3つの建屋を「リピーター機能(WDS)」で安定接続し、 介護記録システムの活用を促進。本館以外の施設でも 入力業務が可能となり、業務効率化を実現

涌谷町社会福祉協議会様

涌谷町社会福祉協議会 総務企画課副主任の山根拓巳氏

 宮城県の社会福祉法人涌谷町社会福祉協議会では、介護記録のICT化を目指し、介護業務支援システム「ほのぼのNEXT」を活用しています。本館のほか別棟にある事務所のPCなどで入力業務を行えるよう、「WAPM-1266WDPR」のリピーター機能(WDS)を活用して、屋外配線工事を行うことなく離れた建屋間をネットワーク接続し「ほのぼのNEXT」をフル活用できる環境整備を実現。介護記録の一元化やネットワークプリンターへの出力などの作業効率が改善され、さらに即時共有できるようになった詳細な情報の活用によって利用者へのサービス向上につながると期待されています。

概要

書類のペーパーレス化を目的に、いち早く介護業務支援システムを導入

介護記録を一元化する新システム導入にあわせ、無線LAN環境を構築

介護業務に伴う膨大な手書き書類のペーパーレス化を目指す

 
 昭和56年3月31日に法人格認可を受けて以来、町民参加、住民主体による地域福祉活動に取り組んできた涌谷町社会福祉協議会。介護保険の指定事業者として、居宅介護支援サービス、ホームヘルプサービスを提供するほか、高齢者福祉総合施設「ゆうらいふ」を運営しています。
 「ゆうらいふ」には、2つのグループホームをはじめ、特別養護老人ホームやデイサービスセンター、生活支援ハウスなどの福祉施設が併設されています。これらの施設では、2011年にNDソフトウェア株式会社の介護業務支援システム「ほのぼの」を導入しています。当初は、請求書などの膨大な事務書類のペーパーレス化を目的とした導入でした。

ネットワーク環境を整備し、さらなる作業効率化を実現

 その後、スタッフが個々に手書きしていたため、転記やまとめなどの作業が繁雑だったという利用者の介護記録を、PCやiPadで入力して情報を一元化できる「ほのぼのNEXT」へバージョンアップ。同時にシステム運用の基盤として、無線LANを導入しました。
2018年には無線LANを業務用設備として再構築。「ほのぼのNEXT」をより有効に活用できるネットワーク環境が整ったことで、介護記録のシームレスな一元化、および事務作業の効率化を実現しています。

社会福祉法人涌谷町社会福祉協議会

 宮城県遠田郡涌谷町で高齢者福祉複合施設「ゆうらいふ」を運営する社会福祉法人涌谷町社会福祉協議会は、昭和56年3月31日に法人格認可を受けました。『誰もがその人らしく 安心して暮らすことができる 地域社会の実現』を基本理念に掲げ、施設名には『わたしたちは、あなた「ゆう:You(利用者・家族・地域住民)」と伴にあなたの生活「らいふ:Life(人生・生命・生涯)」を大切にします。』との思いが込められています。施設内には2つのグループホーム(「あさひ」「ゆうひ」)をはじめ、特別養護老人ホームやデイサービスセンターを備えるほか、地域福祉の推進や福祉活動支援にも取り組んでいます。

所在地

〒987-0121
宮城県遠田郡涌谷町涌谷字新下町浦192番地

電話

0229-43-6661

目標・課題

利用者の介護記録情報を一元化し、サービス向上に役立てたい

PCやiPadから、安定して入力できるネットワーク環境が必須

通信が不安定だとシステムのポテンシャルが活かせない

 介護業務支援システム「ほのぼのNEXT」の導入にあわせてネットワークを構築するにあたり、当初設置されたのは家庭用の無線LAN機器でした。「介護記録を各所で入力し一元管理するためには、利用者の居住棟である2つのグループホームと事務室のある本館、3つの建屋をつなぐネットワークが必要でした。建屋間を有線で接続するのが困難だったので無線LANを導入しましたが、家庭用の無線LANルーターと中継機を組み合わせた環境では、通信が不安定でした。」と、総務企画課副主任の山根拓巳氏(以下、山根氏)は振り返ります。「雨天などちょっとしたことでつながらなくなることもしばしばで、グループホーム側で『ほのぼのNEXT』へ介護記録を入力しても、そのデータがアップロードできず、せっかくのシステムが活かせない状況でした。」(山根氏)。

 ネットワークに接続できないとネットワークプリンターも使用できないため、書類を出力するためにわざわざ建屋をまたぐことも。グループホームで働く職員から、山根氏の所属する総務企画課にネットワークの不具合に関する連絡が入るたびに復旧作業に追われ、業務が中断。「ほのぼのNEXT」の導入によって本来目指していた、PC、iPadなどの入力機器を用いた介護記録の一元化と、それをベースにしたサービスの向上を実現するためには、ネットワーク環境の改善が急務となっていました。

