4つの貸工場に分散していた設備・人材・業務を新工場に集約。 Wi-Fiとクラウドの活用で情報共有を強化し、顧客サービスを向上。

株式会社クラフト 様

株式会社クラフト 代表取締役 丹下康彦氏(写真右)と株式会社ハナブサネットワークス 専務取締役 石塚力氏(写真左)

真空蒸着装置を製造・販売する株式会社クラフト(以下、クラフト)は、2018年11月に初の自社工場を建設。本社および関連会社との情報共有を強化するために、敷地全域で利用可能なWi-Fi環境を構築しました。Wi-Fiとクラウドの活用により、社内における図面や写真・動画の確認作業はもとより、客先の工場で発生したトラブルの状況把握もスムーズに。少数精鋭体制ならではの迅速かつ丁寧な対応をさらに強化するとともに、従業員の福利厚生にも役立てています。

概要

顧客が求める真空蒸着装置をフルオーダーメイドで提供

静岡県御殿場市に自社工場を新設

設計・製作から、オペレーター育成・メンテナンスまで一貫サポート

クラフトは、東京都品川区に本社を構える真空蒸着装置メーカーです。製造部門を担当する神奈川県寒川町の関連会社「株式会社プロスタッフ」とともに、真空蒸着装置の設計・製作・メンテナンスおよび蒸着部材・レアメタル材料の販売等を行っています。日本全国および海外の加飾メーカー向けに、顧客が希望する製品はもとより、生産量や設置スペースなどの諸条件まで考慮した生産設備をフルオーダーメイドで設計・製作。オペレーターの育成、メンテナンス、消耗品の提供、導入後の改造など、真空蒸着装置に関わるすべてを一貫してサポートしています。2018年には、静岡県御殿場市に新工場を建設。より高品質な製品とサービスの提供、対応の迅速化など企業力強化のための環境整備を進めています。

2018年11月に竣工した新工場の事務所棟。東名高速御殿場ICまで約5kmの立地で、輸送や移動等の利便性が大きく向上した。背景には富士山が見える

分散していた生産拠点を1か所に集約

クラフトではこれまで、静岡県沼津市内に4つの貸工場を利用して、自社設計・自社製造を行ってきました。売上は順調に推移していましたが、生産拠点が分散していたことから、輸送や移動にかかる時間や、施設使用料・光熱費等等の無駄が生じていました。これを解消するため、自社工場の新設を検討。東京をはじめ全国各地への輸送・移動に便利な御殿場市に、敷地面積3,990.35㎡、床面積952.56㎡の新工場を建設しました。新工場には、情報共有の迅速化、効率化を図るためにWi-Fiを導入。事務棟、工場、駐車場など敷地内のすべての場所で、Wi-Fiが利用できる環境を整えました。

株式会社クラフト

1999年に有限会社クラフトを設立。当初の従業員は丹下氏1名のみで、真空蒸着装置の消耗品を販売する商社だったが、顧客の要望に応えるため外注先と提携し、メンテンナンスや改造業務を開始。さらに中古設備の整備・販売、新規設備の製造・販売と事業規模を拡大し、2005年に株式会社へ変更した。2007年に株式会社プロスタッフを設立し、製造部門をプロスタッフが、販売部門をクラフトが担当する新体制を構築。その後、リーマンショックの影響で倒産した外注先の技術者を受け入れ、沼津市内の貸工場で自社設計〜製造〜販売〜メンテナンスの一貫体制を確立。2019年11月、御殿場市に自社工場を新設。日本国内および海外の加飾メーカーを中心に、フルオーダーメイドによる真空蒸着装置の製造・販売とメンテンナス等の関連サービスを提供している。

本社

〒142-0052 東京都品川区東中延1-12-11

電話

03-6909-9971

目標・課題

自社工場新設を機にWi-Fiを導入

無駄な時間と労力をなくし、従業員が作業に集中できる環境づくり

自社工場新設とWi-Fi導入の経緯を説明する丹下氏。一人会社でスタートしたクラフトを、20年で業界屈指のメーカーに成長させた

クラフトでは、営業・販売を東京本社が、設計を神奈川県にある関連会社のプロスタッフが担当しています。新工場建設前は、製造を沼津市内の4つの貸工場に分けて行っていたため、6つの拠点で情報を共有しなくてはなりませんでした。「拠点間のやりとりは、以前はメールでやりとりしていましたが、図面や写真・動画などのデータ容量が大きいため送受信に時間がかかっていました。そこでクラウドサービスを導入したのですが、貸工場では通信設備が不十分で、時間の無駄は解消できていませんでした。」と、当時の状況を語る株式会社クラフト 代表取締役 丹下康彦氏(以下、丹下氏)。「新工場ができ、製造を1か所に集約したことで、拠点は3つに減りましたが、さらに情報共有を強化するためにWi-Fiを導入することにしました。無駄な時間と労力をなくすことで、従業員が作業に集中できるようになります。対応が早くなればお客様にも喜んでいただけますし、それが当社の強みになると考えました。」(丹下氏)

解決策

敷地内のすべての場所でWi-Fiが利用できる環境を構築

導入商品

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
法人様向け無線LANアクセスポイント

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
-25~55℃・IP55対応
防塵・防水耐環境性能 法人様向け無線LANアクセスポイント

