【SD Expressとは?】SDカード/microSDカード規格の違い

SDカードはデジタルカメラやスマートフォン、ゲーム機などの家電機器まで幅広く使用されているフラッシュメモリーです。SDカードという呼び名が現在は定着していますが、SDメモリーカード(SD Memory Card)が正式名称です。

SDメモリーカードは、SD Groupによって開発・発表されました。
現在は2000年に設立された、SDアソシエーション(SD Association, SDA)によって規格が定められ、幅広い家電製品での普及促進を支えています。

本ページではSDメモリーカード(以下 SDカードと記載)について、規格の違いなどをわかりやすく解説していきます。

SDカードの規格

SDカードにはさまざまな視点からの規格が複数存在します。SDカード本体のラベルや印刷にたくさんのロゴが表示されているのを見たことがあるかたも多いでしょう。
それぞれの規格の視点から、どのような違いがあるのか解説します。

サイズを定める規格

SDカードには3種類のサイズが存在し、現在は主に2種類のサイズが使用されています。
通常のサイズであるSDカードに対し、サイズが小さなminiSD、microSDカードが定められています。

SD

デジタルカメラやデジタルビデオカメラで主に使用されているSDカードの標準サイズです。

miniSD

2005年に携帯電話向けに生まれたSDカードを小型軽量化した規格です。2025年現在はmicroSDカードの登場により使用されていません。

microSD

スマートフォンやゲーム機など、多くの小型家電で使用されているサイズです。

SDカード規格

SDカード規格はファイルシステムの仕様の違いを表し、カードが対応できる容量の範囲を示しています。
ほとんどのSDカードで大きくロゴが表示されているので、ひと目で規格を判断することができます。
SDカード規格は下位互換性を持っているため、上位のSDカード規格に対応したスロットを備えた機器では、下位の規格のSDカードを認識することができます。
逆に下位のSDカード規格にしか対応していないスロットを備えた機器では、上位の規格のSDカードを認識できないことがあるため、注意しましょう。

SD

容量が2GB以下の規格です。
ファイルシステムに「FAT16」を使用しています。

SDHC

容量が2GBを超え32GB以下の規格です。
ファイルシステムに「FAT32」を使用しています。

SDXC

容量が32GBを超え2TB以下の規格です。
ファイルシステムに「exFAT」を使用しています。

SDUC

容量が2TBを超え128TB以下の規格です。
ファイルシステムに拡張した「exFAT」※を使用しています。

SDUCで使用している「exFAT」はクラスタ番号管理をSDXCの32bitから38bitに拡張しています。これによりSDXCと比べて6bit多い、すなわち64倍(2TBx64=128TB)のストレージ容量まで管理できるようになっています。

転送速度を向上するための規格

SDカードの仕様は転送速度向上のために長年にわたり進化を続けています。転送速度向上のための主な方法として、バスインターフェース仕様をアップデートしています。
バスインターフェース仕様とは、簡単に説明すると「端子の使い方やデータを通信する方法を定めたルール」のことです。バスインターフェース仕様の規格は「SDバスインターフェース規格」と「PCIe®バスインターフェース規格」に分かれ、それぞれの規格の中でさらに速度別に細かく分けられています。

SDバスインターフェース規格

デフォルトスピード(SD1.0)

SDカードの最初の規格では最大転送速度は12.5MB/sでした。

ハイスピードモード(SD2.0)

SD1.0から2倍である最大25MB/sの転送速度に対応しました。

UHSバスインターフェース規格

SDバスインターフェース規格に準じたもので、さらに高速化を目指したSD3.0以上の規格は、UHSバスインターフェース規格として区分されています。UHSは「Ultra High Speed」の頭文字からとった略称が元になっています。

UHS-I(SD3.0)

UHS-Iのロゴ

UHS-Iは従来のハイスピードモードSD2.0から4倍の最大104MB/sの転送速度に対応しました。
2025年6月現在では十分に普及が進み、対応する機器も多岐にわたっています。

UHS-II(SD4.0)

UHS-II、UHS-IIIのロゴと端子

UHS-IIはSDカードの端子の数を増やし、最大312MB/sの転送速度に対応しました。
SDカード先端側にある従来の規格の端子(第1ロウ)に加えて、二段目の端子(第2ロウ)が追加されています。UHS-II未満の規格の機器に使用した場合は、従来の端子だけが使用されることで下位互換性が確保される規格となっています。
撮影時の快適性にSDカードの転送速度が求められる高性能なデジタルカメラやビデオカメラなどで普及が進んでいます。

