毎年新たな試みと検証を積み重ね、理想のICT環境を検討。市内の公立全小・中学校、義務教育学校に無線LANを導入し、タブレットを活用した協働学習・グループ学習を実施

守口市教育委員会 様

守口市教育委員会事務局 指導部 教育センター
指導主事 持田裕一氏(以下、持田氏)

守口市教育委員会では、市内のすべての公立小・中学校の普通教室、コンピューター教室、職員室に無線LANを導入。平成30年度には各校41台のWindowsタブレットPCとiPadを導入し、既設の電子黒板、書画カメラ、ノートPCと併せて、ICTを活用した授業の研究・開発を進めています。環境整備とともに、研究指定校制度、タブレットPC活用推進リーダー育成事業、教材コンテスト、活用事例集の発行等のユニークな施策を実施し、教員のスキル向上と授業開発を支援。「児童生徒が主体の授業づくり」を合言葉に、教育の質と学力の向上を目指しています。

概要

大阪府の中央に位置する、大阪都市圏の衛星都市

平成21年度を皮切りに、小・中学校のICT化を順次強化

幼児教育・保育の全面無償化など、子育て世帯にやさしい街づくりを推進

守口市役所は、平成28年に現在の場所に移転。
守口市発展の一翼を担った旧三洋電機株式会社の
本社ビルを改修し、新庁舎にした

大阪府のほぼ中央に位置する守口市は、古くは農地が大部分を占め集落が点在していましたが、大阪市へのアクセスの良さから、市街地、住宅地として、また大手家電メーカーの企業城下町として高度経済成長期に急成長。現在は約14万人が居住する大阪都市圏の衛星都市となっています。市内には、京阪電車、大阪市営地下鉄、大阪モノレールなどの鉄道や、国道1号、阪神高速道路、近畿自動車道などの主要道路が整備されており、周辺都市を結ぶ交通の要衝となっています。

「未来への投資」「女性の活躍支援」「定住のまち守口の実現」を柱に、子育て世帯にやさしい街づくりを推進。小・中学校、幼稚園、保育所の再編整備を進めるとともに、平成28年度には全国に先駆けて小・中一貫教育を導入し、義務教育学校「さつき学園」を創設しました。平成29年度には、全国の市で初めて、0~5歳児の幼児教育・保育の全面無償化も開始しています。既存の制度にとらわれない新たな政策に次々と着手し、魅力ある街づくりを進めています。

教員のICT活用支援から、児童生徒のICT活用支援へ

守口市は、平成21年度から、市内のすべての公立小・中学校に、電子黒板と書画カメラを導入。活用方法をまとめたマニュアルを作成するなど、教員のICT活用支援を進めてきました。導入後の児童生徒へのアンケートでは、90%以上の子どもたちが「ICT機器をつかった授業はわかりやすい、理解が深まる」「先生はICT機器を授業で使っている」という回答を得ることができました。

平成23~25年度には、総務省の「地域雇用創造ICT絆プロジェクト:教育情報化事業」に参加し、児童のICT活用支援に着手。三郷小学校と橋波小学校が実証研究校となり、4~6年生の各教室に無線LANアクセスポイントを設置するとともに、児童1人1台のタブレットを活用した授業を実施しました。

その成果を踏まえ、平成27年度には、第二中学校・第四中学校の統合により開校した樟風中学校に、6台の可搬式無線LANアクセスポイントと90台のタブレットを導入。さらに常設無線LANアクセスポイントと6台のPCを設置したメディアセンターを開設しました。メディアセンターは生徒だけでなく一般向けにも開放し、より多くの市民がICTを活用できる環境づくりを進めてきました。

守口市教育委員会

守口市教育委員会では、「郷土を誇りに思い、夢と志をもって、国際社会で主体的に行動する人の育成」の教育理念のもと、学校・家庭・地域の教育力を高め、「生きる力」と「生涯学び続ける人」の育成を目指した学校教育・社会教育を実施。義務教育9年間を見通した小・中一貫教育を推進するとともに、家庭学習冊子の作成、土曜学習、人権教育講座、いじめ防止メッセージの発信やアンケート調査など、多面的かつ具体的な教育活動に取り組んでいる。現在の学校数は、小学校13校、中学校7校、義務教育学校1校。近年の児童減少に伴う学校の統廃合を好機と捉え、各種ICT機器と無線LANを順次導入。ICTを活用した、こども主体の授業づくりに注力している。

