【かんたん解説】USB PD(USB Power Delivery)とは?

USB PDとは?

USB PDとは「USB Power Delivery(ユーエスビー・パワー・デリバリー)」の略称です。
USB Implementers Forum が定めた規格です。USBケーブルを利用して、データ転送と柔軟な高出力電源供給を同時に実現できる新技術です。
より良い規格となるようアップデートがたびたび行われており、2015年にUSB PD 3.0(2017年にPPS機能の追加)、2021年にUSB PD 3.1(240Wまで対応できるEPR規格の追加)、2023年10月に USB PD 3.2(SPR AVS機能の追加)が定められました。2024年12月現在、USB PD 3.2 が最新版の規格です。現在販売されているUSB PD充電器はほとんどがUSB PD 3.0以上に対応しています。

従来のUSB充電との違い

従来のUSBの電力規格

従来のUSBの電力規格は、Type-A/micro-Bケーブルを使用した場合は最大4.5W、急速充電規格「USB BC 1.2」で最大7.5Wの電力に対応しています。3A対応のType-Cケーブルを使用した場合は最大15Wまで供給することができます。

しかし、電圧が5V固定であり最大電力も小さいため、省電力の機器しか電源として使用できませんでした。

電力規格 最大電力 電圧 最大電流
USB 2.0 2.5W 5V 500mA
USB 3.2 4.5W 900mA
USB BC1.2 7.5W 1.5A
USB Type-C 15W 3A

USB PDの電力規格

USB PDは5Vを超える複数の電圧を使用できるようになり、最大100Wの電力に対応できるようになりました。ケーブルはUSB Type-Cに統一されました(※)。

ノートパソコンやディスプレイのように大きな電力を必要とする機器でも、USB PDに対応した充電器とUSBケーブルで、電源として使用できるようになりました。従来の充電器と比べて大きな電力で充電することができるため、バッテリーの充電時間を短縮することもできます。

さらに電力を強化して最大240Wまで対応したUSB PD EPR(Extended Power Range)といった規格もあります。

60Wを超える電力供給には対応ケーブルが必要です。

電力規格 最大電力 電圧 最大電流
USB PD 60W 5/9/15/20V 3A
100W 20V 5A
USB PD EPR 240W 28/36/48V 5A

USB PDのメリット

USB PDは充電をより便利にするために生まれた規格です。難しい規格についてはわからないという方も下記のメリットを覚えておけば大丈夫です。

急速充電が可能、充電時間を短縮

通常のUSB充電と比べて、充電時間を短縮できます。

電源アダプターを使い回せる

スマホだけでなくパソコンも。USB PD 電源アダプターの出力範囲内であれば1つのアダプターを、さまざまな機器の電源として使用できます。

ケーブル、コネクターをType-Cに統一

もう充電ポートごとに異なるケーブルを用意する必要はありません。

電源としてだけでなくデータ通信も可能

USBの規格の上に定められた電源規格なので、電力供給とデータ通信を通常のUSBケーブルの感覚で利用できます。大きな電力も扱えるので、たとえば外部ディスプレイの電源ケーブルと映像ケーブルを一本のUSBケーブルにまとめることができるようになりました。
ドッキングステーションを使用すると、USB Type-Cケーブル一本を複数の異なる規格(USB Type-A端子、HDMI端子やSDカードスロットなど)へ分岐することもできます。

このようにケーブルに関する使い勝手が大きく向上するというメリットがあります。

USB PDの利用シーン

USB PDは普及が進み、さまざまな機器で使用することができます。

スマホ

パソコン(PC/Mac)

ドッキングステーション

モバイルバッテリー

液晶ペンタブレット

モバイルプロジェクター

などの機器で、USB PDによる給電や充電を行えるようになっています。

USB PDの注意点

USB PDはUSB Type-Cポートで対応していますが、すべてのUSB Type-Cポートで利用できるわけではありません。
お使いの機器のType-CポートがUSB PDに対応しているかどうか、必ず仕様を確認しましょう。

