無線LAN活用で介護記録を情報共有。入居者の「睡眠状態」も可視化し、生活習慣に見合ったケアプランを策定
特別養護老人ホーム グランアークみづほ様

慈雲福祉会の猪飼容子氏
グランアークみづほは、2019年4月に開設したユニット型特別養護老人ホーム。開設時より「看取り介護」の提供を想定し、最期の瞬間まで心のこもったケアを行うため、ICTを積極導入。介護データをタブレットで記録し、現場の意識統一のためにスタッフ間で情報共有を図っています。入居者の睡眠状態を可視化するシステムも連携させ、それぞれの生活習慣や体質、希望に応じてケアプランを策定。人・設備の両面から「ぬくもりのある空間」の創造に努めています。膨大なデータをリアルタイムにやり取りする必要性から、施設内全域で40台の機器が安定して同時接続できる無線LAN環境を構築しました。
概要
開設時より自分らしく暮らすための環境を整備
介護履歴や睡眠状態のデータをタブレットに記録・蓄積
適切な距離感を保ち、自立心を尊重したケア
介護や睡眠の記録をタブレット端末でサーバーへ蓄積
特別養護老人ホーム グランアークみづほ

愛知県一宮市で保育・介護事業を展開する慈雲福祉会が運営。愛知県にあるグループ施設「アルメゾンみづほ」が入居者が最期まで心豊かに過ごせる「看取り介護」をいち早く採用。その取り組みが認められ、科学的介護の実践を提唱した故・中村博彦氏の功績をたたえて設置された「中村ひろひこ賞」で最優秀賞を獲得しました。「その人のニーズに寄り添いながら、穏やかな日々をお過ごしいただくために、心のこもったケアを追求します。」を理念に、自立心を尊重する個室型介護を提供。「眠りの質」を可視化し、そのデータをもとに入居者の生活習慣に見合ったケアプランを立てるなど、先進的な取り組みを進めています。
所在地
〒140-0004
東京都品川区南品川4丁目2番32号
電話
03-6717-6022(代表)
目標・課題
ICTなしでは作業効率が悪く、昼夜の引き継ぎも困難
睡眠状態を把握して一人一人に最適なケアプランを立案
介護スタッフ・事務間での情報共有が課題に

入居者ごとのケアプランをどう作るかも課題でした。それぞれに適したケアプランを立てるためには、根拠のあるプランを作成する必要があります。しかしながら現場の記録が不安定ではケアプランも非効率になってしまう。この時着目したのがICT活用による「睡眠の質」の見える化でした。「例えば、睡眠の質と認知症には相関があると言われています。日々の体調にも睡眠が大きく影響するため、睡眠の質が分かれば、それに応じて生活リズムを調整するなど、最適なケアプランが立てられるようになります。しかし頻繁にベッドを覗きすぎて、逆に眠りを邪魔してしまったら本末転倒。眠りの深さや周期など、睡眠の見える化と分析ができるICTの導入を検討しました。」(猪飼氏)
解決策
カルテと睡眠センサー、ナースコールをシステム連携
全館で安定して通信できる無線LANアクセスポイント
導入商品
睡眠データに異常があるとナースコールで自動通知

複数システムの連携による通信データが膨大なため、重要となるのが無線LANの品質。個室・浴室・交流スペース・事務室など、館内のあらゆる場所で利用できるのはもちろん、複数スタッフの同時接続に対応し、アラート連携などリアルタイム性も求められるため、通信の安定性が必須条件でした。そこでバッファローの無線LANアクセスポイント「WAPM-1266R」を20台導入しました。タブレットやPCなど40台が同時接続可能で、外部からの干渉を回避する機能も搭載。無線電話機や診察機器などの多いグランアークみづほにも最適な機種でした。1階の業務フロアに計6台、5階のショートステイフロアには計2台、24個室が並ぶ居室フロア(2~4階)には計4台ずつ設置し、電波の空白を防いでいます。猪飼氏は「余計な専用端末を使わず、タブレットとPCだけで業務が完結するよう、導入設計にこだわりました。」と述べています。

無線LANアクセスポイント「WAPM-1266R」は、個室のある廊下の天井に設置されている。個室12部屋を2台でカバーし、合計20台が導入されている。他の機器からのノイズを検知する「干渉波自動回避機能」などを備え、安定した通信を実現する。
効果
介護現場から事務まで一気通貫の情報共有を実現
今後はネットワークカメラ導入で定時巡回も効率化
睡眠の質から体調の変化まで予測可能に
無線LAN環境は今後も増強予定
今後は居室とスタッフルームをつなぐネットワークカメラの導入も検討しているそうです。「ナースコールが鳴らされたときに、カメラ越しにまずは対応、サポートが必要な場合に部屋まで行く。そうすることで無駄な巡回の負担も削減できると期待しています。」と猪飼氏。現在は介護支援システムの利用に限られている無線LANですが、将来的には入居者とそのご家族向けにWi-Fiを提供することも検討しており、そのための無線LANアクセスポイント増設も視野に入れます。猪飼氏は「私たちが最も大切にしているのは『“今”が輝けるようにケアすること』。痛みを与えないように適切なクッションをあてるいわゆるポジショニングや、水分による体内調整を行って科学的根拠に則った介護を実践したり、あるいは本人に好きなことをしてもらうために全力を尽くす。それには普段から入居者の声に耳を傾ける必要があります。そのためのICT化です」と語ります。実際、施設内を歩いていると皆「こんにちは」と明るく笑いかけてくれるのが印象的でした。

特別養護老人ホーム グランアークみづほのネットワーク構成図