最先端での分析技術の大容量データを支えるNASとして「テラステーション」を採用。バックアップ用途だけでなく、ファイルサーバーとしても活用

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 様

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 取締役 メタボローム解析事業部長 永嶋 淳 氏(左)、メタボローム解析事業部 主任 白幡 和也 氏(右)

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(以下、HMT)では、研究支援事業の解析業務で発生するデータ容量が年々増え続け、年間に数TBのデータが発生しています。再利用可能な形で安全にデータを蓄積することを課題としていたHMTでは、2008年頃から従来のファイルサーバーからNAS製品に切り替え、バッファローの「テラステーション」シリーズを採用。さらに2016年6月には、ハードウェアRAID搭載Windows Storage Server搭載モデル「テラステーション WSS HR」(24TBモデル)を2台導入し、合計22台が稼働中です。

概要

慶應義塾大学から生まれたバイオベンチャー

メタボローム解析を行う研究支援事業

慶應義塾大学の鶴岡タウンキャンパスから生まれたHMT

山形県鶴岡市にある慶應義塾大学の鶴岡タウンキャンパス

2003年に設立されたHMTは、山形県鶴岡市の慶應義塾大学先端生命科学研究所で培われたメタボローム解析技術をベースに生まれたバイオベンチャー企業で、2013年には東証マザーズに上場している会社です。観光と農業が中心だった鶴岡市や庄内地方において、慶應義塾大学先端生命科学研究所とHMTは知育産業の発展という面で地域に大きく貢献してきました。

また、毎年夏休みには、庄内地方の小学4年生~6年生を対象として、科学のおもしろさを伝える「こども科学実験教室」を開催。科学の発展と次世代の科学を担う人材の育成に寄与することを目的に、2009年にメタボロミクス先導研究助成事業を開始しています。

大学や企業の研究を支援

HMTでは、研究支援事業(メタボローム解析事業)とバイオマーカー事業の2つを主事業としています。メタボロームとは、生物の細胞や組織内に存在するタンパク質や酵素が作り出す代謝物質のことで、ライフサイエンスの分野で2000年代から注目されてきました。HMTでは、最先端で革新的なCE-MS(キャピラリー電気泳動-質量分析法)によるメタボロームの受託解析を行い、製薬・医療・食品・化学などのさまざまな分野で大学や企業の研究室の研究を支援しています。

バイオマーカーを使った診断薬も研究開発

メタボローム解析やバイオマーカーを
使った診断薬研究を行うHMT

HMTのもう1つの事業であるバイオマーカー事業は、人の体の状態を客観的に評価するバイオマーカーを使った事業です。メタボローム研究の中からうつ病の診断に役立つバイオマーカーを発見した同社では、専門医でないと判断が難しいうつ病の診断を補助するため、測定をより簡便に行う試薬キットや検査機器の開発を進めています。

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社

2003年に設立されたヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社は、2013年に東証マザーズに上場したベンチャー企業で、庄内地域唯一の上場企業となっている会社です。2002年に慶應義塾大学先端生命科学研究所曽我教授が開発したCE-MS法を使ったメタボローム受託解析を行い、さまざまな分野の大学や企業の研究開発を支援しており、人の体の状態を客観的に評価するバイオマーカーを探索・発見し事業化を進めています。

所在地

〒997-0052 山形県鶴岡市覚岸寺水上246-2

目標・課題

年々蓄積されていく膨大なデータ

一定期間の保存が必要

クラウドやデータセンターではなく、ローカルネットワークを選んだ理由

依頼の増加で増えていく膨大なデータの蓄積が課題

膨大なデータの蓄積と活用が課題と話す永嶋氏

HMTがメタボローム解析で使っている質量分析計では、1回の測定で200MB~300MBのストレージ容量が必要になるとヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 取締役 メタボローム解析事業部長の永嶋 淳氏は説明します。1件あたり20~30の検体を解析するため、約4GB~9GBのデータ保存が必要となります。年間400~500件ほどの依頼を請けているため、1年で最大5TB程度のデータ容量が必要になってきたと永嶋氏は言います。

「創業当時は、ワークステーションにデータが溜まったら外付けHDDにデータを移動させるといった運用行っていました。当時は250GBの外付けHDD1台で約1年間利用できていましたが、現在ではお客様の数が当時の約100倍に増え、当時のような運用では間に合わなくなってきました」。

研究を深めるために一定期間の保存とメディア感覚で使える記憶装置が必要

また、解析データは、依頼してきた企業との契約で一定期間保存しておく必要がありました。契約によっても異なりますが、解析データは短くても1年、長い場合は10年間保存しておく必要があり、データを保存しておくためのファイルサーバーを導入する必要があったといいます。

