ファイルサーバーとは? NASとの違いや活用法をわかりやすく解説

ファイルサーバーは、複数の利用者が同じデータを利用するグループや組織で、作業やデータ管理を効率化するシステムです。家庭内のコンテンツのほか、企業や団体、SOHOなどのビジネス目的などにも利用されます。

このページでは、ファイルサーバーの基本、メリット、NASとの違い、種類、導入方法、および選び方のポイントについて、初心者にもわかりやすく解説します。

目次

※ 本記事は2024年3月時点の情報です。

1.ファイルサーバーとは

ファイルサーバーとは、コンピューターやスマートフォンなどがネットワークを通してつながる機器で、この機器に保存されたファイルやデータを、ネットワークを介して使えるようにするものです。詳しく見ていきましょう。

一つのファイルをネットワーク上の複数の端末で共有・利用

ファイルサーバーは、ネットワーク上のストレージに保存したデータを、同じネットワーク上のパソコン、スマートフォン、タブレットなどの端末に提供します。ファイルサーバーを利用することにより、写真や動画、音声、書類などのデータを複数の端末で利用する「ファイル共有」が可能になります。

要するに、家やオフィスのいろいろな機器から、共通の場所に保存されたファイルにアクセスできるようになるシステムと考えるとわかりやすいでしょう。たとえば、家族が共有する写真や、チームメンバーが共有する文書など、みんなで使うデータを一箇所にまとめておけば、どこからでも簡単に取り出せます。

2.ファイルサーバーのメリット

ファイルサーバーのメリット

ファイルサーバーの導入により、グループや組織内の各個人が管理していたデータを1か所にまとめることができます。これにより以下のような様々なメリットが得られます。

2-1 手軽にファイルを共有できる

ファイルサーバーのデータは、同じネットワーク上のパソコン、スマホ、タブレットなどの端末からアクセスして利用できます。

家庭にファイルサーバーを導入すれば、家族の写真や動画、音楽データなどをまとめて保存しておくことで、家族が自由に視聴して楽しめるようになります。また、企業のプロジェクトでは、必要なデータをファイルサーバーに保存することで、メンバー間で常に最新のデータを共有できるようになり、作業するたびにデータを送り合う必要がなくなります。

ファイルサーバーのファイル共有機能は、様々な場面でコミュニケーションやプロジェクト管理を効率化、円滑化します。

2-2 アクセス権限のあるユーザーだけが利用できる

ファイルサーバーは、特定のユーザーだけが利用できるようにアクセス権限を設定できます。

家族だけにアクセス権限を設定しておけば、遊びに来た友人がゲストWi-Fiを使っても、ファイルサーバーのデータにアクセスすることはできません。企業などの重要なデータも、アクセス権限を正しく設定しておけば、共有不要な社員から覗かれたり、悪用されたりする心配はありません。

重要なファイルをファイルサーバーにまとめ、個人のパソコンに保存しないようにすることで、パソコンの紛失やウイルス感染による情報流出のリスクを低減することができます。

2-3 端末のデータをバックアップできる

ファイルサーバーは、パソコン、スマホ、タブレットなどのデータバックアップ先としても利用できます。重要なデータを常にファイルサーバーにバックアップしておけば、端末の故障や紛失などでデータを失ったときにも、スムーズに復元できます。

ファイルサーバーには、保存したデータを冗長化するRAID機能や、外付けHDD等にバックアップする機能を搭載しているものが多く、重要なデータの保全に役立ちます。

3.ファイルサーバーのデメリット

ファイルサーバーのデメリット

ファイルサーバーを導入する際にまず気をつけたい点は、費用がかかることです。かかる費用はファイルサーバーによって異なりますが、導入コスト、運用コスト、電気代、人件費など、それまではかからなかった費用が必要になります。導入時にはアクセス権限の設定や利用者の教育など、時間と労力も必要です。

また、オンプレミス型ファイルサーバー(5.ファイルサーバーの種類で解説)を導入する場合は、設置スペースの確保が必要です。機器の種類によってはサイズが大きなものもありますので、用途と設置場所をふまえて機器を選ぶ必要があります。

ファイルサーバーはデータを1か所に集めるため、トラブルが発生するとすべてのデータが利用できなくなります。そのため、トラブル時の対応やデータのバックアップ・復元方法をあらかじめ準備しておく必要があります。

4.ファイルサーバーとNASの違い

NASはファイルサーバーの一種

「NAS(Network Attached Storage)」は複数の端末からアクセスでき、ファイル共有が可能なネットワーク機器です。では、ファイルサーバーとどう違うのでしょうか?「ファイルサーバー」と「NAS」の違いやメリット・デメリットについて理解しておきましょう。

4-1 NASとは

NASに保存すればみんなに共有できてしかも安全・快適!