また、USB PDの利用には、充電器と接続機器だけでなく、ケーブルもUSB PDに対応したものを使用する必要があります。
USB PDに対応したケーブルは60W(3A)と100W(5A)、USB PD EPRを使用する場合は最大で240W(5A)のケーブルが存在します。お使いの電力に合わせたケーブルを用意しましょう。60Wを超える電力を使用するためには「eMarker」と呼ばれる認証ICチップを搭載した専用のケーブルが必要です。

USB PD 対応機器の選び方

USB PD充電器の選び方

USB PDといえば真っ先に思い浮かぶものといえば、USB PD対応充電器(電源)です。ここ数年でモバイル機器の性能上昇に伴って内蔵バッテリーの性能も上昇しています。そのため従来のUSB PD非対応の充電器では、充電時間が長くなり不便な状態となってしまいました。そこで、最近ではUSB PDに対応して急速充電できるモバイル機器が主流になってきました。USB PDを利用できるUSB Type-Cポートが搭載されています。

また、USB PD対応充電器は主要なICチップの半導体にGaN(窒化ガリウム)を採用していることが多く、GaNを採用したUSB PD充電器はGaNを採用していない従来の充電器と比べて、小型軽量な設計になります。GaN採用の充電器であることに加え、従来の充電規格も利用できるType-Aポートも搭載した商品を選べば、持ち運ぶ充電器のサイズや数を減らすことができ、持ち運びの苦労を減らすことができるはずです。

最大出力

USB PD充電器は最大出力別に複数のラインナップが展開されています。USB PDは出力する電力を接続した機器に合わせて柔軟に変化させることができる規格なので、「大は小を兼ねる」といった気持ちで一番出力の大きなモデルを選べばほとんどの機器に対応することができます。
しかし、最大出力が大きいほど充電器のサイズは大きく、価格も高額になってしまいます。
持ち運びも快適に行いたかったり、購入価格を抑えたりしたい場合は、メインで接続する機器が求める出力を基準に選ぶことがおすすめです。

接続する機器別にUSB PD充電器に求められる一般的な出力は下記を参考にしてください。

スマホ 18~30W
タブレット・パソコン 30~60W
高性能パソコン 60W以上

ポート数

USB PD充電器はType-Cポートを1つだけ備えるものをはじめ、複数のType-CポートやType-Aポートを備えるものもあります。
同時に充電する機器の数や接続するケーブルのポートに合わせて、選びましょう。


ただし、USB PDの規格が使えるのはType-Cポートだけです。USB Type-AポートはUSB PDを利用できないポートであることに注意が必要です。

サイズ

持ち運びの機会が多い人にとっては、小型軽量であるほど嬉しいものです。しかし、小型計量であるとポート数や出力も小さくなってしまいがちです。
サイズを優先して選ぶのであれば、用途に応じて小型軽量の充電器を選べるよう、出力の小さな充電器から種類を揃えて購入することをおすすめします。

おすすめのUSB PD充電器はこちら

USB PD非対応の商品も含みます。

USB PD対応ケーブルの選び方

USB PD 充電器を新しく購入する際には、USB PDに対応したケーブルも併せて購入することがおすすめです。
Type-Cケーブルであっても、従来の高速充電規格の範囲である5V/3A、5V/5Aまでしか対応していないUSB-PD非対応のケーブルも存在します。
「手持ちのケーブルが USB PD対応かわからない」場合も多いはずです。
USB-PD充電器の性能を発揮させるためにも、USBケーブルも一緒に新しく揃えた方が安心して使い始められます。

おすすめのUSB PD対応ケーブルはこちら

USB PD非対応の商品も含みます。

Tips:Type-Cケーブルの見分けがつかなくなる前に

USB Type-Cケーブルは見た目が同じなのに、さまざまな規格が混在しています。購入時にケーブルに下記を記載したタグをつけておくと後の判別に便利です。

USBの転送規格(USB 3.2(Gen 1) / USB 2.0 など)

