UTMとは? 初心者にもわかりやすく解説 <2025年版>

マルウェアやサイバー攻撃などの脅威が増加し多様化している現在、企業の情報ネットワークにおいてセキュリティー対策は欠かせません。そんな中、多くの企業で導入が進められているのが「UTM(Unified Threat Management)」です。UTMとは、どのようなセキュリティーシステムなのでしょうか?
また、ファイアウォールやアンチウイルスなどの一般的なセキュリティーツールとどのように異なるのでしょうか? UTMの概要と導入すべき企業の特性について解説します。

1.UTMとは

〜複雑なセキュリティー対策を1つの機器でまとめて実現できるシステム〜

「UTM」とは、種類の異なる複数のセキュリティー機能を1つの機器に統合したネットワークセキュリティーシステムのことです。日本語では「統合脅威管理」「統合型脅威管理」と呼ばれており、主に以下のような特徴があります。

POINT1
複雑なセキュリティー対策を、1つの機器でまとめる

UTMは、複数の脅威に対する複雑なセキュリティー対策を1つの機器でまとめて実行できます。UTM機器を導入することで、ネットワーク攻撃、ウイルス、スパムメールなどネットワークを襲う様々な種類の脅威から保護します。また、ネットワーク上の端末から有害サイトなど危険なサイトへのアクセスも防止します。

UTMは必ずしもすべての脅威を排除することを保証するものではありません。

POINT2
管理の手間が省け、コストの削減になる

設置・管理のしやすさもUTMの大きな特徴です。複数のセキュリティー機能を1つの管理ツールでまとめて設定・管理できるため、複数の管理ツールを個別に運用する場合と比べて手間がかかりません。ネットワーク管理者の労力を軽減でき、業務効率の向上、管理コストの低減にもつながります。

2.UTMって、ファイアウォールとどう違うの?

ネットワークのセキュリティー対策として広く利用されているツールの1つに「ファイアウォール」があります。UTMはファイアウォールとどう違うのでしょうか?

・ファイアウォールとは

ファイアウォールとは、不正アクセスやサイバー攻撃からネットワークを守るセキュリティーシステムです。外部から送られてくるパケット情報を監視して、危険なデータや許可されていないアクセスをブロックします。しかし、近年はより強力なマルウェアなどによる攻撃が増えており、ファイアウォールだけではネットワークを防御しきれない状況になっています。

・UTMとファイアウォール 防御範囲の比較

UTMは、ファイアウォールの機能を備えており、さらにファイアウォールだけでは防御しきれない複数のセキュリティー機能も搭載しています。ファイアウォール単体では対応しきれない様々な不正アクセスに対しても有効です。また、社内PCから危険なサイトへのアクセスを制限する機能も搭載しています。

不正アクセスの検知と防止(ファイアウォール、IDS/IPS)

有害な通信の遮断(アンチスパム)

ネットワークを通過する危険なファイルの検知(アンチウイルス)

有害サイトへのアクセス制限(Webフィルタリング)

UTMの機能は機器やサービスによって異なります。詳しくは各機器のメーカーサイトにてご確認ください。

3.UTM導入のメリット・デメリット

UTMには多くのメリットがありますが、注意が必要な点もあります。メリット・デメリットを以下にまとめましたので、導入検討時の参考にしてください。

UTM導入のメリット

UTMを導入する最も大きなメリットは、必要なセキュリティー対策を比較的手軽に導入でき、導入後の運用・管理もしやすいことです。他にも以下のようなメリットが挙げられます。

・社内ネットワーク全体の保護に効果的

ネットワークの出入口に接続されたUTMは、インターネットとの通信を監視し続けます。外部からの不正アクセスや危険なサイトへのアクセスを検知し、通信を遮断することによってネットワーク全体の保護に効果的です。

・個々の端末の設定に影響されず運用できる

UTMは1台のUTM機器を設定・管理するだけで運用が可能です。ネットワークに接続された個々の端末の設定・管理は不要で端末の追加や設定変更にも影響されないため、管理の手間がかからず、安心して運用できます。

・個別にセキュリティー対策ができない端末も対応できる

ネットワーク全体を監視することで、センサーデバイスやIoT機器など個別にセキュリティー対策を行えない機器も対応できます。セキュリティーソフトをインストールしていないスマートフォンやタブレットも、UTMを接続したネットワークを経由すれば安心してインターネットが利用できます。

