名古屋市が初めて主催したハッカソンで、 イベント会場の実証実験用Wi-Fi環境をバッファローが無償提供。屋外設置可能な耐環境性能無線LANアクセスポイントが実証実験に必要なWi-Fiの仮設提供を実現

名古屋市市民経済局産業部産業労働課 様

名古屋市市民経済局産業部 主幹(産業立地等) 齊藤俊宏(以下、齊藤氏)

名古屋市市民経済局産業部産業労働課は、2017年10月~2018年3月に、名古屋市主催としては初めてのハッカソンとなる「Nagoya Hackathon(ナゴヤハッカソン)」を開催。首都圏ICT企業と地元の企業・個人のクリエーター、エンジニア、プランナーを募集し、「女性や外国人に愛される街となるIoT商品やサービスを創り出せ!」をテーマにした開発イベントを実施しました。2017年10月28・29日のハッカソンで提案されたアイデアのうち5点については、引き続きプロトタイプを制作し、2018年3月24日に一般公開および実証実験を実施。会場となった星が丘テラスのWi-Fi環境整備を、本事業の協力企業であるバッファローが担当しました。

概要

参加者同士がチームを組んでIoT商品・サービスを開発

ハッカソンをきっかけに、中京圏の製造業に新しい動きを。

名古屋市を女性や外国人に愛される街にするためのアイデアを発掘

ナゴヤハッカソンは、アイデア発掘・試作コンペを行う「ハッカソン」、アイデアをもとに試作を行う「プロトタイプ制作」、一般向けにプロトタイプを紹介する「実証実験」の3つのステップにより約5ヶ月に渡って開催されました。ハッカソンは2017年10月28・29日に実施。一般募集により集まった法人・個人の参加者が、その場でチームを組み、名古屋市を女性や外国人に愛される街にするためのIoT商品・サービスを企画しました。そのうち5チームは引き続きプロトタイプ制作を行い、2018年3月24日に名古屋市千種区の星が丘テラスで開催した「Nagoya Hackathon(ナゴヤハッカソン)実証実験・成果発表会」で一般公開。来場者にプロトタイプを紹介するとともにデモを体験してもらい、商品・サービスの検証を実施しました。

ナゴヤハッカソンは、「ハッカソン」「プロトタイプ制作」「実証実験」の3つのステップにより約5ヶ月に渡って開催された。(図はナゴヤハッカソン公式ページより)

子ども向けイベントの一部として、星が丘テラスを会場に実証実験

実証実験の会場には河村たかし名古屋市長も視察訪問。
プロトタイプの説明を聞いたり、体験をしたりしながら
各チームのブースを回りました

「ナゴヤハッカソンの開催は、ものづくりとICTを掛け合わせ、中京圏の産業の中心である製造業に新しい動きを作り、さらなる発展のきっかけとすることが狙いです。おかげ様で多くの法人・個人の皆様にご参加いただき、大変盛り上がったイベントになりました。実証実験の会場として使わせていただいた星が丘テラスは、近くに女子大があり、おしゃれな雰囲気のお店が並び、外国人を含めて多くの人で賑わっている場所です。女性と外国人を対象にした商品・サービスの実証実験に最適だと考え、運営会社の東山遊園株式会社様にご協力をお願いしました。単なる実証実験では参加者が集まりにくいため、星が丘テラスが開催する子ども向けイベントの一部として開催しました。こちらも多くの来場者様にご参加いただき、プロトタイプの検証やお客様の印象等を伺うことができました。」(齊藤氏)

ハッカソン(Hackathon)とは

「ハッカソン(Hackathon)」は、ソフトウェアエンジニアリングを指す「ハック(hack)」と、「マラソン(marathon)」を組み合わせた造語。エンジニア、デザイナー、プランナー、マーケターなどがチームを作り、1日~1週間程度の集中した期間で、与えられたテーマに合ったサービス、システム、アプリケーションなどを開発し、その成果を競い合う。近年、新しいサービスや機能に関する技術、アイデアの発掘を目的にした、企業や自治体などのハッカソンが盛んに開催されている。