対応する充電規格(USB PD 100W 対応 / 5A対応 / 3A対応 など)

DisplayPort Alternate Mode対応可否(DP◯ / DP✕ など)

ドッキングステーションの選び方

ドッキングステーションはさまざまな機能を1本のUSB Type-Cケーブルでパソコンに追加できる機器です。
ドッキングステーションを使うことで、パソコンの限られたUSBポートの使用数を節約したり、機器の接続を一括で行えるようになるので、
よりパソコンを使いやすくすることができます。特にパソコンを持ち運ぶ機会の多いノートパソコンユーザーにおすすめです。
ドッキングステーションにはさまざまなポートが備えられているため、必要な機能を備えた商品を選びましょう。

たとえば、ドッキングステーションでは下記のような機能を追加することができます。

USB Type-Aハブ

HDMI出力

VGA出力

SDカードリーダー

有線LAN

USB PDの入力ポートを備えたドッキングステーションでは、ドッキングステーションに繋いだUSB PD電源アダプターからパソコンのUSB PD対応充電ポートへ電源を中継することもできます。

おすすめのUSB PD対応ドッキングステーションはこちら

すぐわかるUSB PD関連用語

GaN(窒化ガリウム)

ガリウム(Ga)と窒素(N)が1対1で結合した半導体の性質を持つ化合物でICチップの原材料として使用されています。従来の半導体素材SiC(炭化ケイ素)で作ったものよりも、高効率で低発熱な特性があります。SiCと比較してGaNは素材の製造コストが高くなってしまいますが、GaNを使用した電源ICチップは低発熱&小型化が求められる商品を中心に積極的に採用されています。他に身近なものの使用例では、青色LEDが有名です。

PPS

USB PD 3.0以上で規格された「Programmable Power Supply」の略称です。USB-PDは接続した機器が要求した電力に対して定められた固定の電圧で電力供給を行いますが、接続した機器の仕様や状態によっては供給電力が過剰で無駄となる場合があります。PPSはUSB PD充電器が供給する電圧や電流を、接続した機器からの動的な要求に応じて小刻みに調整できる機能です。
PPSによって接続した機器に送る電力の無駄が減るため、接続した機器の発熱やバッテリーへの負荷を抑えることができます。

EPR

USB PD 3.1以上で規格された「Extended Power Supply」の略称です。USB PD EPRでは最大240W(48V/5A)の電力まで対応できるため、グラフィックボードや大型のディスプレイなどより幅広い機器に対して電力を供給できるようになりました。
USB PD EPRで規定された電力を使用するためには、USB PD EPRに対応したUSBケーブルが必要です。EPRの登場に伴って、100Wまでの従来のUSB PDの電力はSPR(Standard Power Supply)と定められました。

AVS

「Adjustable Voltage Supplied」の略称で、USB PD 3.1で EPR AVS、USB PD 3.2でSPR AVSが規定されました。AVSはUSB PD充電器に接続された機器からの要求に応じて、USB PD充電器が出力する電圧を小刻みに調整できる機能です。PPSと似た機能ですが、PPSは電圧と電流を調整できることに対して、AVSは電流が固定で電圧だけの調整となります。USB PD 3.2に準拠するUSB PD充電器は、27Wを超えるとSPR AVSの対応が必要となります。

まとめ:USB PDとは?

USB PD(USB Power Delivery)は、さまざまな機器への給電や充電を1つの充電器で効率的に行えるように定められた規格です。
通常のUSB給電よりも大きな電力に対応しているため、スマートフォンやパソコン、その他周辺機器等の電源ケーブルをType-Cケーブルに統一して、急速充電にも対応することができます。
現在もより良い規格となるようアップデートが行われており、今後もさまざまな機器へUSB PDの採用が広まっていくでしょう。
従来のUSB充電器より便利で使いやすくなったUSB PD充電器や他USB PD対応周辺機器の導入をぜひ検討してみてください。