UTM導入のデメリット

一方で、いくつか注意すべき点があります。以下の点に留意して十分な検討を行ってください。

・機能がパッケージ化されており選択できない

UTMは、複数のセキュリティー機能をまとめて設定・管理を行うため、多くの場合、個別のセキュリティーシステムのような細かなカスタマイズはできません。情報システムに精通した管理者を確保でき、セキュリティーシステムを細かく設定したい場合は個別導入の方が有利な場合があります。

・万が一、機器の障害が発生した際に社内ネットワーク全体に影響が及ぶ恐れがある

複数のセキュリティー機能を1台の機器に統合しているUTMには、その機器に障害が発生した場合にすべてのセキュリティー機能が停止するリスクがあります。万が一の際にネットワークが無防備な状態にならないよう、代替機への入れ替えなど故障時の対策をあらかじめ検討しておく必要があります。

・パフォーマンスの低下リスクがある

UTMは複数のセキュリティー機能を同時に稼働させるため、ファイアウォールなど単一のセキュリティー機能だけを導入している場合よりも大きな負荷がかかります。ネットワーク全体の通信速度などが低下しないよう、ネットワークの規模に適した信頼性の高い機器を選択する必要があります。

・導入コスト・運用コストが発生する

UTMを導入するためには、機器の購入費や設定費が必要です。また運用するためのランニングコストも発生します。導入したいセキュリティー機能によっては、個別のセキュリティーツールを導入した方が安価になることもありますので、導入前の比較・検討をおすすめします。

4.UTMの主な保護機能

UTMの主な役割は「外部からの脅威をブロックする」こと、そして「内部から危険なサイトへのアクセスをブロックする」ことです。それぞれの役割に該当する機能を以下にまとめました。

外部からの脅威をブロックする機能

ネットワークへの外部からの攻撃の中でも特に多く見られるのが「不正アクセス」「スパムメール」「ウイルス」です。UTMはこれらの脅威を検知し、通信を遮断する機能を搭載しています。

・IDS/IPS : 外部からの不正アクセスを検知、遮断

IDS(Intrusion Detection System)は外部からの不正な侵入を検知・通知する機能で「不正侵入検知システム」とも呼ばれます。IPS(Intrusion Prevention system)は検知後に通信を自動的に遮断し不正アクセスを防ぐ機能で「不正侵入防御システム」とも呼ばれます。IPSはIDSと比べてより迅速な対応が可能ですが、誤検知・誤遮断により業務に支障が発生する可能性がありますので、運用には注意が必要です。

・アンチスパム : 悪意あるメール受信を遮断

UTMに搭載されている「アンチスパム」は、広告メールや詐欺メールなどを大量に送りつけるスパムメール(迷惑メール)を検出し、遮断する機能です。ウイルス、マルウェア、フィッシング攻撃などによるネットワーク障害、情報漏えいに対策するとともに、個別のPCでスパムメールをチェックして削除するというな不必要な手間をなくし業務を効率化します。

・アンチウイルス : 脅威ソフトウェアの侵入を防ぐ

UTMには、ネットワークの出入口で不正なファイルや通信を検査し、マルウェアやウイルスを検出・遮断する「アンチウイルス」機能も搭載されています。定期的に定義ファイルを更新することで、新種のマルウェアなどの攻撃にも対応することができます。

危険なサイトへのアクセスをブロックする機能

ネットワークを守るためには、外部からの攻撃を遮断するだけでなく、利用者がうっかり危険なサイトにアクセスしてしまう事態も防ぐ必要があります。UTMには、業務に関係のないサイトやコンテンツへのアクセスをブロックしたり、不正な通信を検知して遮断する機能も搭載されています。

・Webフィルタリング : 業務に無関係なサイトへのアクセスを制限

UTMに搭載されている「Webフィルタリング」は、ネットワークを介したインターネットアクセスを制御し、不適切なウェブサイトやコンテンツへのアクセスを制限する機能です。指定したカテゴリーのサイトや指定したキーワードを含むページへのアクセスをブロックし、セキュリティーの向上を図ります。業務用ネットワークの私的利用を防ぐことにより、業務効率向上も見込めます。

・アプリケーション制御 : 業務に無関係なアプリケーションの使用などを制限

UTMに搭載されている「アプリケーション制御」は、許可されていないWebアプリケーションへのアクセスを制御する機能です。SNS、動画配信サービス、ゲーム、Webメールなどの業務に関係のないアプリケーションやサービスへのアクセスを制限することにより、セキュリティーを強化するとともに業務効率向上も見込めます。