所在地

〒570-8666 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号

電話

目標・課題

市内のすべての公立小・中学校に無線LANを導入

過去の検証結果を踏まえ、可搬式ではなく常設無線LANアクセスポイント導入を決定

守口市のICT活用教育に対する取り組みと、
全小・中学校に無線LANを導入するまでの経緯を説明する持田氏

平成28年度に学校教育法の一部が改正され、小学校課程から中学校課程までの義務教育を一貫して行う「義務教育学校」の制度が創設されました。これを受け、すでに平成26年度から小・中一貫教育を導入していた守口市では、さつき小学校と第三中学校を合併し、義務教育学校「守口市立さつき学園」を開校。すべての教室に無線LANアクセスポイントを設置し、タブレット授業を行える環境を整えました。

「前年度に無線LANを導入した樟風中学校では、可搬式の無線LANアクセスポイントを採用していましたが、移動と設置に時間がかかるという問題が指摘されていました。また、機器の配線が苦手な教員にとっては、自分で設置をしなくてはいけないことが負担になり、なかなか利用率が上がらないという報告もありました。そこで、さつき学園には可搬式ではなく常設の無線LANアクセスポイントを導入することにしたのです。導入後の調査では、タブレットを持っていくだけですぐに使える、学校中どの場所でも使えると評判は上々。利用率もぐんと上がりましたので、これを他の小・中学校にも展開し、市内のすべての公立小・中学校の普通教室に、常設の無線LANアクセスポイントを設置することにしました。」(持田氏)

解決策

バッファロー商品の採用により、4つの必須条件を低価格で実現

教育センターの既設PCから、すべての小・中学校の機器を一括管理

導入商品

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
法人様向け
無線LANアクセスポイント

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
法人様向け
無線LANアクセスポイント

ネットワーク管理ソフトウェア

普通教室には「WAPM-1266R」、コンピューター室と職員室には「WAPM-2133TR」を採用

市内のすべての公立小・中学校の教室に、「WAPM-1266R」を設置。
設置用のラックがない学校では電子黒板の背面に設置するなど、
学校ごとに最適な設置方法を検討した

全小・中学校への無線LAN導入にあたって持田氏が設定した条件は、①40台のタブレットを同時に安定して接続ができること、②11acに対応していること、③各学校に設置した機器の死活監視・一括管理ができること、④災害時に防災Wi-Fiとして一般開放できること、の4点。競争入札の結果、最も安価でこれらの条件を満たしていたのが、バッファロー商品を使用したプランでした。

「小・中学校の全教室に無線LANを導入するためには300台以上の無線LANアクセスポイントが必要です。採用になったプランは、コストパフォーマンスに優れていました。『WAPM-1266R』は、公平通信制御機能こそ搭載していませんが、最大256台の端末を同時接続できる性能を搭載しています。極端に大きな負荷をかけなければ、1人1台のタブレット授業にも十分対応できると考えました。」と、採用の理由を説明する持田氏。「コンピューター教室と職員室には、最上位モデルの『WAPM-2133TR』を採用しました。コンピューター教室では、授業支援ソフトウェアなど大きなネットワーク負荷がかかる作業を行いますし、Windowsタブレットを使用しているためOSアップデートの際にも大きな負荷がかかります。職員室についても、動画などを利用した授業の準備や校務支援システム、校務用サーバーの利用など、ネットワークの利用頻度が高いため、通信負荷に強いトライバンドの『WAPM-2133TR』が最適だと考えました。」(持田氏)

コンピューター教室と職員室には、「WAPM-2133TR」を設置。職員室を無線LAN化したことにより、会議などの際にノートPCやタブレットを持ち運んで利用できるようになった