レイヤー2 Giga PoEスイッチ

3台の無線LANアクセスポイントで敷地全体をカバー

「WAPM-1266R」「WAPM-1266WDPR」を導入した経緯を説明する石塚氏

Wi-Fi導入にあたって丹下氏が希望したのは、敷地内のすべての場所でインターネットが利用できること。依頼を受けた株式会社ハナブサネットワークス 専務取締役 石塚力氏(以下、石塚氏)は、バッファローの無線LANアクセスポイント「WAPM-1266R」と「WAPM-1266WDPR」による導入計画を提案しました。「ご依頼をいただいた時には、まだ工場が未完成で、設備などが全く入っていない状態。今後どう使われていくかも読めない状況でしたので、電波強度・クライアント同時接続台数ともに余裕のある機器をお勧めしました。工場内の駐車場側の壁に『WAPM-1266R』を2台設置し、工場全体に電波が届くことを確認。工場の周辺もそれでカバーできましたが、さすがに駐車場全体には届かなかったので、工場の外側の壁に耐環境性能モデルの『WAPM-1266WDPR』を追加。計3台の無線LANアクセスポイントで約4,000㎡の敷地全体をカバーすることができました。」(石塚氏)

工場の駐車場側の壁に2台の「WAPM-1266R」を設置し、工場内とその周辺をカバー。
「干渉波自動回避機能」搭載で工作機械が発する電磁ノイズの影響を受けずWI-Fi通信が可能。

工場の外側の壁に耐環境性能モデル「WAPM-1266WDPR」を設置し、加工室と駐車場をカバー。-25~+55℃まで対応の「WAPM-1266WDPR」なら、最低気温が-5℃を下回ることもある御殿場の冬にも耐えられる。

株式会社クラフト新工場のWi-Fi環境。2台の「WAPM-1266R」と1台の「WAPM-1266WDPR」で、工場、加工室、駐車場を含む敷地全体をカバーしている。工場会議室に設置されている「BS-GS2008P」1台で3台の無線LANアクセスポイントへ給電。事務所棟内は、モデム/ルーター搭載のWi-Fi機能でカバーしている。

効果

Wi-Fiとクラウドの活用で業務を効率化

さらに効果的なWi-Fi活用方法を検討

客先のトラブル状況把握がスムーズに

4つの貸工場から必要な機械等を移設し、Wi-Fiの設置工事も完了、2018年11月から新工場での製造業務がスタートしました。機械・設備と技術スタッフが1か所に集まったこと、敷地内のどこで仕事をしていても手軽にクラウドを利用できるようになったことで、業務効率が大きく向上しました。
 「本社やプロスタッフとの情報共有はもちろん、客先とのやりとりも非常にスムーズになりました。例えばお客さんの工場でトラブルが発生した時に、以前は電話で説明を受けて、現地へ飛んでいき原因を特定、必要な部品を用意してから再度対応に向かうという面倒なことをやっていました。技術者の方からその時の状況や原因、必要な部品などを説明していただいても、うまく意思疎通ができずに、間違った部品を持参してしまったこともありました。今はお客さんに写真や動画を撮って送ってもらえば、短時間で状況を把握でき、すぐに対処ができる。状況を正しく把握でき、余計な手間や時間がかからなくなったのは、お客様にとっても、うちにとってもありがたいことです。」(丹下氏)

将来の真空蒸着装置のスマート化も視野に入れて

近年、産業機械の自動化が進み、クラフトが製造する真空蒸着装置もボタン一つで動かせるようになりました。しかしそのことが逆に、トラブル発生時の対応を難しくしているといいます。
「今の機械は専門的な知識がなくても大丈夫。極端なことを言えばパートのスタッフさんでも動かせますから、最近の工場には現場に機械のことがわかる技術者がいないんです。そうなると、トラブルが起きた時に対処の仕方がわからない。うちへ連絡していただいても、状況をうまく説明することができないんです。そういう時に役に立つのが、先ほどお話した写真や動画のやりとり。そこで、大量の写真や大容量の動画もスムーズに送受信できるWi-Fiが役に立つんですよ。」と客先の事情について説明する丹下氏。
「真空蒸着装置のようなローテクな機械も、これからは遠隔操作ができるようになるなど、スマート化が進んでいきます。その時にはまた別の形でWi-Fiを活用することになるだろうと考えています。またWi-Fiは業務だけでなく、従業員が休憩時間に利用するなど、福利厚生の一環としても活用できます。さらに効果的な活用方法をこれから考えていきたいと思います。」(丹下氏)


取材後記

一営業マンとして消耗品の販売を行っていた丹下氏が、機械のメンテナンスから、設計・製造へと事業を展開することになったのは、とある顧客からの要望がきっかけ。「心中覚悟で丹下さんに任せる」とまで言ってくれた相手の思いに応えようと、外注先を探し、中古設備に目を付け、技術者を集めてきた。それが会社の発展につながってきたのだといいます。そうした経験をもとに開発されたフルオーダーメイドと一貫サポート体制を、さらに充実させるために新設された自社工場。丹下氏の次なる挑戦に、当社の製品がお役に立てることを心から嬉しく思います。


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