「GIGAスクール構想」を発端に、「空港の影響によるDFS障害」という課題を解決し、八尾市42の小・中学校1,500教室の先進的なICT環境を実現

八尾市教育委員会様

 大阪府八尾市教育委員会は、文部科学省が推進している「1人1台端末」と「高速大容量通信ネットワークの整備」により子どもの資質・能力を育成する「GIGAスクール構想」に伴い、市内の小・中学校約1,500教室に無線LAN環境の整備を進めています。利用シーンに合わせて、多数の生徒が利用する教室には「WAPM-2133R」を計1,080台、少人数の教室には「WAPM-1266R」を計350台、そして体育館には耐環境性能に優れた「WAPM-1266WDPR」計45台を設置予定。当初3か年で進められていた予定を大幅に早め、2020年度内には全ての学校で整備が完了し、先進的なICT環境を実現します。

概要

他の自治体に先駆けてICT教育環境を整えてきた八尾市教育委員会

文部科学省が発表した「GIGAスクール構想」によりさらに前進

「1人1台の環境を早く実現してほしい」という声

 八尾市教育委員会は2002年度に「学校教育ネットワーク」を構築以来、他の自治体に先駆けてICT教育に力を入れてきました。全ての小・中学校に光ファイバーによる高速インターネット環境と校内LANを整備し、コンピューター室を中心にインターネットを活用した授業を実現。さらに2015年には、それまではコンピューター室にノート型パソコンの配置だったところをタブレット端末41台(児童・生徒用40台、教師用1台)に置き換えを行い、ポータブルの無線アクセスポイントも用意して、普通教室でもネットを活用した授業が行える環境を整えてきました。ただ、その中でも教育への関心が高い学校からは「1人1台の環境を早く実現してほしい」との声が上がっていたと、八尾市教育センター 所長補佐の小川修司氏(以下、小川氏)は振り返ります。

実現を後押しした「GIGAスクール構想」

 実現へと強く後押ししたのが、2019年12月に文部科学省が発表した「1人1台端末」と「高速大容量のネットワークの整備」を盛り込んだ「GIGAスクール構想」です。小川氏は「これまでは予算の関係でこれらの環境を実現することができなかったのですが、ようやく高度のICT教育環境を実現できると思いました」と話します。その後、市内の小・中学校の環境の整備は進み、以前は学校と教育センターを繋ぐ基幹部分は1ギガ、学校内は100メガバイトの回線だったところが、それぞれ10ギガ/1ギガと高速大容量のネットワークに刷新。現場におけるICT教育は確実に進化しています。

目標・課題

八尾市が抱えていた課題は「DFS障害による停波への対応」

限りあるコストを鑑みて、利用シーンを分け、最適な機器を検討

DFS障害による停波がたびたび起きていた

 GIGAスクール構想を実現するためには「無線LANアクセスポイントは2.4GHz帯2×2MIMO、2ストリーム、5GHz帯4×4MIMO、4ストリームに対応している」など、文部科学省の「標準仕様書」に記載された仕様を満たす必要がありました。さらに八尾市が独自で抱える課題もあります。「市内に空港があり、航空管制を優先するためのDFS障害と思われる無線LANの寸断がたびたび起こり、ネットが繋がらなくなるという報告があがっていたので、DFS障害の影響を受けない無線LANアクセスポイントは必須でした」と小川氏は語ります。

3つの利用シーンに適した機器を選定

約40人の生徒がタブレット端末でネットに繋ぎ、授業をしている風景。

 想定している利用シーンは、約40人の生徒がネットに繋いで授業をする教室、少人数で利用する教室、面積の広い体育館の3つです。仮に約40人の教室に設置する無線LANアクセスポイントで統一してしまうと、少人数の教室ではオーバースペックでコストが割高に、体育館では寒暖差に耐えられない、などの問題が発生します。そのため各利用シーンに最適な機器を選択する必要がありました。また、教室によっては電源が近くにない場合も想定されたので、PoEからの給電が可能であることも重要なポイントでした。

八尾市教育委員会

 八尾市では「学びに熱中する子ども」「学びでつながる子ども」「学びを創造する子ども」の3つを“めざす子ども像”とし、GIGAスクール構想を通してSociety5.0時代を生きる子どもたちの情報活用能力や、未来社会を生き抜く資質・能力の育成を図っています。構想の実現に向け「子どもたちに必要な資質・能力を育成するためにICTを活用した授業づくり」や「1人1台端末の活用」について研究をすすめており、タブレット端末を活用した授業がスムーズに行われるように研究校・協力校での実践、教職員へのICT活用研修を行っています。

