機械のノイズ干渉も回避。精密部品製造工場で作業エリアのどこでも利用できる安全なWi-Fiインフラを整備

株式会社長栄精密 様

株式会社 長栄精密 常務取締役 総務部長 渡辺三洋氏(以下、渡辺常務)

精密部品を製造する株式会社 長栄精密(以下、長栄精密)は、敷地内の2つの工場で、同一のSSIDでネットワークを利用できる7台のWi-Fi(無線LAN)アクセスポイント「WAPM-1750D」を導入。それまで設置できなかった場所にも自由にPCを配置でき、さらにタブレットPCなどを持ち歩いて業務に役立てることが可能に。複数の家庭用Wi-Fiルーターで構築されていた通信環境を一本化し、安全なネットワーク環境の構築を実現しました。

取材協力

株式会社メコム

概要

少量多品種に対応した精密部品製造が強み

広い工場で、場所の制限なく、安全にネットワークにつながる環境が必要に

少量多品種の精密部品に対応できる先進工場

昭和61年に立谷川工業団地の一角に移転し、さらに第2工場も完成

長栄精密は昭和43年の創業以来、大手印刷機械メーカーの主力協力工場として、印刷機のインカー装置部品や精密ギアなど、各種精密部品の製造に取り組んできました。昭和61年には株式会社化して現在の敷地に移転し、平成13年には工場を増築。平成26年には本社工場の隣に第2工場が完成し、業務を拡張し続けています。

渡辺常務は、「長栄精密の強みは少量多品種に対応できること」だと語ります。多くの会社では1つの部品を大量に作ってローコスト化を図りますが、長栄精密では一度製造した部品がコンスタントに出るのではなく、数ヶ月から半年という間隔が空いて発注がかかるそうです。現在対応している商品は約2,000種以上あり、それらを毎月8,000件以上出荷しています。したがって、取り扱っているのは大量生産される商品ではないものの、試作品や特注品という訳ではなく、あくまでも量産品として扱っているそうです。

広い作業エリアのどこでもネットワークが利用できる環境がほしい

長栄精密では共有のファイルサーバーを使って多くの加工品のデータを共有しており、工場内の各所にネットワークにつながったPCを設置してそのデータを運用することが必要でしたが、LANケーブルを使うと、工場内の配線が制限されるため、特定の場所にしか設置できませんでした。しかし、業務の効率化のため無線LAN環境が必要なエリアでは、部分的に家庭用Wi-Fiルーターを利用していました。そのため渡辺常務は、「安心して利用できるネットワークインフラを整備する」ことを目指して、工場内の全てのPCの接続を無線LAN化することを検討していました。こうした経緯から、バッファローによる事前の電波環境調査を利用して、工場内および工場外の通路も含めた全ての作業エリアで同一SSIDで接続できる環境を実現しました。

株式会社 長栄精密

1967年に創業して以来、印刷機械部品、工作機械部品など精密機械部品の製造を主業務としている。1986年には株式会社化と同時に現在の立谷川工業団地の一角に移転。その後、工場の増築、さらに第2工場の建設と発展を続けている。高度な技術による部品の精密さと「少量多品種」に対応できることを強みとする。

所在地

〒990-2251 山形県山形市立谷川2-1593

電話

目標・課題

業務効率化のため、作業エリア内のどこでもネットワークを利用できるように

家庭用Wi-Fi商品を利用しない安全なネットワーク環境作り

工場内のノイズに耐え、電波強度・通信速度・安定性を備えた無線LANを

ネットワークPCを置きたい場所に自由に設置する必要性

加工用機械が所狭しと並ぶ工場内。効率的な業務を実現するため、
自由にPCを設置できる環境が求められた

少量多品種型の製造を実現するために、長栄精密の工場内は加工ラインが組まれていません。旋盤、マシニングセンターなど加工用機械を種類別に集めた島構造のブロックになっており、加工品は1つの工程が終わると次の工程の担当者が引き継いで加工を行うという形を取っています。

この配置は少量の商品を加工していくのに効率的であるものの、それぞれの機器が整然と並ぶ形にならないため、情報共有するPCの設置方法が難しくなります。また、加工品を移動するルートを確保するため、さらに使いやすいように加工用機械のレイアウトを変更することがあるため、設置位置が固定されるLANケーブルを這わせることができません。一時的に家庭用Wi-Fiルーターを使った無線LANが設置されたこともありましたが、ネットワークを管理する渡辺常務はこの状況に不安を感じていたといいます。

作業エリア内のどこでも共通のSSIDで安心して使える通信インフラを

渡辺常務は社内のシステム、ネットワークの管理を一手に
引き受け、必要に応じたPCを自作して設置されているとのこと

現場では、数千種の取り扱い商品の加工用データを確認したり、編集したりするのにPCの使用は欠かせません。また工程管理にはデータベースソフトを使い、各商品をバーコードで管理しており、「作業完了後にバーコードを読み取る」→「次の工程に通知が入る」→「加工品を受け渡して次の工程に入る」といった流れになっています。そのため各工程に必ず端末が必要になりますが、多くの工作機械が並ぶ工場内はLANケーブルを這わせにくく、自由にPCを設置しにくい環境です。これらを解決するWi-Fi環境を構築するために、今回の施工を請け負った株式会社メコム(以下、メコム) 営業統括ゼネラルマネージャー 鍛治 修氏に相談することになりました。

解決策

機械のノイズに強い「干渉波自動回避機能」を搭載した「WAPM-1750D」を導入

機械に過酷な工場内環境。揮発した油から保護するため防護ボックスを使用

無線LANアクセスポイントを自由に設置できるようPoE対応スイッチ「BS-GS2008P」を活用

導入商品

※代替商品情報

2022年10月現在、防護ケースを必要としない耐環境性能モデルの無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPRA」をラインナップしています。