NASはファイル共有機能を搭載したネットワーク対応ストレージです。内部ストレージを搭載しており、主にデータの保存と簡易なネットワーク共有を目的に設計されています。ファイル共有、写真・動画・音楽などの配信、録画したテレビ番組の保存・再生用ストレージとしての利用やデータバックアップなどが可能です。

4-2 ファイルサーバーとNASの違い メリットとデメリット

NASはファイルサーバーの一種であり、本来は並列に比較するものではありません。一般に「ファイルサーバー」という場合は、高機能で高度なセキュリティーを搭載している企業や団体向けのファイル共有システムを指すことが多く、ファイルサーバーの中でもより機能がシンプルな単体の機器を「NAS」と呼んでいます。
高機能なファイルサーバーとNASを比較した場合のメリット・デメリットを以下にまとめましたので、導入検討時の参考にしてください。

高機能なファイルサーバー NAS
管理・運用
専門的な知識が必要

専門的な知識がなくても管理・運用が可能
セキュリティー
高度なセキュリティー設定が可能

一般利用では十分な機能を搭載
保存容量
拡張は可能な場合が多いが
手間がかかる・機器によって制約あり

外付けHDDをUSBで接続するなどの方法で拡張が可能
※RAIDを維持しながら容量追加は不可

5.ファイルサーバーの種類

ファイルサーバーのタイプ別分類

ファイルサーバーは大きく「オンプレミス型」と「クラウド型」の2つのタイプに分類されます。導入時には、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解した上で比較検討が必要です。

5-1 オンプレミス型とクラウド型の違い

オンプレミス型ファイルサーバーは、企業の建物内や自宅の一室などに設置し、利用者自身が管理・運用するサーバーです。クラウド型ファイルサーバーは、サービスプロバイダーと契約して利用するインターネット上のレンタルサーバーで、機器を設置する必要はありません。

5-2 オンプレミス型の特徴

オンプレミス型ファイルサーバーは利用者自身が管理するため、データの管理方法やセキュリティー設定などの自由度が高く、カスタマイズしやすいというメリットがあります。

ただし、設置場所の確保や、設置・運用・メンテナンスのための専門的な知識が必要で、機器やソフトウェアの購入、設置工事などの初期投資が必要です。また、トラブルが発生した際にデータを復旧するためのバックアップ用ストレージも別途用意する必要があります。

5-3 クラウド型の特徴

クラウド型ファイルサーバーは設置場所の確保や機器・ソフトウェアの購入・設置の必要がないため、初期投資が少なく迅速に導入することができます。また、リモートアクセスを前提としたサービスなので、場所を選ばずどこからでもアクセスでき、リモートワークや移動中の利用などに便利です。

ただし、データ管理やセキュリティー設定はプロバイダーに依存するため、オンプレミス型と比べてカスタマイズ性は低くなります。また、提供されるインターネット回線の品質や通信速度が、利用しやすさに大きく影響します。

5-4 オンプレミス型とクラウド型のメリット・デメリット

オンプレミス型とクラウド型にはそれぞれメリット・デメリットがあります。カスタマイズやセキュリティー面ではオンプレミス型の方が有利ですが、導入・管理・運用のしやすさはクラウド型の方が有利です。

オンプレミス型ファイルサーバーは採用する機器によって、カスタマイズ性や管理・運用・メンテナンス方法などが異なります。また、クラウド型ファイルサーバーは、契約するプロバイダーやプランによってセキュリティーレベルや利用しやすさなどが異なります。いずれも導入前に十分な情報収集と比較検討を行いましょう。

オンプレミス型 クラウド型
設定の自由度
用途に合わせて細やかな設定が可能

プロバイダーの定める範囲で設定が可能
管理・運用
専門的な知識が必要
(ただしNASの場合は管理しやすい)

一定の知識は必要
保守・メンテナンス
利用者が自身で実施

プロバイダーに任せられる
セキュリティー
強固なセキュリティーの構築が可能

プロバイダーに依存する
リモートアクセス
外部アクセスを許可する設定が必要

場所を選ばずどこからでも利用できる
導入期間
機器の調達と設定期間が必要

契約後すぐに運用可能
導入コスト
機器などの購入・設置工事が必要

機器などの購入・設置工事は不要
運用コスト
買い切りで済む
(保守が重要な現場では継続コスト有)

