牧場の広大な敷地を無線LANでつなぐ屋外の過酷な環境にも対応したネットワーク環境を構築

農事組合法人 佐々木牧場 様

農事組合法人 佐々木牧場 専務取締役 佐々木 健二氏(右)
株式会社オーレンス プロバイダ営業部 小川健喜氏(左)

北海道士幌町の農事組合法人 佐々木牧場は、搾乳ロボットを2台導入してバイオガス発電所も備えた最新型の牧場を2016年3月12日に開設しています。佐々木牧場では、搾乳ロボットやバイオガス発電所の遠隔監視サポートのためにインターネットを導入し、牧場全体で利用できるように無線LAN環境を構築。無線LANを活用した監視カメラシステム「みまもりさん」も導入し、牛舎の分娩房や分娩舎を監視して分娩事故防止への活用を実現しました。

概要

最新の設備を揃えた牧場を新設

乳牛の管理を行える搾乳ロボットを導入

バイオガス発電所でコスト回収と環境整備を実現

省力化が見込める最新鋭の牧場を新設

北海道士幌町に新たに作られた佐々木牧場は、
最新鋭の設備で機械化され、新たな牧場運営を行っている

北海道の南西部で帯広市の北部に位置する士幌町は、畑作、酪農、畜産が盛んで、多くの牧場が運営されています。士幌町で長年牧場を運営してきた農事組合法人 佐々木牧場 専務取締役の佐々木健二氏は、将来的な牧場運営を見据えて、オランダ製の最新の搾乳ロボットを導入し、バイオガス発電所も備えた最新鋭の牧場を建設することを計画していました。畜産では、最低でも50頭に1人の人手が必要になりますが、搾乳ロボットを導入することで200頭以上を2人で管理できるため、深刻な人手不足を解消することができます。また、再生可能なエネルギーを作るバイオガス発電所も備えることで、環境にもやさしく、売電によるコスト回収も望めます。

従来から運営している牧場を機械化するのではなく、搾乳ロボットやバイオガス発電所を活用できるように施設や牛舎内の設備の配置を考える必要があったと説明する佐々木氏は、約200ヘクタール(東京ドーム42個分)の広大な土地に餌用の畑と牧場を作り、2016年3月12日から本格的に稼動させています。

搾乳と給仕を管理して分析するロボットを導入

搾乳ロボットを導入することで、
効率的な生産と省力化を実現している

佐々木牧場が導入した搾乳ロボットは、乳牛に付けられたタグで識別して、自動的に搾乳を行い、搾乳と給餌の稼働状況を監視することができます。専用のダッシュボードを利用して、総生産乳量はもちろん、1頭あたりの乳量や成分、健康分析などのさまざまな分析・レポートが行え、リアルタイムの監視が行えるようになっています。

初産牛のほうが搾乳ロボットに慣れやすく、牛が搾乳を嫌がらない設計にすることも、佐々木牧場が新たな牧場の新設を決意した理由の1つです。これにより、大幅な省力化が実現でき、乳品質の向上や乳量の増産も目指していくことができます。

牛舎環境を清潔にして再生するバイオガス発電所

糞尿を自動的に回収して牛舎を清潔に保ち、
再利用するためにバイオガス発電所も備えている

佐々木牧場では、牛舎の床をスクレーパーと呼ばれる装置が往復して糞尿を集めることで、自動的に衛生的な環境を保てるようにしています。集められた糞尿は、牧場内のバイオガス発電所に送られ、発酵させることで電力を作り出しています。牧場の環境をよくするだけでなく、これらの電力を売ることで、牧場の新設にかかったコストを少しでも回収していくこともバイオガス発電所設置の目的の1つでした。

しかし、搾乳ロボットやバイオガス発電所を運用していくためには、インターネット回線が必要で、牧場全体でインターネットを利用できる環境も必要となります。稼働状況を母屋や農場で監視する必要があるだけでなく、トラブルが発生した際にメーカーから遠隔サポートを受けて、いち早く復旧する必要があったのです。それを実現するために佐々木牧場が導入したのが、オーレンスが提案したバッファロー商品を活用した無線LANシステムでした。

農事組合法人 佐々木牧場 様

北海道士幌町の佐々木牧場は、2016年3月から新たに作られた最新鋭の牧場で、省力化のための最新鋭の搾乳ロボットやバイオガス発電所が備えられている。将来的には、従来の牧場と合わせて450頭の乳牛を飼育することを目指している。