関連情報

製造業・工場様向けソリューション|Wi-Fi導入で業務効率化・生産性向上

事前に電波環境を測定

メコムは、県内で多くの企業のネットワークトラブルを解決してきた実績を持つOA・事務機器販売会社です。ネットワーク機器単体のトラブル解決のみならず、過去に構成したネットワーク環境の見直しや再点検なども含めたネットワーク環境全体のコンサルティングを提供しています。

株式会社メコム 営業統括ゼネラルマネージャー 鍛治 修氏(左)と推進部 システム推進チーフ 工藤 信人氏(右)。鍛治氏が渡辺常務から相談を受け、工藤氏が施工を担当

渡辺常務の相談を受けて、メコムは現地での電波環境調査を実施しました。作業エリアの各所に無線LANアクセスポイントを設置した場合の電波強度を測定した結果、加工用機械や高圧電流のケーブルなどが発する電波ノイズに強いこと、作業エリア内のどの場所でも快適に使えるように十分な電波強度があること、そして高速な通信規格が使用でき、2.4GHz帯、5GHz帯両バンドが安定して使える機器が必要との判断から、バッファローの「WAPM-1750D」を選定しました。「WAPM-1750D」は高速無線LAN規格「IEEE 802.11ac」に対応し、本商品1台に対して100台までのクライアントが接続可能です。さらに加工用機械などが発するノイズを自動で検知して、干渉しないチャンネルに変更できる「干渉波自動回避機能」を搭載しています。

新設され、比較的余裕のある第2工場側は前後の高い位置に2台の「WAPM-1750D」を設置

事務所内にも入り口近くに「WAPM-1750D」を設置

今回は施設内の隅々まで無線LANが行き届くよう、第1工場内に3台、同じ棟にある事務所に2台、さらに第2工場にも2台の合計7台を設置し、全て共通のSSIDを持ちセキュアなパスワードを設定した無線LAN網が整備されました。「無線通信は、工作機械と周波数が重なってしまうことなどもあって安定性が心配でしたが、事前調査の結果問題なく設置できることが確認できました。作業エリアは広いですが、予想していたよりも1台あたりの電波のカバレッジが広く、設置台数が少なくて済みました」と、メコムの鍛治氏は語っています。

過酷な工場内環境に合わせて機器設置に工夫

今回の設置にはもう一つ、大きな課題がありました。「実は工場の中は環境的に電子機器には厳しい環境なんです。原因は油です。目には見えませんが、揮発した油が空気中に四散していて、それがPCの冷却ファンに吸い込まれると内部のプラスチック部品などを溶かしてしまいます」と渡辺常務。この点の相談に対しメコムは「WAPM-1750D」を油から守るため防護ボックスの使用を提案しました。そのため工場内の「WAPM-1750D」は密閉されたボックスの中に収められ、結果、外部からの油をシャットアウトすることに成功。「WAPM-1750D」は動作保証温度が-10~+50℃で、過酷な温度環境にも対応可能です。防護ボックス内が動作保証温度であることを事前に確認して採用しました。

第1工場の各所に設置されている「WAPM-1750D」。揮発した油から防護するための防護ボックスに収納

事務所内の配電盤に設置された「BS-GS2008P」。工場内にも
それぞれ1つずつ設置され、無線LANアクセスポイントに給電

また今後の加工用機械の増加やレイアウト変更に伴って無線LANアクセスポイントの位置を変更する可能性も考えられたことから、LANケーブルから電源を供給できるPoEに対応したスマートスイッチ「BS-GS2008P」が事務所内、第1、第2工場内の合計3機が設置されました。これによって工場の電源の位置に配慮したり、コンセントを増設したりする必要がなくなり、今後、工場内でのレイアウト変更時に、無線LANアクセスポイントを増やしたり、移動したりする自由度が高くなりました。

効果

作業エリア内で快適なネットワーク環境が実現

屋外通路でも無線LANが利用可能になり利便性が向上

作業エリア全域で安定通信。データ参照や進捗データの管理が容易に

工場外の通路部分でも無線LANがつながるようになり、
出荷業務などでタブレットPCを利用可能に

「WAPM-1750D」による無線LAN環境は、想定通りの電波強度を発揮。安定したネットワークが実現され、これまでPCを置くことができなかった機械の陰になる部分通路など、作業エリア内のどの場所でも無線LANに接続可能になりました。これにより共有サーバーを使った加工用機械のためのデータや加工品の材料の参照、バーコードを使った進捗データの管理も容易になりました。

さらに工場外の通路部分でも無線LANがつながるようになり、出荷業務などでタブレットPCを使った在庫確認などが可能になりました。

加工用機械の近くに設置されたデスクトップPCでは、作業のためのデータを安定した通信環境で扱えるようになった

今後はさらにセキュアな環境作りを目指す

長栄精密が当初目的とした「安心できるインフラを整備する」という目的は無事達成されました。また第2工場では今後も加工用機械が増える可能性があり、それに伴うレイアウト変更にも自由に対応できるようになります。渡辺常務は、さらにIPアドレスフィルタリングやMACアドレスフィルタリングを利用して、外部からのアクセスや持ち込んだ私物PCから共有サーバーへのアクセスを制限することで、セキュリティー強化を図っていく方針とのことです。


追加情報

2022年10月現在、バッファローでは防護ケースを必要としない耐環境性能モデルの無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPRA」をラインナップ。内部基板にフッ素コーティングが施されており、温度・湿度のみならず揮発した油による腐食にも強く、工場内のWi-Fi整備に最適な無線LANアクセスポイントです。

製造業・工場のWi-Fi整備について最新情報はこちらの特集ページをご覧ください。


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