五城目町内の町民センター、屋内温水プール、広域体育館に防災Wi-Fi設備を導入。PoEで非常用電源も最大活用

秋田県五城目町 様

五城目町教育委員会 生涯学習課 課長の佐藤清彦氏(左)と、
秋田県五城目町長の渡邉彦兵衛氏(右)

秋田県五城目町では、総務省が所管する「無線システム普及支援事業費等補助金」を活用し、町民センター、屋内温水プール、広域体育館の3施設に防災Wi-Fi設備を導入。平常時は無料でインターネット接続が利用できる公衆Wi-Fi「FREESPOT(フリースポット)」として活用し、災害発生時には情報収集や安否確認などを行いやすくする通信環境として機能する「災害時用Wi-Fi」へと迅速に切り替えられる仕組みが整備されました。今後、町民および五城目町を訪れる来訪者の利便性向上、そして有事の際の安全を支える重要な基盤となることが期待されています。

概要

職人気質あふれる商工業都市として栄えてきた自然豊かな町

現在まで523年もの長きにわたり開催され続けている朝市

数年前より集中豪雨による被害増加、防災Wi-Fiの必要性を痛感

523年もの歴史を持つ朝市などで知られる五城目町

大勢の人々で賑わう五城目町の朝市

秋田県の中央部、秋田市から約30kmに位置する五城目町は、主に急峻な山岳部と肥沃な平野部から成っており、古くから林業と農業が盛んな地域として発展を遂げてきました。こうした地理的な特徴により、製材や家具、建具、打刃物などの技術が発達。職人気質あふれる商工業都市として栄えてきた町です。

現在まで523年もの長きにわたり開催され続けている朝市も、そうした背景から誕生した五城目町の名物のひとつです。秋田県五城目町長の渡邉彦兵衛氏は「朝市は毎月、日付の下一桁に0・2・5・7がつく日に開かれており、大勢の人々で賑わっています。また、春の『山菜まつり』、夏の『市神祭』、秋の『きのこまつり』、冬の『あったか鍋まつり』と、朝市では四季折々の産物を活かしたお祭りを開催しており、通常時よりも一段と活気にあふれた朝市が楽しめます。」と語ります。さらに近年では、定期朝市の開催日のうち日曜日にあたる日を「ごじょうめ朝市plus+」として開催している点も見逃せません。この「ごじょうめ朝市plus+」は、古き良き朝市の風習はそのままに、歴史的な文脈・文化を受け継ぎ守りながらも、若者の出店や新たなチャレンジを応援するという取り組みだといいます。

集中豪雨による被害が増加し、防災Wi-Fiの必要性を痛感

「度重なる集中豪雨で、防災Wi-Fiの必要性を痛感した」と語る、
秋田県五城目町長の渡邉彦兵衛氏

五城目町は、もともと災害が少ない地域でした。しかし、近年では記録的な集中豪雨が増加しています。2017年の7月と8月には、前線をともなった低気圧の影響で大雨に見舞われ、主要幹線道路の封鎖や家屋の浸水などが発生。2018年5月の大雨では、土砂災害と河川の氾濫の危険が高まったことから、全町に避難勧告が発令されました。

渡邉氏は「町内には24箇所の指定緊急避難場所と14箇所の指定避難所が設けられていますが、もともと災害が少ない地域ですので、防災Wi-Fiなど十分な設備がありませんでした。しかし、いざ集中豪雨による被害を体験すると、外部との連絡や情報を得るための手段として、防災Wi-Fiの必要性を痛感しました。」と語ります。

そこで五城目町では、指定避難所となっている14箇所のうち、町民センター、広域体育館、屋内温水プールの3箇所に対して、防災Wi-Fi設備の導入検討を開始したのです。なお、本件は施設を管理している五城目町教育委員会 生涯学習課が主導しました。

秋田県五城目町

1896年、町制の開始にあたり「五十目村」から「五城目町」へと改名。1955年には、五城目町、馬場目村、富津内村、内川村、大川村の5つの町村が合併し、現在に至っている。「伝統とにぎわいが共生する 心やすらぐ 自然の郷 五城目」を基本理念として、523年もの歴史を持つ朝市、町の約8割を占める山林と原野、中心地を流れる馬場目川の清流と広大で豊かな田園など、町の魅力を高めつつ、周辺地域と共生したまちづくりが進められている。

所在地(五城目町役場)