UHS-III(SD6.0)

UHS-IIIはさらに速度向上を進め、最大624MB/sの転送速度に達しました。
SDバスインターフェース規格では最高速度の規格となっていますが、対応する機器やSDカードがほとんど市場になく普及は進んでいません。

PCIe®バスインターフェース規格

従来のSDバスインターフェース規格では転送速度の向上が難しくなってきたため、新たにPCIe®バスインターフェース規格がSDカードで採用されました。
この規格はSDバスインターフェース規格と互換性はありませんが、パソコン等の記憶装置であるSSDに採用されているNVMe(Non-Volatile Memory Express)という通信プロトコルに対応しています。
これにより、SDカードの最大転送速度は大きく向上しました。

SD Express(SD7.0、SD8.0)

SD Expressのロゴと端子

SD Express規格は、汎用PCI Express®とNVMe™インターフェースをSDカードで使用できるように定められた規格です。SD Express規格に対応したSDカードはUHS-IIやUHS-IIIと似た端子を備えていますが、第2ロウの端子形状が異なります。

SD Express(SD7.0)で「PCIe® Gen.3x1」と「PCIe® Gen.4x1」を、SD Express(SD8.0)では追加の端子(第3ロウ)を備え、「PCIe® Gen.3x2」と「PCIe® Gen.4x2」を使用する転送規格が定められています。

「PCIe® Gen.3x1」で985MB/s、「PCIe® Gen.4x1」で1,970MB/s、「PCIe® Gen3x2」「PCIe® Gen.4x2」では3,940MB/sもの最大転送速度となり、SDカードの転送速度は大きく向上しました。

SD Expressは高速なデータ転送を行えるため、外部ストレージにもパフォーマンスを要求される機器で採用され始めています。2025年6月に発売された「Nintendo Switch™ 2」もSD Express規格のmicroSDカードを採用しています。

SD Express規格はUHS-IIIの上位のSD規格バージョンではありますが、従来の規格と完全な下位互換性を持っていません。SD Express規格に対応していないUHSバスインターフェース規格対応の機器にSD Express対応カードを挿しても、UHS-II以上の規格では動作せずにUHS-Iの規格で動作し大幅に速度が低下してしまうため注意が必要です。

転送速度を保証するための規格

ここまでは、基本的な仕様を定めた規格でしたが、動画撮影やアプリケーションの実行に対して性能を満たしているかどうか判断するには不十分でした。
そこで、下記のような最低限の速度を保証する規格が定められています。
すべてのスピード クラスは、ビデオ録画やその他のアプリケーションで定義された条件下で必要な最低限のシーケンシャル カード アクセス性能を保証しています。

映像記録用のSD規格

スピードクラス

スピードクラスは、Class2~Class10が定められています。
これはSDインターフェース規格(非UHS)で転送する際の最低保証速度です。

Class2

最低保証速度
2MB/s

Class4

最低保証速度
4MB/s

Class6

最低保証速度
6MB/s

Class10

最低保証速度
10MB/s

UHSスピードクラス

UHSスピードクラスは、U1とU3が定められています。
これはUHSバスインターフェース規格で転送する際の最低保証速度となります。
一般的なデジタルカメラやスマートフォンの動画撮影時に求められる性能が基準となっています。

U1

最低保証速度
10MB/s
(スタンダードビデオ 640x480pxの撮影)

U3

最低保証速度
30MB/s
(フルHDビデオ 1920x1080pxの撮影)

ビデオスピードクラス

ビデオスピードクラスは、V6~V90が定められています。
これはSDインターフェース規格やUHSバスインターフェース規格で転送する際の最低保証速度です。
UHSスピードクラスと同じく一般的なデジタルカメラやスマートフォンの動画撮影時に求められる性能が基準となっています。
この規格は「SD5.0」で定められ、従来のスピードクラスよりも高速な最低保証速度の表示に対応しています。

V6

最低保証速度
6MB/s

V10

最低保証速度
10MB/s
(スタンダードビデオ 640x480pxの撮影)

V30

最低保証速度
30MB/s
(フルHDビデオ 1920x1080pxの撮影)

V60

最低保証速度
60MB/s
(4Kビデオ 3840x2160pxの撮影)

V90

最低保証速度
90MB/s
(8Kビデオ 7680x4320pxの撮影)

SD Expressスピードクラス

SD Expressスピードクラスは、E150~E600が定められています。
これはPCIe®インターフェース規格で転送する際の最低保証速度です。
業務用カメラなどによる高品質な4Kビデオや8Kビデオの撮影時に求められる性能が基準となっています。