また、社内研究のためにも、これまで解析してきたデータは保管するのではなく、いつでも読み出せる状態にしておきたいとHMTでは考えていました。「過去のデータは、現在でも参考にする必要があるので、読み出しやすい場所へ保存しておいて頻繁にアクセスできる必要がありました。古いデータをいつでも使える状態にしておくことは、我々の事業の中で非常に重要なこととなるため、ファイルを運用しやすく保存しつつバックアップとしてデータを保管できる仕組みが必要だったのです」(永嶋氏)。

ファイルサーバーからNASへの乗換えを決断

ファイルサーバーでデータを管理していたHMTでは、2008年にNASを利用することを決断します。「ファイルサーバーは、メンテナンスコストが高すぎることが問題となっていました。また保守費用も高い上、老朽化してしまうと部品の入手性が悪くなるという課題がありました。コストパフォーマンスを考えると、NASを利用して大容量化をしたほうがよいと考えました」(永嶋氏)。

また、大容量データを扱うため、クラウドやデータセンターを使うのではなく、バックアップも含めてローカルネットワーク内のストレージに保存して、社内の各端末から高速に利用できるようにする必要もありました。「月次でバックアップを取っていますが、データ量が多いため、クラウドやデータセンターなどのインターネットや専用線を使ったバックアップでは数日間かかってしまうのではないかという不安があります。今でも、業者からファイルサーバーの提案をいただくことがありますが、本番環境はローカルネットワークで、バックアップ先はデータセンターという提案が多いですね。クラウドやデータセンターではバックアップの時間が問題なのに加えて、HDD故障などのトラブルでリカバリー作業が発生した際、復旧に時間がかかってしまうと、我々の作業が止まってしまうことになります。そのため、ローカルネットワークでNASを利用し、バックアップ先として同じローカルネットワーク内にNASを設置したほうが利便性が高いと考えました」とヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 メタボローム解析事業部 主任の白幡 和也氏は話します。

解決策

ローカルネットワークにメインサーバーとバックアップサーバーを置く

8年前より「テラステーション」を採用

用途によってLinux搭載モデルとWindows Storage Server搭載モデルを使い分ける

導入商品

Windows Storage Server 2012 R2搭載 ハードウェアRAID搭載
法人様向けNAS テラステーションWSS HR 24TBモデル

同じ機種にローカルネットワークでバックアップを取る

HMTのメインサーバー室

HMTでは、メインサーバーとバックアップサーバーとして同じ型番の「テラステーション」を2台用意し、1台をデータ保存・共有サーバーに、もう1台をレプリケーション先に設定することでデータを二重化して保存。古いデータにもいつでもアクセスできるような体制を整えながらも保管データの冗長性を高めています。これまでに年2台ずつ、プロジェクトによっては複数台の「テラステーション」を導入しており、2016年6月には、ハードウェアRAIDを搭載したWindows Storage Server搭載モデル「テラステーション WSS HR」(型番:WSH5610DN24S2)を2台導入。現在までに計27台の「テラステーション」を導入しており、うち5台は運用を休止し現在は22台の「テラステーション」を運用しています。

HMTのバックアップサーバー室

「容量の少ない旧モデルの一部を新しい製品にリプレースして、現在は22台の『テラステーション』を運用中、メインサーバー機は計86TB、バックアップサーバー機には計96TBのストレージ容量を確保。現在約30TBのデータを保存しています」と永嶋氏は話します。

また、「テラステーション」シリーズを継続的に採用する理由について、永嶋氏は「搭載HDD容量も多くなり、新機能でパフォーマンスやセキュリティーが向上し続けているという信頼感があります。導入から現在まで安定して運用できており、コストパフォーマンスがよい製品なので、他の選択肢は考えていません。2017年度も2~4台の『テラステーション』を導入したいと考えています」と話してくれた。

HMTでの「テラステーション」シリーズの活用

2008年から「テラステーション」を採用

NAS製品を検討し始めたHMTでは、調達性のよさ、実績、ユーザビリティーの高さを考慮してバッファローのNAS製品の「テラステーション」シリーズを2008年に採用し、以降は、導入し続けています。

導入前後で同様のデータを取り扱う複数の学術機関と情報交換を行っていたと話す永嶋氏は、採用理由を次のように話します。「取り扱いベンダーが多く、入手性が高い。いざとなったらネット直販サイト『バッファローダイレクト』でもすぐに調達できる点が優位でしたね。大容量で高パフォーマンスなNAS製品であり、他社と比べてコストパフォーマンスが高いと考えました。また、ファイルサーバーに比べて、大容量・低価格でRAIDを組めて、保存データの冗長性を高められることも選択理由の1つでした」。