所在地

北海道河東郡士幌町

電話

目標・課題

有線LANが敷設しづらい環境で無線LANが必須

耐環境性能が高い無線LAN機器を求める

畜産業の最大の課題である分娩事故対策

重機や牧場内の公道があるため無線LANが有効

佐々木牧場の敷地内に公道が横断しているため、
有線LANを敷設するためには申請などが必要となる

佐々木牧場では、広大な牧場にネットワークを張り巡らせるためには、有線LANに比べ敷設コストが安く制約の少ない無線LANのほうが、有効な手段だと判断しました。積雪の多い北海道という地域性もあり、餌の運搬などで重機が稼動する牧場では有線LANを敷設するには不向きだと考えられたのです。

また、牧場の敷地内には公道が走っているため、有線LANを通すためには申請などが必要になってくることも問題でした。そのため、佐々木牧場では、インターネット回線を引いたオーレンスに相談し、無線LAN機器の選定を進めます。

気温差が激しく耐腐食性も備えた機器が必要

無線LAN機器の選定では、牧場という精密機器を設置するには不向きな環境に耐えられるものが必須であると考えられました。佐々木牧場がある士幌町は季節により氷点下を下回るような寒暖差が激しい地域です。また、風も強い中で粉塵などが舞いやすいため、動作保証温度が幅広く、防水、防塵、耐腐食など、耐環境性能の高い商品が必要です。
搾乳を安定的に行い、バイオガス発電所の費用対効果を最大限にするためには、屋外環境でも安定した無線LAN環境が求められました。

分娩を監視するカメラを導入

長時間かかる乳牛の分娩を他の作業を行いながら監視することで、
適切な介助を行って分娩事故を防ぐことが可能になる

無線LANを牧場で活用することで、畜産業で最大の課題となっている分娩事故対策を行うことも考えられました。言うまでもなく、1頭数十万もする乳牛は、牧場にとっての貴重な財産です。しかし、牧場での子牛の死亡原因の多くが分娩事故となっており、適切な介助を行えないために、子牛だけでなく、親牛を死なせてしまうケースもあります。

「分娩の兆候が出て、分娩房に親牛を移動させても、人を付きっ切りにすることは現実的ではありません。無線LANを利用して、牛舎の分娩房や分娩舎に監視カメラを付けられれば、農場にいてもスマートフォンなどで確認でき、母屋からでもすぐに介助に駆けつけることができます。貴重な財産である牛の命を助けられるのであれば、投資する価値があると考えました」と佐々木氏は話します。

解決策

対環境性能が高いアクセスポイントを採用

広範囲をカバーする補助アンテナ

分娩事故対策用の監視カメラシステムも導入

導入商品

エアステーション プロ
11n/a & 11n/g/b切替使用
スマートモデル
無線LANアクセスポイント

エアステーション プロ
11n/g/b対応
防塵・防水 対環境性能
無線LANアクセスポイント

エアステーションプロ
2.4GHz無線LAN 屋外遠距離通信用
コーリニア型アレーアンテナ

エアステーション
11ac/n/a/g/b対応
無線LAN親機

牧場環境に合った無線LANアクセスポイントを採用

バイオガス発電所に設置されたWAPS-300WDP

屋外で、気温や粉塵、腐食などに耐えられる無線LANアクセスポイントとして、佐々木牧場ではバッファロー製のWAPS-300WDPを採用し、牛舎、バイオガス発電所、分娩舎の3箇所に設置しています。WAPS-300WDPは動作保証温度が幅広く、寒暖差が激しい牛舎などの利用を想定した作りとなっており、保護等級IP55(防塵等級5、防水等級5)に対応し、基板をフッ素コーティングすることで高い耐腐食性を持っています。

「無線LANは、佐々木牧場さんのビジネスに必須のインフラとなる重要なものなので、とにかく安定した商品を使うことが重要でした。気温差や腐食などの問題はアンテナを使えばある程度解決できますが、落雷のリスクが高まります。WAPS-300WDPであれば落雷のリスクの低い場所に設置でき、十分に牧場の環境で利用できると考えました」と機器を選定したオーレンスの小川健喜氏は話します。

広範囲に無線LANを提供できる補助アンテナ

屋外用アンテナを利用して
約200ヘクタールの広大な敷地をカバーしている

一方、センター拠点のアクセスポイントには、管理機能が搭載されたWAPS-AG300Hを採用。また、約200ヘクタールある佐々木牧場全体を無線LANでカバーするために、屋外遠距離通信用に設計された無指向性アンテナWLE-HG-NDCを接続。  佐々木牧場では、インターネット回線が引かれたサイロのルーターの側の電柱にWLE-HG-NDCを設置することで、できるだけ高いところから広範囲に無線が届くようにしています。