手軽に導入でき、すべての機器の死活監視・一括管理ができる「WLS-ADT」

「バッファローさんのネットワーク機器は、教育センターのPCに『WLS-ADT』をインストールするだけで、全小・中学校の機器を死活監視・一括管理ができるところがいいですね。他メーカーさんでもソフトウェアで遠隔管理できる商品はあるのですが、その多くはソフトウェア単体ではなく、専用の端末ごと導入しなくてはなりませんので、その分費用が高いですし、設置場所も必要になります。災害時などに小・中学校の無線LANを一般開放する『緊急時モード』への切り替えも、教育センターのPCから一括で行えますし、非常に導入しやすく、使いやすいソフトウェアだと思います。」(持田氏)

守口市立小・中学校のネットワーク構成図

効果

無線LANとタブレットを活用した協働学習、グループ学習

教員のスキル向上と授業開発を支援する取り組み

タブレットの活用によって、児童・生徒主体の授業に

説明~調べ学習~発表と、授業の様々なシーンで電子黒板と
タブレットを活用し、活気にあふれた協働学習、
グループ学習が行われている

無線LAN導入工事は平成29年度末に完了。さらに各校にタブレットPCを順次配布し、平成30年度には、守口市立のすべての小・中学校でタブレット授業が行える環境が整いました。配布済みの学校では、既設の電子黒板とタブレットを連動させた新たな授業がスタートしています。

「以前から活用している電子黒板とタブレットを使いながら、各教員が効果的な授業の開発を進めています。例えば小学校の国語で俳句を学ぶ授業では、俳句の基本を説明した後、各自が俳句の情報をネットで検索して、季語の使い方や表現手法などを理解します。その後自分で俳句を詠み、できた作品をタブレットから電子黒板に提出して発表します。以前と比べて、児童が自分で調べたり考えたりする時間が増え、発表もスムーズになりました。」(持田氏)

「中学校の理科の実験では、これまでは黒板やプリントを使ったり、実際に実験器具を見せたりしながら実験内容を説明していましたが、事前に準備した資料を生徒のタブレットに配信するだけで済むようになりました。生徒はタブレットを見ながら実験を行い、タブレットと電子黒板を使って発表。各グループの結果比較も容易にできます。家庭科の授業でも同様にレシピを配信。ネット上のレシピを参考にアレンジを加えたり、盛り付けの工夫をするなど、タブレットをうまく活用しています。体育ではタブレットの動画撮影機能を利用するなど、実技教科でも、ICTを活用した児童・生徒主体の協働学習、グループ学習が進んでいます。」(持田氏)

理科の実験や家庭科の調理実習では、タブレットで手順を確認することで、授業の進行が従来よりスムーズになった

環境整備にとどまらず、ICT活用を支援する様々な事業を実施

教員から報告されるICT活用事例を冊子にとりまとめた
「ICT活用事例集」。他校、他教員の実施事例やコメントが、
授業開発の参考として役立っている

守口市では、総務省の「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」終了後も、毎年研究指定校を定めて、ICT活用の研究を進めています。毎年指定校を変え、テーマを設定し、大学教授のアドバイスを受けながら授業開発に取り組むことで、各学校のICTに対する意識と知識・技術の向上を図っています。

「当教育委員会では、設備を整えるだけでなく、教員の授業開発支援にも力を入れています。例えば、平成30年度から開始した『タブレットPC活用推進リーダー育成事業』。全教員から希望者を募り、面接によって選んだ十数名のリーダーを対象に、ICT活用のノウハウを学ぶための、ワーキング会議や研修会、実践研究等を実施しています。リーダーには、次年度から講師として、他の教員の指導を行ってもらう予定です。他にも、優れたICT教材を競い合う『もりぐちICT学びの教材コンテスト』の実施、教員同士が情報を共有するためのICT活用事例集の発行など、様々な事業によって、教育の質の向上を目指しています。」(持田氏)


取材後記

守口市教育委員会では、「まずは教員のICT化を、その上で児童生徒のICT化を、」と明確な方針のもと小・中学校のICT化を進めてきました。平成21年度から毎年新たな試みと検証を積み重ね、最適なICT環境を検討するとともに、財政部の職員に何度も現場を見てもらい、交渉を重ねることで、計画の理解を得られ予算を確保できたそうです。今回の全小・中学校無線LAN導入は、そうした地道な努力と苦労の上に実現されたことを改めて伺い、頭が下がる思いでした。当社の商品が、守口市の児童生徒さんたちの学力向上に寄与することを心から願っております。


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