・アンチボット : 悪意のあるボットを検知・不正なURLへのアクセスを遮断

UTMに搭載されている「アンチボット」は、悪意のあるボット(自動実行プログラム)による不正な通信に対策する機能です。正常なボットの動作を妨げることなく、不正なボットを検知し、感染端末と攻撃者のサーバー間の通信を遮断することで、遠隔操作によるサイバー攻撃や情報漏えい対策に効果的です。

中小企業にちょうどいい保護機能を搭載したバッファローのUTM機能対応ルーター

バッファローでは、中小企業などの小規模ネットワークに適したUTM機能対応ルーターを販売しています。
ファイアウォール、IDS/IPS、アンチスパム、アンチウイルス、Webフィルタリング、アプリケーション制御、アンチボット機能を搭載。
ネットワークの出入り口にこのルーターをつなぐことで、外部からの脅威をシャットアウトし、危険なサイトへのアクセスや不適切な通信などへ対策することができます。
詳しくは以下のページをご参照ください。

5.UTM導入 こんな企業におすすめ

UTMの導入によって機能面、コスト面でより高い効果を得られる企業の特性を以下にまとめました。該当する企業の方は、UTMによるセキュリティー強化を検討されることをおすすめします。

・効率的な運用が求められる、ひとり情シスの現場

ネットワークの管理担当者が一人のみの企業では、セキュリティーシステムを何種類も導入し、設定・管理・運用することは容易ではありません。UTMを選択すれば、複数のセキュリティーシステムを一元管理でき、トラブル時の対応もスムーズになります。

・アンチウイルスソフトなど基本的な対策は講じているものの、万が一に備えたい企業

セキュリティーに関する知識不足・情報不足により、ウイルス対策ソフトなど最低限の対策しか行えていない企業は数多く見られます。より強固なセキュリティーシステムを手軽に導入したい企業には、必要な機能を備えているUTMがおすすめです。

・限られたリソースの中、セキュリティー強化を急務とする中小企業

複数のセキュリティーシステムを個別に導入するためには、各システムの情報収集を行い、機能や管理方法、価格などを精査し、計画を立案する必要があります。すべての機能を1台にまとめているUTMなら、中小企業などリソースが限られている環境でも短期間での導入が可能です。

・小規模ネットワークにぴったりなバッファローのUTM機能対応ルーター

10〜50名の中小企業など比較的小規模なネットワークのセキュリティー対策には、バッファローのUTM機能対応ルーターがおすすめです。マルウェアやサイバー攻撃などの脅威からネットワークを守るための必要十分なセキュリティー機能を手軽に導入できます。導入しやすい価格設定で、無料のリモート管理サービスも利用可能です。詳しくは以下のページを参照ください。

6.UTMに関してよくある疑問

・UTMはもう古い、必要ないといった声があるのはなぜ?

「UTM」というキーワードでネット検索を行うと、同時に「古い」「必要ない」などの言葉が表示されることがあります。これはテレワークの普及やクラウドサービス利用者の増加により、「社内ネットワークのセキュリティー強化だけでは不十分」「社外も含めたセキュリティーが必要」といった議論が行われるようになったからです。しかしこれはあくまで1つの考え方であり、UTMが有効なセキュリティーシステムの一つであることは変わりません。後述のクラウド型UTMと比較して、よりメリットの大きいシステムの導入をおすすめします。

・クラウド型UTMってなに?

クラウド型UTMとは、文字通りクラウド環境で提供されるUTMのことです。インターネット接続の際にクラウド型UTMを経由することによって、不正アクセスやサイバー攻撃からネットワークを守ることができます。
クラウド型UTMには、社内に機器を設置する必要がないため初期投資を抑えることができる点や、主な管理をサービス提供会社に任せることができる点、さらにテレワークや外出先からのネット利用に対応しやすいなどのメリットがあります。

一方で、定期的なサービス利用料が発生することや、インターネットを経由するため大量のデータ送受信を行う場合に遅延が発生しやすくなるなどのデメリットもあります。
自社の運用形態や予算に応じて、UTM機能対応ルーターを選ぶか、クラウド型UTMを選ぶか、これらのメリット・デメリットを踏まえて検討するとよいでしょう。

7.UTMについてまとめ

このページでは、UTMに搭載されている様々なセキュリティー機能と導入のメリット・デメリット、導入すべき企業の特性についてご紹介しました。バッファローでは中小企業向けに開発したUTM機能対応ルーターを販売していますので、UTM導入の際は1つの候補としてご検討ください。詳しくは以下の関連記事を参照ください。

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