契約に応じて毎月の支払いが必要

6.ファイルサーバーの導入方法

6-1 自宅にファイルサーバーを設置する場合

自宅にファイルサーバーを設置する場合は、PCまたはNASをファイルサーバーとして使用するのが一般的です。使わなくなった古いPCを再利用することで低コストでの導入も可能です。

ただしファイルサーバーは常時電源を入れたままで稼働するため、PCを使用する場合は電気代や動作音などが気になるかもしれません。また、ファイル共有やバックアップの設定には、ある程度の知識が必要です。

NASは常時稼働を想定した設計になっているため、省電力で静音性が高く、ファイル共有やバックアップの設定も比較的容易です。購入費用もPCを新たに購入するより安価で、家庭用のファイルサーバー導入に適しています。

6-2 ビジネス用途でオンプレミス型のファイルサーバーを導入する場合

オンプレミス型ファイルサーバーは、設置、設定、運用、メンテナンスなどをすべて利用者が行わなくてはならないため、導入時には十分な情報収集と比較検討が必要です。特にビジネス用途の場合は、導入するシステムが業務の効率化やセキュリティー向上に直結することをふまえ、より綿密な計画と準備を行うようにしましょう。

導入機器・ソフトウェアなどの主な比較項目

セキュリティー

メンテナンス性

設定しやすさ(設定画面、リモート管理など)

設置しやすさ(省スペース性など)

保存容量(追加の可否など)

冗長性(RAID機能など)

バックアップ機能

価格

消費電力

動作音

6-3 ビジネス用途でクラウド型のファイルサーバーを導入する場合

クラウド型ファイルサーバーは、初期投資を抑えながら短期間で導入でき、導入後の保存容量変更も容易なため、ビジネス用途のファイルサーバーに適しています。サービス品質やセキュリティーレベルはプロバイダーおよび契約プランに依存するため、導入時に適切なプロバイダーを選ぶことが成功のカギになります。

プロバイダー・契約プランの主な比較項目

セキュリティー

利用人数

通信速度・安定性

保存容量(追加も想定)

価格

障害発生時の対応

プラン変更のしやすさ

7.オンプレミス型ファイルサーバー選びのポイント

オンプレミス型ファイルサーバーを導入する際には、用途に合わせて必要な機能を搭載した機器を選ぶことが重要です。小規模オフィスや家庭では、設置場所が限られ、設定や管理を利用者自身がしなくてはならないため、設置のしやすさ、管理のしやすさも含めて比較検討しましょう。

7-1 小規模オフィスや家庭には「NAS」がおすすめ

小規模なオフィスや家庭にファイルサーバーを導入する場合は、NASをファイルサーバーとして使用することをおすすめします。設置が容易で、設定・管理画面もシンプルでわかりやすいものが多いため、専門的な知識がなくても手軽に導入できます。

7-2 LinuxタイプのNASの特徴 / 推奨モデル

小規模オフィスや家庭用のファイルサーバーとしてNASを使用する場合は、Linuxタイプがおすすめです。LinuxタイプのNASは、必要な機能をバランスよく備えており、比較的低コストで購入できます。バッファローでは、SOHO/個人ユーザー向けのLinux搭載NASを「LinkStation」というシリーズ名称で販売しています。

LinkStation おすすめポイント

カスタマイズが可能

低コスト

アクセス制限機能

Windows/Mac/iOS/Androidいずれからもアクセス可能

データのミラーリングで障害に強くなるRAID対応(一部モデルを除く)

保存した動画や音楽をスマホやPCに配信可能(DLNA対応)

録画した地デジ放送番組の保存・再生用ストレージとしての利用が可能(DTCP-IP対応)

外出先からアクセス可能(WebAccess対応)

個人ユーザー向け
ハイスピードモデル
大容量データのバックアップ、ファイル共有したい方に
スタンダードモデル
ファイル共有を始めたい方に
小規模オフィス・SOHO向け

通常のモデルと比べ長期保証など各種法人向けのサポートが充実したLinkStation for SOHOシリーズもラインナップがあります。

ハイスピードモデル
スタンダードモデル

また、法人向けにおいてはバッファローの「TeraStation」というシリーズ名称で販売されています。
このシリーズには、Linux/Windows搭載モデルがラインナップされています。