名古屋市市民経済局産業部産業労働課

名古屋市市民経済局は、名古屋市民の生活安全、交通安全や活動支援、地域振興等を主な業務とする名古屋市役所の組織。「安心・安全で快適なまちづくり、活力と魅力あるまちづくり、人間性豊かなまちづくり」を目指して、様々な施策に取り組んでいる。産業部産業労働課は、名古屋市内の中小企業の実態調査、調査研究をもとに、産業デザインの振興、産業人材の育成、就労支援等を実施。さらに労働福祉事業や、産業交流の推進、販路開拓の支援、産業立地の促進、企業誘致の推進等、中小企業の振興を中心とした幅広い事業を実施している。

所在地

〒460-8508 愛知県名古屋市中区三の丸三丁目1番1号

電話

課題・解決策

実証実験会場のWi-Fi環境整備をバッファローが担当

導入商品

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
防塵・防水耐環境性能 法人様向け
無線LANアクセスポイント

Wi-Fiルーター
(無線LANは使わず、
DHCPサーバーとして使用)

レイヤー2 Giga PoE
スマートスイッチ

ハイパワーPoEインジェクター
1CHモデル

約70m離れた3つの会場を、2台の「WAPM-1266WDPR」でWi-Fi化

実証実験が行われたのは、星が丘テラスEAST 2階GAP前、WEST1階の店舗前ウッドデッキの2か所のメイン会場と、そこから70mほど離れた星ヶ丘三越玄関ピロティのステージ。チームごとにテントを設置し、イベントや買い物に訪れた一般来場者を対象に商品・サービスのプロトタイプを紹介し、体験をしてもらいました。

5つの実証実験のうち2つはWi-Fi環境が必要でしたが、会場にはWi-Fi環境がなかったため、バッファローがこれを提供。屋外への設置に対応した耐環境性能Wi-Fiアクセスポイント「WAPM-1266WDPR」を使って、仮設のWi-Fi環境を構築しました。

星が丘テラスEAST2階通路に設置した「WAPM-1266WDPR」。市販のメッシュパネルを結束バンドで脚立に固定し、転倒防止のため注水式の重石を置いて、手軽に設置が可能な簡易スタンドを製作し仮設置した。

星ヶ丘三越玄関ピロティーの近くに設置した「WAPM-1266WDPR」。
約70m離れたメイン会場からの電波を中継し、
実証実験に必要なWi-Fiを安定供給できる環境を構築した

WAPM-1266WDPRの設置に際しては、市販のメッシュパネル・脚立・注水式重石で製作した簡易スタンドを使用。星が丘テラスの防災センターのインターネット回線から、ルーターを介してEAST2階の会場までLANケーブルを引き、WAPM-1266WDPRに接続しました。道路を隔てたWEST1階の会場にも、ここからWi-Fiの供給を行いました。

星ヶ丘三越の玄関ピロティのステージ用には、もう1台の「WAPM-1266WDPR」を中継機として設置。メイン会場の「WAPM-1266WDPR」とリピーター機能(WDS)で接続することで、実証実験会場全域へ安定供給できるWi-Fi環境を整えました。

星が丘テラスと星ヶ丘三越で開催されたNagoya Hackathonの実証実験会場・ステージおよびバッファローが提供したWi-Fi環境

効果

実証実験にWi-Fiを活用した2チームのプロトタイプ

自治体がハッカソンを開催する意味とは?

会場のWi-Fiを活用して、一般来場者がプロトタイプを体験

実証実験では、「迷子レーダー」の迷子研究会と「IoTサムライゲーム」の特攻野郎Aチームの2チームが、Wi-Fi環境を活用しました。

迷子レーダー(迷子研究会)

子どもにバッジ型の発信機を装着することで、施設内で迷子になってもすぐに子どもの居場所がわかるサービスです。

実証実験では、星が丘テラスの各所に受信機を設置し、設置場所をチェックポイントにしたスタンプラリーを実施。バッジを着けた参加者がチェックポイントに近づくと、受信機が発信機のBLEタグ情報を読み取り、Wi-Fi経由でクラウドに送信します。参加者のスマートフォンには、チェックポイントのスタンプが押された画像が送信され、LINEアプリで確認することができます。受信機には、バッファローが実証実験用に無償で提供したIoTアプライアンス「GU-100」が活用されました。