解決策

建屋間を安定接続できるリピーター機能(WDS)に注目

湿気の多い浴室の脱衣所でも稼働する耐環境性能モデルを選定

導入商品

11ac/n/a & 11n/g/b
防塵・防水耐環境性能
法人様向け無線LANアクセスポイント

IEEE 802.3at対応
PoEインジェクター

安定接続と予算、2つの条件に合致した法人向け無線LAN

 2018年4月、ネットワーク環境の改善方法について、山根氏から相談を受けたリコージャパン株式会社 宮城支社 北営業部 古川営業所の佐藤勇太氏(以下、佐藤氏)は、バッファローの法人向け無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPR」を提案しました。「実は当初、地下の配管にケーブルを通して有線で接続する方法も検討されたのですが、配管を改めて通す必要があり、かなり費用がかかることがわかりました。そこで遠距離で通信できる法人向け無線LANアクセスポイントに置き換える方法を提案しました。これなら費用は有線の場合の半分以下です。」

 無線LAN機器の選定にあたっては、アクセスポイント同士を無線接続できる「リピーター機能(WDS:Wireless Distribution System)」の有無が、大きなポイントとなったと佐藤氏は語ります。

 「どうやったら離れた建屋間を無線で、安定的に接続できるかを考えたときに、着目したのがリピーター機能(WDS)でした。中でも『WAPM-1266WDPR』は大型外付けアンテナ搭載で、電波を安定的に飛ばせ、さらに航空レーダー等を検知した際に、即時チャンネルを切り替えることで通信が途切れない「DFS障害回避機能」を備えています。耐環境性能モデルを謳い、屋外への設置にも対応する『WAPM-1266WDPR』を選んだ理由は、その設置場所が浴室の脱衣所という、通信機器にとってはかなり過酷な環境だったからです。『WAPM-1266WDPR』の動作保証温度は-25~55℃。防水、防塵、耐腐食と厳しい環境にも対応できる点は、高温多湿という設置場所の条件にマッチしました。そして、2つのグループホームに面している本館の壁側にも『WAPM-1266WDPR』を設置してグループホームとの間を屋外通信が許可された5GHz帯(W56)でWDS接続。バッファローのリピーター機能(WDS)対応モデルは、無線LANアクセスポイント間は5GHz帯(W56)で、端末との接続は2.4GHz帯でと、バンドを切り分けて安定的な通信が可能です。この構成なら無線LANを使った屋外へのネット回線引き込みと安定した無線LAN提供が同時に提供できます。」と佐藤氏。この提案を受けて、涌谷町社会福祉協議会は「WAPM-1266WDPR」の導入を決定しました。

本館と2つのグループホームを結ぶ無線ネットワークの構成図

グループホーム「ゆうひ」の浴室に設置された「WAPM-1266WDPR」

事務所のネットワークプリンターにも快適につながるようになった

効果

ネットワーク環境の改善で、「ほのぼのNEXT」の安定運用が実現

シームレスな情報の一元化により、利用者へのサービス向上に期待

短時間施工で即日運用。作業効率は明らかに改善

 無線LAN設備の切替工事は、9月に施工されました。事務室のある本館の窓際の柱と、2つのグループホームのメイン棟に面した浴室の脱衣所に、それぞれ「WAPM-1266WDPR」を1台ずつ設置。「WAPM-1266WDPR」はLANケーブルだけで通信と電源供給が行える「PoE(Power over Ethernet)」に対応するため、給電装置としてバッファローのPoEインジェクター「BIJ-POE-1P/HG」が採用されました。そのため電気工事などは不要となり、工事にかかった時間はわずか1~2時間。即日運用が開始されました。「つながらなくなったのはほんの短時間で、業務への影響もほとんどありませんでした。」と、山根氏は施工当日を振り返ります。「短時間で施工できたことに加えて、グループホームの建屋のどこからでも安定した無線LANが利用できるようになったことは大きな変化でした。おかげでPCの設置されている事務所だけでなく、各利用者の居室からもiPadによる介護記録の入力やアップロードが可能になり、職員が介護をしながらその場ですぐに作業できるようになりました。」と山根氏はいいます。 「ネットワークは本来、快適につながるのが当たり前。つながるようになったからといって、職員から喜びの声が寄せられるということはありませんが、ネットワークプリンターにも快適につながるようになり、作業効率は明らかに改善されました。」(山根氏)

介護記録に写真を追加するなど新しい取り組みもスタート

 通信環境が安定したことで、「ほのぼのNEXT」をこれまで以上に活用できるようになったそうです。前述のように場所を選ばず介護記録を入力できるようになっただけでなく、iPadで撮影した写真を介護記録に添付するなど、これまで活用されていなかった機能も積極的に使われるようになったとのこと。「写真を含む詳細な情報をスタッフ間で共有できるようになったことで、今後利用者へのサービスの向上に役立てていけるのではないでしょうか。」と山根氏。今後活用できそうな「ほのぼのNEXT」の便利な機能は他にもあるとのことで、「PCやiPadの操作自体苦手という人もいるので、介護業務のICT化は一筋縄ではいかないところもありますが、少なくともそのシステムをストレスなく利用できる環境を整えられたことは、大きな進歩だと感じています。」と山根氏は新しい無線LAN環境によって可能性が広がった「ほのぼのNEXT」の活用に大きな期待を寄せていました。

※「ほのぼの」シリーズおよび、「ほのぼの NEXT」は、エヌ・デーソフトウェア株式会社の登録商標です。

取材協力:リコージャパン株式会社


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