TeraStation(Linux搭載NAS)おすすめポイント

高い信頼性(最長7年保守対応※有償、NAS専用HDD採用)

優れた処理能力

他台数同時接続時も安定動作

アクセス制限機能

ログの記録が可能

クラウドストレージへのバックアップに対応

ウイルスチェック機能を追加可能(有償)

リモート管理サービス「キキNavi」対応

保証期間内は無償でデータ復旧 ※軽度の論理障害に限る

法人向け
中規模オフィス向け
(ユーザーが51~100人)
中規模オフィス向け
(ユーザーが51~100人)
小規模オフィス・SOHO向け
(ユーザーが50人以下)

各モデルの詳細仕様については以下のページを確認してください。

関連情報:バッファロー 総合カタログ・法人のお客様向けカタログ
「テラステーションNAS導入カタログ」の項目からダウンロードできます。

7-3 WindowsタイプのNASの特徴 / 推奨モデル

WindowsベースのNASは、Windows OSとの高い互換性を備えているため、Windows PCを中心とした組織のファイルサーバーに適しています。

信頼性が高くコストパフォーマンスに優れたNASとして、バッファローの法人向けNAS「TeraStationシリーズ」がおすすめです。

TeraStation(Windows Server搭載NAS)おすすめポイント

優れた処理能力

多台数同時接続時も安定動作

ソフトウェアの追加が可能(ウイルス対策ソフトなど)

設定・管理が容易(Windows UI)

アクセス制限機能

ログの記録が可能

クラウドストレージへのバックアップに対応

ウイルスチェック機能を追加可能(有償)

リモート管理サービス「キキNavi」対応

法人向け

WSHシリーズ
スタンダードエディション
ハードウェアRAIDモデル
データセンター・大規模オフィス向け
(ユーザーが101人以上)
WSシリーズ
スタンダードエディション
ソフトウェアRAIDモデル
データセンター・大規模オフィス向け
(ユーザーが101人以上)
WSHシリーズ
ワークグループエディション
ハードウェアRAIDモデル
データセンター・大規模オフィス向け
(ユーザーが51~100人)
WSシリーズ
ワークグループエディション
ソフトウェアRAIDモデル
データセンター・大規模オフィス向け
(ユーザーが51~100人)

関連情報:バッファロー 総合カタログ・法人のお客様向けカタログ
テラステーションNAS導入カタログ の項目からダウンロードできます。

8.クラウド型ファイルサーバー選びのポイント

クラウド型ファイルサーバーは導入・運用の手軽さから、ビジネス用ファイルサーバーの魅力的な選択肢の一つになっています。導入の際には、月額利用料と料金体系、提供される機能、セキュリティー、バックアップ体制、サポート内容等を確認した上で、プロバイダーとプランを選びましょう。

8-1 継続課金が基本!運用規模にあったスペックを選択

クラウド型ファイルサーバーは、提供されるストレージの容量や利用者の人数によって月額利用料が変動します。料金体系はプロバイダーによって異なりますので、必要な容量、利用人数を想定した上で、複数のプロバイダーを比較検討して選びましょう。導入時だけでなく、将来の想定規模もふまえて比較することをおすすめします。

8-2 ストレージやメモリーなどリソースの拡張性をチェック

事業規模が拡大すれば、必要なファイルサーバーの容量や利用人数は増加します。また、業務に必要な機能が変化する可能性もあります。将来プロバイダーを再検討する事態にならないように、あらかじめ想定される容量や利用人数、機能の追加が可能かを確認しておき、アップグレードが可能なプロバイダーを選びましょう。

8-3 セキュリティー体制・バックアップ体制のチェック

クラウド型ファイルサーバーのセキュリティー・バックアップ体制はプロバイダーによって異なります。データの安全性を確保するためには、プロバイダーが提供するセキュリティー・バックアップサービスの内容を詳細に確認しておくことが重要です。トラブルや災害発生時に迅速に運用を再開できるよう、データ復旧の体制についても確認しておきましょう。

9.まとめ

ファイルサーバーの種類とそれぞれの特徴、導入時のチェックポイントはご理解いただけたでしょうか? 本ページでは主に家庭用、小規模オフィス用、ビジネス用という視点で解説しましたが、これはあくまで参考です。各ファイルサーバーの特徴をふまえ、必要な容量、利用人数、利用方法など目的に合わせてご検討ください。

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