〒018-1792 秋田県南秋田郡五城目町西磯ノ目1丁目1-1

目標・課題

非常用電源装置がある町民センターを基点として計3施設に防災Wi-Fiを導入

「PoE」経由で屋内温水プールと広域体育館の無線LANアクセスポイントにも非常用電源を供給

「PoE」の採用で、見た目のシンプルさが保てることに加えて工期の短縮も実現

町民センターを含む3施設に防災Wi-Fiの導入を検討開始

町民センターには、環境省が所管する「再生可能エネルギー等導入推進基金事業」を活用し、すでに太陽光発電システムと蓄電システムが設置されていました。その太陽光発電量は15kW、蓄電池容量は15kWh。大規模な災害時にはライフラインが断たれる可能性も高いため、こうした非常用電源装置は極めて重要です。そこで、この町民センターを基点に、隣接する広域体育館と屋内温水プールにも、防災Wi-Fiを導入しようと検討が開始されました。

五城目町教育委員会 生涯学習課 課長の佐藤清彦氏は、「指定緊急避難場所として使用する場合、『各施設・土地の面積に対して1人あたり4m²とする』という条件によって、収容人数は町民センターが115人、広域体育館が373人、屋内温水プールが72人となります。特に広域体育館は、毎年レスリングの高松宮杯東北高等学校選抜レスリング大会兼全国高等学校選抜レスリング大会予選が開催されるほど十分な広さがありますので、指定緊急避難場所には最適です。」と語ります。

町民センターと、その横に設置された3枚の太陽光パネル

「PoE」で屋内温水プールと広域体育館にも非常用電源を供給

町民センター、屋内温水プール、広域体育館は
同じ敷地内にあり、渡り廊下での移動も可能

防災Wi-Fiを導入するにあたり、五城目町ではまず、町民センター、屋内温水プール、広域体育館の3施設に対して電波環境調査を実施し、各施設内での通信が十分にカバーできる設置場所を見極めるための検討を行ったそうです。

さらに、町民センターから屋内温水プールと広域体育館へ1本のLANケーブルでデータ信号と電力供給を行うことができる「PoE」(Power over Ethernet)の採用も必須でした。屋内温水プールと広域体育館には非常用電源装置がありませんが、災害などで電力供給がストップした際、町民センターからPoE経由で電源を供給することにより、3施設での防災Wi-Fi提供が可能となるわけです。さらに、PoEは無線アクセスポイントに1本のLANケーブルを接続するだけで済むことから、見た目のシンプルさが保てることに加えて、工期の短縮にもつながります。

解決策

高い費用対効果に加えて、信頼と実績や商品自体の性能などが選定の決め手に

ネットワーク管理ソフトウェア「WLS-ADT」で一元管理が行える体制を構築

ボタンひとつで防災Wi-Fiへの切り替えが可能な仕組みも構築

導入商品

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
法人様向け
無線LANアクセスポイント

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
防塵・防水耐環境性能 法人様向け
無線LANアクセスポイント

レイヤー2 Giga PoEスイッチ

レイヤー2 Giga PoEスイッチ

公衆Wi-Fiサービス「フリースポット」導入キット

ネットワーク管理ソフトウェア

性能面や費用対効果、適合表示などが決め手に

商品の選定理由について、佐藤氏は次のように語ります。「バッファロー商品は他社商品と比べて費用対効果が非常に高いことに加えて、町役場では以前より『FREESPOT』を提供しており信頼と実績があったことも大きいですね。屋内用無線LANアクセスポイントについては、2.4GHz/5GHz(W52/W53用)/5GHz(W56用)という3つのアンテナを備えるトライバンドで多台数同時接続時の高速通信を実現した『WAPM-2133TR』に統一しました。アクセスポイント1台で384台ものタブレットが同時に接続可能なため、収容人数の多い広域体育館でも安心して利用できます。屋内温水プールに関しては、湿度の関係から耐環境性能モデルの無線LANアクセスポイント『WAPM-1266WDPR』を採用しました。防水/防塵性能は『JIS-2137』で定められた『IP55規格』対応で、なおかつ耐腐食性能も備えていますから、屋内温水プールにも最適です。さらにいずれの商品も、Wi-Fi以外の機器から出るノイズを自動で検知・回避する『干渉波自動回避機能』を搭載しており、安定した通信を実現できます。そしてもうひとつ、総務省の補助金交付要件である『認証基準(不正利用防止)にかかる要件』に対して、メーカー側で商品の適合を確認している点も大きなポイントでした。」

ボタンひとつで防災Wi-Fiへの切り替えが可能

こうして防災Wi-Fiを主眼に整備された五城目町の通信環境ですが、平常時は各施設の利用者向けに「FREESPOT」として無料開放しています。町民センターにはネットワーク管理ソフトウェア「WLS-ADT」を導入し、平常時の公衆Wi-Fiから、災害発生時に災害時用Wi-Fiへと迅速に切り替えられるようにしました。