E150

最低保証速度
150MB/s

E300

最低保証速度
300MB/s
(4Kマルチストリーム、4Kイントラビデオ 3840x2160pxの撮影)

E450

最低保証速度
450MB/s

E600

最低保証速度
600MB/s
(8Kマルチストリーム、8Kイントラビデオ 7680x4320pxの撮影)

アプリケーションを快適に利用するためのSD規格

アプリケーションスピードクラス

アプリケーションスピードクラスは、クラス1(A1)とクラス2(A2)が定められています。
この規格はアプリケーションに特化したスマートフォン市場などの需要に応じて生まれました。
写真/動画/音楽/書類などのデータの保存先として使用しながら、アプリケーションの実行と保存に最低必要な速度を保証するために
ランダムおよびシーケンシャルリード/ ライトの最低処理速度を定める規格となっています。

クラス1(A1)

ランダムリード最低処理速度
1500IOPS
ランダムライト最低処理速度
500IOPS
シーケンシャル最低処理速度
10MB/s

クラス2(A2)

ランダムリード最低処理速度
4000IOPS
ランダムライト最低処理速度
2000IOPS
シーケンシャル最低処理速度
10MB/s

著作権保護機能について

SDカードは、記録メディア向けのコンテンツ保護技術「CPRM」を搭載することができます。この技術により、著作権の心配なく安心して音楽やビデオなどの商用コンテンツを利用できます。

CPRM非対応のSDカード使用の際には、地デジ番組やワンセグ番組の放送録画データの持ち出しや、着信メロディーや効果音などのデータを保存、SD-Audio対応音楽プレーヤーからSDカードへの音楽保存などを正常に行えなくなる可能性があります。
このような使い方を目的とする場合はCPRM対応のSDカードを使用するようにしましょう。

CPRMは以前はすべてのSDカードに実装されていましたが、最近のSDカードではSD規格でCPRMの搭載がオプションとなった影響で、CPRMを搭載していないSDカードも流通しています。
日本市場向けのSDカードではCPRMに対応していない場合、パッケージやWebページおよびカタログに、CPRM非対応ロゴや非対応であることを示す語句の表示が義務付けられています。

SDカードの寿命

SDカードの寿命は一般的に2~5年程度と言われていますが、実用上はもう少し複雑です。
SDカードはNANDフラッシュメモリー上に電気的にデータを保存しています。構造上データを書き換える回数に制限があり、
たとえば広く流通しているTLCのNANDフラッシュメモリーであれば、1000回程度の書き換えを行うとエラーが発生しやすくなります。
ドライブレコーダーのようにSDカードの容量が全部埋まった状態でデータを書き換え続けるような用途では、寿命が大幅に短くなることもあるので注意が必要です。

また、SDカードに使用されているNANDフラッシュメモリーは使用しない状態で保管しているだけでも、保存しているデータが消えてしまう可能性もあります。
主な原因としては、静電気や温度変化などがありますが、時間経過だけでも緩やかにデータを保持している電子が漏れ出してしまいます。
このような現象は「データの自然蒸発」と呼ばれます。時間経過によるSDカードの寿命は5~10年程度と言われています。
SDカードは写真や動画といった失いたくないデータを長期保管するといった使い方にはおすすめできません。定期的に他のメディアへバックアップを行いましょう。

万が一データが消えてしまった場合にやってはいけないことなどを解説しているページもございます。気になる方はこちらのページも読んでみてください。

おすすめのSDカード

Nintendo Switch™ 2 対応、microSD Expressカード

RMSD-EXA/Nシリーズ

読み込み速度 最大約890MB/s、Nintendo Switch™ 2で使える、micorSD Express対応microSDXCカード。UHS-1 スピードクラス3(U3)、ビデオスピードクラス30(V30)、アプリケーションスピードクラス1(A1)に対応。CPRM非対応。

まとめ

SDカードはさまざまな電子機器でデータの保存に使用されており、用途に合わせた多くの規格があります。
2000年に登場した初期のSDカードは容量が8MBで速度も12.5MB/sしか出ませんでしたが、2025年には1TBを超える容量や1,000MB/sに迫る速度まで進化しています。
今はまだUHS-IIまでの規格しか広く普及はしていませんが、すぐにより高速な規格の普及も広まるでしょう。
本ページに記載した知識を参考にSDカードを便利に活用してください。

Nintendo Switchは任天堂の商標です。