教育センター所在地

〒581-0856 大阪府八尾市水越二丁目117番地

電話

072-941-3365

解決策

事前に現場でDFS障害による停波の影響を確認

体育館は寒暖差に耐えられる耐環境性能を重視

導入商品

11ac/n/a & 11n/g/b
DFS障害回避機能搭載
法人向け無線LANアクセスポイント

11ac/n/a & 11n/g/b
DFS障害回避機能搭載
法人向け無線LANアクセスポイント

11ac/n/a & 11n/g/b
耐環境性能モデル
無線LANアクセスポイント

PoEスマートスイッチ
16ポート
ハイパワーモデル

「DFS障害回避機能」を備えたアクセスポイントを採用

 八尾市には、八尾空港があるためDFS障害による停波が課題でした。DFSとは、無線LANアクセスポイントが気象・航空レーダーなどの電波を検知した際、干渉を防ぐために周波数を変更しなければならないという、電波法で搭載が義務付けられた機能のことです。しかし周波数の変更を行うには、60秒間変更先の周波数が使われていないかを監視する必要があり、その間は無線通信が途切れてしまい、これをDFS障害といいます。
 八尾市教育センター 係長の井上淳氏は「レーダー波検知調査を行ったところ、1週間で870回レーダー波が検知され、改めてDFS障害への対応は大きなポイントだと再確認しました」と話します。その結果、DFS障害回避機能を備えた「WAPM-2133R」「WAPM-1266R」の2つを採用。利用シーンとの適正から、負荷が高くなりやすい普通教室に「WAPM-2133R」を、コストが「WAPM-2133R」の約半分の「WAPM-1266R」は少人数教室に配置することが決定しました。

体育館の無線LANアクセスポイントは「耐環境性能」を重視

八尾市教育センターの小川氏(写真左)、山下氏(写真中央)、井上氏(写真右)

 体育館用の無線LANアクセスポイントはDFS障害回避機能に加えて、寒暖差などを考慮して耐環境性能を備えた「WAPM-1266WDPR」を採用しました。「WAPM-1266WDPR」は-25~55度の温度での動作保証があり、IP55(防塵等級5と防水耐久5から55)対応の防水・防塵効果、さらに硫化水素試験と塩水噴霧試験を実施して耐腐食を実現した基板フッ素コーディングなどから、温度変化の大きな場所に設置しても安定した無線LAN通信を実現します。
 PoEスイッチは、ハイパワーモデルの「BS-GS2016P/HP」を採用。無線LANアクセスポイントなど消費電力の多いPoE受電機器を多数接続できるところがポイントで、「WAPM-2133R」「WAPM-126
6R」ともに16台まで同時に給電することが可能です。

八尾市の教育ネットワーク構成図。 各学校は八尾市地域イントラネットにより接続されている。各校のネットワーク機器は教育委センターの管理PCに導入されているネットワーク管理ソフトウェア「WLS-ADT/LW」でリモート管理されるため学校個別での管理対応を軽減できる。

効果

環境が整った学校では既に授業が大きく変化している

今後はさらに、新たなICT教育環境を使った授業を検討していく

子どもの授業に対するストレスが軽減している

 八尾市教育委員会は、当初2020年度内に高速大容量ネットワークの配備と、3年かけて1人1台の環境、という計画を立てていましたが、これを大幅に上回り、2020年度内に八尾市内の小・中学校42校1,500教室全てに高速大容量ネットワークの配備、および1人1台端末が実現する予定です。既に環境が整った学校では明確な変化が生まれています。国語の授業では、以前はプリントを配布して回収していたところ、現在は生徒1人に1台配られたタブレットを使って回答し、即座に先生の手元に送られるという形式が取られています。八尾市教育センター 所長の山下卓也氏(以下、山下氏)は「生徒は待ち時間がなくなったことでストレスがなくなり、授業へのモチベーションが高まっているように見えました」と分析します。

今後は整えたICT環境をいかに活用していくか

 体育の授業では体操をしている自分の姿を撮影し、映像を見てチェック、修正点を考えるということも行われています。「体育館は広いですが、端のほうで使っている子も問題なく利用できていたので、動き回る体育の授業でも場所を気にせずに使える自由度があるのもいいことですね」と山下氏。
 今回のICT環境の構築は、教室や体育館など、屋内の整備が主軸に置かれていますが、無線LANアクセスポイントが近い場所にある校庭でも繋がるため、理科の授業でタブレットをもって外の植物を観察し、撮影した写真をネットワークにつなげてクラウドに保存するということも実現できます。  「今回のGIGAスクール構想の実現により、ICT教育の環境は高いレベルで整えることができました。ただ、整えて終わりではなく、学校に研修、情報発信などを積極的に行い、せっかく整えた環境を最大限活用して、八尾市の授業を新しくしていくことはこれからも引き続きがんばっていきたいですね」と小川氏が今後の抱負を語ってくれました。

40人の教室には同時接続台数の多い「WAPM-2133R」を設置。

体育館には耐環境性を備えた「WAPM-1266WDPR」を設置。

国語の授業では、生徒1人に1台配られたタブレットを使って回答。


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