Linux搭載モデルとWindows Storage Server搭載モデルを使い分ける

LinuxとWindows Storage Serverの2つのOSを選択できることも、「テラステーション」シリーズが採用されている理由の1つです。「LinuxベースのNASが一般的な中で、Windows Storage Serverを選べてActive Directoryを使えるところもよかったですね。自分にとってはLinuxのほうが扱いやすいので、最初はLinux搭載の「テラステーション」を使っていましたが、アクセス制御のレベルを上げる必要が出てきたときにLinuxでは共有フォルダーにしかアクセス権を付けられないため、階層が深いところまで部門ごとや役職ごとのアクセス管理を行うときにはWindows Storage Serverを搭載した「テラステーション WSS」を使うようにしています」と白幡氏は話します。

効果

パフォーマンスと信頼性の向上

デリバリー保守選択の理由

2つの事業の将来展望

OS領域のSSDとRAID 6への対応

白幡氏は「ハードウェアRAID搭載でWindows Storage Server搭載モデルでありながらRAID 6を使えることで、安心感が高まりましたね」と話します。RAID 6はパリティーを2重に生成して異なるディスクに格納することでRAID 5と比べて耐障害性を高めており、2台のHDDに障害が発生した場合でも稼動し続けることができます。また、ハードウェアRAIDを搭載した「テラステーション WSS HR」は、ソフトウェアRAIDに比べてCPU負荷が少なく動作が安定しています。さらに、HDD交換時のリビルド処理も高速で復旧までの時間を最小限に抑えられます。

今回2台導入した「テラステーション WSS HR」について、永嶋氏は次のように評価します。「OS領域用にSSDを搭載しているため、HDD領域をデータ保存のみに無駄なく利用できることのほか、全体的にパフォーマンスが上がっていることを感じています。新たな機種になれば、性能や容量が上がってくるのはうれしいですね」。

機密保持にも適応できるHDD返却不要なデリバリー保守サービスを活用

白幡氏は、保守サービスをオンサイトとデリバリーの2つから選べることも高く評価しています。「バッファローの法人向け製品では、『デリバリー保守サービス』を選べるのがいいですね。サービスマンが訪問する『オンサイト保守サービス』も便利ですが、来てもらう時間を調整するなどのわずらわしさがあり、予定が合わない場合は復旧までのダウンタイムが生まれる可能性があります。長年『テラステーション』を使っていてHDD交換などは慣れてしまっているので、『デリバリー保守サービス』でHDDを送ってもらえば、すぐに交換することができます。また、バッファローの『デリバリー保守サービス』の場合、故障したHDDの発送は不要で交換用HDDの提供が受けられるサービスもラインナップされているため、機密保持の観点からデータを社外へ出すことに制約がある当社のような企業でも安心して保守を受けられる点も助かっています。HDDだけではなく、万一本体が故障したとしても、すぐに代替機を送ってもらえるとのことなので、安心して運用できますね」。

事業を拡大し、うつ病の診断薬をできるだけ早く実現したい

HMTはメタボローム解析技術を中心にビジネスを拡大していく

HMTでは、セキュリティー面の強化も今後の課題としています。「セキュリティーの脅威が大きくなってきており、ランサムウェアなどのインシデントも発生しているため、UTMやインベントリ管理の導入を進めています。また、ノートPCなど持ち出し可能なPCを利用している社員が多いため、情報漏えい対策としてNASやクラウドのみにデータを保存するオフィスアプリケーションの活用でローカルドライブ内にデータを残さないようにする仕組みづくりも検討しています」。

今後のビジネスの展望として、「研究支援事業は、今後も年率10%の成長を目指して事業を拡大していきたいと考えています。バイオマーカー事業についても、なるべく早くうつ病の診断薬を実用化させて行きたいですね」と話す永嶋氏。HMTでは、今後もメタボローム解析を中心に科学や研究を支援し、高品質な最先端技術開発を提供していく。


取材後記

最先端技術の現場でも、利用されているバッファローのNAS製品。高度で大容量なデータを取り扱う現場であるからこそ、ローカルネットワーク内で信頼性の高いハードウェアに格納する必要があり、必要なときにいつでも利用できることが重要とHMTは考えています。あらゆるビジネスの現場において、取り扱うデータ容量が増加している中で、データの常用しやすさを優先しながらレプリケーション機能によりしっかりとバックアップを取れる、そんなデータ保存方法の1つとして、NASは非常に有効なのです。


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