また、佐々木氏の自宅でも無線LAN環境が利用できるようにWHR-1166DHP2も導入されています。これにより、牧場内のあらゆる場所で無線LAN環境を利用することが可能となりました。

無線LANを使った牛舎監視システムも導入

無線LANネットワークを活用し、分娩事故対策としてオーレンスが提供する牛舎監視システム「みまもりさん」を使った監視カメラが導入されました。みまもりさんでは、画像だけでなく音声も確認することができ、夜間もナイトビューとライトを利用できます。牧場内のどこからでも無線LAN経由で牛の分娩の様子を確認でき、いざというときに介助に駆けつけることが可能となります。

佐々木牧場 システム構成

効果

監視カメラを利用して分娩事故を最小限に

環境にマッチしたアクセスポイントと補助アンテナで安定運用

今回導入した機器と無線LANを元に事業を拡大

無線LANを牧場に張り巡らせることで24時間見守りが可能に

パソコンでカメラをコントロールして24時間監視することが可能

オーレンスが提供するみまもりさんとバッファローが提供する安定した無線LAN環境によって、佐々木牧場では、分娩事故を最低限に抑え、生まれてくる子牛や親牛の命を守れることに大きな期待を寄せています。カメラは、分娩舎に1台、牛舎の分娩房に1台、牛舎全体を見渡す場所に1台の計3台が設置され、パソコンやスマートフォンからいつでも監視することができるようになっています。これにより、何か問題が発生した場合にすぐに対応でき、人手をかけずに適切な処置を行うことが可能となります。

また、佐々木氏は分娩事故対策以外にも監視カメラが有効に利用できることを明かしてくれました。「牧場では、キタキツネなどの他の動物が牛舎に入り込んで、悪戯をしてしまうという課題もあります。24時間いつでもどこでも監視できれば、これらの動物が迷い込んだり、乳牛に異変が起きたりしたときにも映像や音声ですぐにわかるので、非常に便利になると期待しています」。

牧場でも安定した無線LAN環境を提供できるバッファロー商品

対環境性能が高いだけでなく、
できたばかりの牛舎にもスマートにマッチするWAPS-300WDP

「みまもりさんで利用する無線LAN機器は、基本的にはお客様の要望に合わせてさまざまな会社のものを利用していますが、特にWAPS-300WDPは、牧場で使いやすい商品だと思います」と話す小川氏は、落雷以外の理由でもアンテナよりもWAPS-300WDPが使いやすいことを話します。「佐々木牧場さんは新しい施設なので、アンテナを突き出したり、ボックスを付けたりしてアクセスポイントをカバーすると、モノモノしくなって建物にマッチしないことが気になりました。WAPS-300WDPは、壁に直接付けられてスマートに設置できることもよいと感じています」。

また、WLE-HG-NDCの効果についても小川氏は高く評価しています。「非常に広い場所に安定した電波を届けるためには、補助アンテナが必須だと考えました。設置後は、80%以上の強度で無線LANを利用できているので、非常に高い効果が出ていると思います」。

将来的に乳牛の頭数を増やしてビジネスを拡大

最新の設備を備え、それを支える無線LAN環境を整備して分娩事故対策も立てられた佐々木牧場では、今後はさらに乳牛を増やし、ビジネスを拡大しようと考えています。「将来的には、前の牧場と合わせて450頭まで乳牛を増やしていきたいですね」と佐々木氏は話しています。

TPPへの参加が進むなど、農業や畜産業の環境はめまぐるしく変化し、先を見据えた対応・対策が不可欠となってきています。特に日本の畜産業は、搾乳ロボットを積極的に取り入れている欧米に比べて遅れていると言われている中で、佐々木牧場は攻めの牧場経営を進め、必要な設備とインフラを整えることで、省力化による人手不足解消や牛の育成に適した環境を実現しています。


追加情報

2022年10月現在、バッファローでは寒冷地の屋外設置に対応する耐環境性能モデルの無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPRA」をラインナップ。動作保証温度-30~55℃の温度耐性や防水、防塵、耐腐食性能のみならず、直射日光が当たる場所への設置にも対応。牧場のWi-Fi整備に最適な無線LANアクセスポイントです。


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