいっているとは言えませんね。

——バッグのブランド名 “AYLI（アイリ）”の意味は？

もともと自分が欲しいビジネスバッグがなく始めたブランドです。自分が納得できるバッグをお客様にも提供したい。そこでシェイクスピアの「お気に召すまま」、”As You Like It”の頭文字、A・Y・L・Iをブランド名にしました。なので私のコンセプト自体がブランド名になっています。

——是非杉本さんご自身からAYLIバッグをアピールしてください。

AYLIのバッグは機能性とデザイン性を兼ね備えたバッグです。パソコンも入りますし耐久性もあります。お客様のところにプレゼン等で行ってもパリッと決まります。小話なんですが最近女性もののスーツで内ポケットのあるものが増えているんです。基本女性用のスーツはポケットに物を入れると形が崩れるのでポケットのないものが多かった。となると内ポケットなんてなおさらなかったんです。でも今の時代、女性の経営者、幹部が増えてきました。そこで変わってきたのが例えばお客様のところに行くと名刺をパッと出したいですよね？なのでポケットに名刺を入れておけるようにするためスーツにポケットがつくようになってきたんです。

——へー、それはまったく知らなかったことです。

女性が働く社会の変化からファッションも変わっていく時代です。そういったことと同じで、AYLIバッグは女性が社会で使えるバッグということをまず考えています。自分が今まで使いたかった機能が兼ね備えられたバッグです。

——AYLIのバッグが完成するまでのプロセスを教えてください。

まずモデルになるユーザーを決めます。今のところ知り合いに頼みますが将来的には一般の人から募集していきます。その人のリクエストに沿ったものを作るというのがコンセプトでもあるので、ひとつのバッグを仕上げていくにあたってユーザーの意向を取り入れなが進んでいきます。私は自分ひとりがいいと思うデザインだけがいいものとは思っていません。いろんな人のアイデアを集めた方がいいものは生まれます。逆に言えばもの作りは人の協力も得やすいですしね。色や形もユーザーにご要望やアイデアをいただきます。こちらから様々なバリエーションを持ち込みユーザーが選べるようにします。デザインも見本になるバッグの写真を見てもらってアレンジを加えていきます。そして詳細を詰めていき、お互いのアイデアが固まったら職人さんと相談をして試作を作ります。職人さんにもデザインに一歩踏み込む感じで作ってもらっています。そして完成です。

——何かみんなで作っている感じがあり新鮮ですね。新しいクリエイティブの可能性を感じます。今後杉本さんが作っていきたいバッグはありますか？

今まで女性向けと話してきましたが、自身のデザインで男性にも使って欲しいと思っているので現在男性ものも企画しています。そしてそれはメンズとして売りだすのではなく、男女隔てなく使えるものとしたいのです。お互いが区別のない世の中を目指していくというメッセージもそこには込められています。

——素晴らしいと思います。限りのない可能性を秘めたAYLIバッグの発展を楽しみにしています。ではパソコンの話をしましょう。現在メインで使用しているパソコンは？

メインはマイクロソフトのノート型パソコンのSurface Proです。メインはそれですがMacBook Airも使っています。両方兼用しています。もともと私はMacユーザーでしたが仕事ではWindowsが多かったですね。なので結果両方使っているんです。今までの仕事柄、パソコンの知識は多いと思います。もともと仕事でエンジニアをしていましたので。コンピューターの基礎からアプリケーションの開発まで関わっていました。でも特別パソコンが好きなわけではないんですが、仕事として必ずパソコンやサーバーを使ってきたので自然と知識が豊かになっていったと思います。

——現在杉本さんがお使いのバッファローのネットワーク対応HDD(NAS)、LS220D0202G(2TBモデル)についてお聞かせください。

私はWindowsとMacの2台を仕事で使っています。もともと使っていたポータブルSSDがあってそれはUSBでパソコンに繋げられるものでしたが、いちいち繋いでカチャカチャやるのが正直面倒になってきたんです。それも2台あるので。なので繋ぎ変えずにパソコンを起動したらすぐに使えるハードディスクが欲しかったんです。今どきはクラウドサービスが便利ですし実際私も使っています。ただ私はとても高い解像度でバッグの写真を撮影します。それを全て保存するとなるとクラウドだと転送に時間がかかります。でも現在使用しているバッファローのLS220D0202G(2TBモデル)だと手元にあるので転送速度がまず速いです。クラウドもいいのですが、特にデータ容量の大きい写真や動画はローカルにデータを置けるNASが圧倒的に便利ですし速いです。昔からバッファロー製品は私にとって信頼性が高いブランドです。まず壊れにくい。ブランドとしては買い換えて欲しいのでしょうがやはり壊れにくいです。安定感もあるので長い間愛用できます。簡単に冗長化をしてくれるのがこのバッファローのNASのメリットの1つだと思います。普通のハードディスクだとディスクが壊れるとデータも壊れます。このNASは2重にデータを保存できます。ディスクがひとつ壊れてももうひとつに残ります。予備があるんです。RAIDというシステムですね。先ほど言いましたがバッファローの製品はただでさえ壊れににくいのにさらに予備まで作ってくれているんです。この安心感は我々プロユーザーにも大きなメリットと言えますね。商品の写真撮影をしたデータはウェブサイトなどに載せる大切なデータなのでなくなったらとても困るものです。得に私は店舗を持っていないのでECサイトがメインの売り場になります。そこで商品紹介や商品の写真を掲載するのがとても大事な作業です。その大事なデータをこのNASにすべてに入れているのでこのNASも本当に大切なハードディスクです。私のデジタルの商品の倉庫、まさにストレージがこのNASです。お店を持っていれば棚等が商品の置き場所ですが、私にとってはこのNASが商品のデジタルの置き場所となっています。

——たくさんのユーザーがその商品のデジタルの置き場所にやってくることを願ってます。では最後に杉本さんのようなバッグのクリエイターになりたい人たちにメッセージをお願いします。

まずは他人の気持ちになること。企画をしてデザインをするのは人のためにしていることです。あとは誠実さと継続性。公正な値段をつけ、お客様を自己サポートすること、その誠実さと始めたからにはお客様にしっかりと商品を提供し続ける継続性が大切です。いいものを作ったのならそれをちゃんと届ける。そしてそれを継続的に回していくこと。それを心に留めておくことが大事だと思います。

——今日はどうもありがとうございました。