「迷子レーダー」の実証実験で使われた、
スタンプラリーのバッジとアプリ画面

「迷子レーダー」の受信機には、バッファローが無償提供した
IoTアプライアンス「GU-100」が活用された

IoTサムライゲーム(特攻野郎Aチーム)

複数チームに分かれたプレイヤーが、決められた時間内に各ポイントに設置されている陣地(ポール)を刀で叩き合い、より多くの陣地を自チームの色に変えるゲームです。

実証実験では2つの陣地を用意。参加者が陣地を刀で叩くと、陣地に内蔵されたセンサーが検知し、LEDの色が変わります。叩かれるたびに情報はWi-Fi経由でクラウドに送信され、各陣地がどちらの色になっているかを判断し、獲得数をディスプレイに表示します。タイムアップになった時点で、より多くの陣地を獲得しているチームが勝ちになります。特攻野郎Aチームでは、来場者が鎧を着た写真を撮り、その場でスタンプにしてプレゼントするサービスも実施しました。

複数の陣地(ポール)を刀で叩き、
LEDが自分の色に変わった数を競い合う「IoTサムライゲーム」

鎧を着た来場者を撮影。
写真からスタンプを作成してプレゼントするサービスも実施した

1エビフライ=7.58(ナゴヤ)cmの名古屋独自の単位で長さを測定できる「シュリンプメジャー」、観光地などに設置されたボタンが押されると、コンピュータ地図上のカウンターがリアルタイムで増えていく「リアルいいねボタン」、さやに収められた刀をすばやく抜いて斬る“居合い斬り”の速度がスマートフォンに表示される「スマートIAI」の実証実験も行われた

参加しやすく、横のつながりが作りやすい自治体主催のハッカソン

Nagoya Hackathonの運営事務局を担当した崔氏。
ハッカソンから実証実験までNagoya Hackathonの
すべての企画運営とホームページの制作を担当した

ナゴヤハッカソンの運営事務局を担当したJellyWare株式会社 代表取締役社長の崔熙元氏(以下、崔氏)は、これまで30社以上の企業でハッカソンを手がけてきました。今回名古屋市がハッカソンを実施したことには大きな意味があるといいます。「企業ハッカソンでは、主に商品や技術を広めるために、参加者に触れてもらい、活用アイデアを競わせるというのが通例です。今回は市が主催したことで、一企業の商品や技術が主体ではなく、目的を主体としたハッカソンを実施することができました。企業色が出ないことで、より多くの方に参加いただくことができ、横のつながりも作りやすかったと思います。東京、大阪、福岡などでは数年前からハッカソンが盛んですが、中部地区は最近ようやく動き出したところ。その分皆さんの期待や熱意も強く、また開催してほしいという嬉しい声もたくさんいただきました。今回の成果をまた次につなげていきたいですね。」(崔氏)

市民経済局産業部では、ハッカソンで開発した商品・サービスを投資家に売り込むピッチイベントの開催も視野に入れています。「参加された方は、プロトタイプで終わらせず、いずれは商品化したいと思われているでしょうし、ご協力いただいた企業もこれを事業に活かすのが最終目的だと思います。今後は実証実験の映像なども使いながら、投資家の方にPRする機会を作るなど、商品化の実現につながるイベントを開催したいと考えています。ただ一方で、こうした事業を行うのは年一回が精一杯です。今回のイベントがきっかけになり、多くの企業でハッカソンが取り入れられ、協業の動きが盛んになるといいですね。」(齊藤氏)


取材後記

5つの商品・サービスのプロトタイプには、たった2日間のハッカソンで企画されたものとは思えないほど、興味深いアイデアが詰まっていました。異業種のクリエーターが集まったこと、自社商品という縛りがないこと、普段の業務とは違う環境で考えることで、普段とは違う発想が生まれてくるのではないでしょうか。Nagoya Hackathonは、5つのプロトタイプ以上に、商品・サービス開発のための大きなヒントを与えてくれていると思います。本導入事例を目にされた多くの方に役立てていただけましたら幸いです。


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