さらに、五城目町の防災Wi-Fiには、町民センターの非常用電源装置を活かす仕組みも盛り込まれています。この仕組みは、「災害時」と書かれたLAN切替器のボタンを押すだけで、通常の公衆Wi-Fiのネットワークから、非常用電源装置からも受電可能な防災Wi-Fi専用ネットワークに切り替えられるというものです。これにより、緊急時にすぐに専門知識を有する職員が駆けつけられない状況でも、簡単かつ迅速に防災Wi-Fiへ切り替えられます。停電時は、電源切替スイッチひとつで町民センターやPoEで接続された屋内温水プールと広域体育館の防災Wi-Fiを非常用電源での稼働に切り替えることができます。

町民センター1階の事務室に設置された無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」

町民センター1階のロビーに設置された無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」

町民センター2階のパソコン教室に設置されたフリースポット導入キット「FS-R600DHP」と、ネットワーク管理ソフトウェア「WLS-ADT」。LAN切り替えスイッチのボタンを押すだけで、簡単かつ迅速に防災Wi-Fiへと切り替えられる

町民センター3階の宿泊室前に設置された無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」。これ1台で宿泊室内をすべてカバーできる

町民センター4階の町民ホールに設置された無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」

屋内温水プールの2階交流ホールに設置された屋外用無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPR」

屋内温水プールの1階事務室に設置された無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」

屋内温水プールの1階廊下に設置されたPoEスイッチと配電盤

広域体育館1階の第1体育室に設置された無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」には、ボールなどが当たるのを防ぐ防球ガードを装備

広域体育館1階のトレーニング室に設置された無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」

広域体育館3階の第2体育室に設置された無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」にも防球ガードを装着

五城目町内の町民センター、屋内温水プール、広域体育館のネットワーク構成図

効果

補助金と地方債を活用し、導入費用の負担を抑制

運用開始から約1ヶ月後の集中豪雨で早くも防災Wi-Fiが活躍

平常時に運用している「FREESPOT」についても利用者が増加

補助金と地方債の活用で負担を抑制

こうして五城目町では、指定避難所となっている町民センター、屋内温水プール、広域体育館の3箇所に対して、屋内用無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」を計10台、屋外用無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPR」を1台、公衆Wi-Fiルーター「FS-R600DHP」を1台、そして町民センターにネットワーク管理ソフトウェア 「WLS-ADT」の導入を決定。2018年2月6日から3月6日にかけて防災Wi-Fi導入の施工が行われ、4月1日より実際の運用をスタートしました。

導入費用に関しては、総務省が所管する「無線システム普及支援事業費等補助金」や地方債を活用することで負担を抑えられたそうです。

町民の安全と安心を守るために必要不可欠な防災Wi-Fi

「町民の安全と安心を守るために、防災Wi-Fiは必要不可欠な存在」
と語る、五城目町教育委員会 生涯学習課 課長の佐藤清彦氏

こうして、町民の安全を守るための防災Wi-Fi設備が整備された五城目町。町民に対しては、広報紙「五城目町広報」およびWebサイトにお知らせへの掲載を通じて、防災Wi-Fiの周知が図られました。

佐藤氏は「今年5月の集中豪雨で避難所を開設し、約40人の町民が避難した際、実際に防災Wi-Fiが使用されました。防災Wi-Fiが頻繁に活躍する機会が訪れるのはあまり好ましくありませんが、まさに備えあれば憂いなし。万が一の際にも、防災Wi-Fiを通じて外部との連絡や情報収集が行えるのは、大変ありがたいですね。」と語ります。

また、平常時に運用している「FREESPOT」についても、こどもたちが町民センターで利用したり、こどもたちが屋内温水プールでスイミングの指導を受けている待ち時間に親が利用したりと、日常生活の中で活用されるシーンが増加。広域体育館に関しても、多くの人々が集まるレスリングの大会などにおいて、さらなる活躍が期待されています。


取材後記

山々の緑が美しい、風光明媚な秋田県五城目町。職人の町らしく、五城目町役場内にも見事な木工芸品が並んでいました。五城目町では移住定住にも力を注いでいるそうで、「こんな自然豊かな場所で暮らしてみたい!」と感じさせてくれる魅力が詰まっています。こうした自然にあふれたな地域だからこそ、防災Wi-Fiのような緊急時の備えが重要になるのだとも言えるかもしれません。


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