複数のVLANを自在に使い分け、庁舎内と拠点間の両方の無線通信を実現。無線LANの安全性や利便性の高さを痛感。
岩手県山田町役場 様
岩手県宮古市と釜石市の中間に位置し、山田湾を中心として海の幸に恵まれた風光明媚な町として知られていましたが、両市と同じように東日本大震災で大きな被害を受けました。海岸部にはまだ大津波の爪あとが深く残っているものの、官民あげての復興に向けた取り組みが進められており、役場による行政サービスもほぼ正常化しています。
概要
キャッチフレーズは「響きます ひと・海・森のハーモニー」。
豊かな海の幸をもたらしてくれる山田湾。
東日本大震災で海岸部を中心に大きな被害。
山田町についてお聞かせください
岩手県の東部、リアス式海岸で知られる日本を代表する景勝地「三陸海岸(陸中海岸国立公園)」のほぼ中央に位置する、自然に恵まれた町です。「響きます ひと・海・森のハーモニー」という町のキャッチフレーズにふさわしく、海岸部の美しさに加え、陸側にも美しく深い森が広がり、風光明媚な景観を楽しむことができます。
内海のような穏やかな湾がありますね
町名と同じく、山田湾と呼ばれます。太平洋に突き出た船越半島と重茂半島に抱かれ、穏やかな海面が広がっており、海水浴や養殖に適しています。とくにカキの養殖が盛んで、毎年4月には魚市場周辺で「カキまつり」が開催されるほど。また、秋にはこの山田湾から織笠川に遡上していくサケの姿を見ることもできます。
3月11日の東日本大震災の影響はいかがでしたか
美しい町でしたが、大震災による津波の影響では大きな被害を受けました。海に面した中心部ではほとんどの住宅が流され、避難所生活を余儀なくされた町民も少なくありませんが、現在では町民が一体となった復興に取り組んでいます。これまで全国の、実にたくさんの方々から支援や励ましをいただきました。町民を代表してお礼を申し上げます。
山田町役場
山田町は陸中海岸のほぼ中央に位置。山田湾と船越湾を擁し、その沖合は世界でも有数の漁場で、海の四季おりおりの味覚に満ち満ちています。素晴らしい景観に恵まれた三陸の大地には、有史以来忘れることができない津波が幾度か押し寄せましたが、その都度町を力強く再建されておられます。
目標・課題
津波の被害により役場庁舎と隣接施設とが断線。
当初はドコモの3Gによるネットワークで対応。
物資センターとなった公民館とのネットワーク構築が急務。
役場庁舎の被害はいかがだったのですか
高台にありましたので、1階には津波は来なかったのですが、地下が浸水してしまったため、大切な電源を失ってしまいました。発電機による電源しか得られないために業務が限定されてしまい、窓口での証明書発行といった程度の行政サービスしかできませんでした。また、役場庁舎に隣接する中央公民館とつないでいた有線ケーブルも断線してしまい、通信できなくなってしまいました。
電源復旧後はいかがでしたか
約1ヵ月後に電源は復旧しましたが、今度は、行政事務支援のための臨時職員の数が急増し、その方たちが使うパソコンの通信環境を整える必要が出てきました。事務スペースに余裕がないため会議室などで業務をしてもらったのですが、そこにはLANケーブルは敷かれていません。業務を円滑にやっていただくためにも何らかの形で対策をとらなければなりませんでした。
隣接する施設はどうだったのですか
中央公民館は送られてくる支援物資を受入れ、各避難所へ配送する役割を担う物資センターとしての機能を持たせていたので、NTTドコモさんの協力を得て、3G回線によりインターネットを介して通信できる環境を整えました。それでとりあえずは対応できたのですが、ただ、このサービスは期間限定の支援でしたので、それ以降のネットワークインフラをどうするのかという課題を解決する必要にも迫られていました。
解決策
有線LANの設置は断念。無線LANに注目。
バッファローからの申し入れを受諾。無線LANを導入。
役場庁舎と中央公民館にアンテナとアクセスポイントを設置。
導入商品
有線の復旧は考えられたのですか
時間的な余裕がなかったことと資金的な問題もあり、有線を使ったネットワークの復旧は早い段階からあきらめていました。それまで行政サービスに無線LANを使うという発想はなかったのですが、お隣の自治体でバッファローさんが無線LANを使って復旧をしているという話を耳にし、それなら山田町でもお願いできないかと考えたのです。
それで連絡をいただいたわけですね
すぐに仙台営業所の方に来ていただきました。臨時職員が使うパソコンのほとんどが無線機能内蔵タイプだったこともあり、庁舎内で無線LANを設置していただけないかとお願いしたのです。その際、ついでといっては何ですが、役場と中央公民館の間でも無線が使えないかとお聞きしたところ、できますとの答えをいただいたのです。
どのような構成になったのですか
庁舎内に無線機を置いて通信できるようにしたほか、役場と中央公民館双方にアンテナとアクセスポイントを設置していただきました。その結果、庁舎側はL3スイッチを介して無線通信ができるようになり、公民館側も無線LAN内蔵のパソコンがどこでも使える環境になりました。また複数のVLANを同時に使用し、どこにいても自分の業務に専念できるようにしていただいたのです。
効果
動画も見ることのできる通信速度と使いやすさ。
無線の安全性に対する心配を払拭、むしろ優位性を実感。
有線との棲み分けを考えながら今後の無線導入を検討。
実際にお使いいただいてどうでしょうか
それまで役場と公民館の間で使っていた3G回線での通信と比べると、動画を見ることができるほどの速さとなり、職員や派遣者、ボランティアの方々に喜んでもらいました。有線に固執していたら、こんなに早くネットワークを回復することができなかったでしょう。パソコンの位置を選ばないという点が業務をする上で大変に助かっています。
無線を使ってみての印象はいかがですか
個人用ならともかく、業務用に無線を使うという発想はなかったのですが、今回使ってみて、その使いやすさを痛感しました。セキュリティー面での心配もしていたのですが、現在ではむしろ有線と比べても遜色がないという話を聞いて安心しました。転任したり、レイアウトが変わったりした場合でも線を引きなおす必要がないというのも魅力です。
今後についてお聞かせください
いずれ現在のシステムのリプレイスをやっていかなければならないのですが、その際には無線の導入を真剣に考えたいと思っています。バッファローさんの通信機器ならVLANの一括管理もできますし、有線との棲み分けをさせながら、無線化を考えたい。それくらい今回の件では、無線に対するイメージががらりと変わりました。
取材後記
山田町様の場合、臨時職員の急増で庁舎内での通信環境を整える必要があったこと、3G回線を使って通信をやっておられ、それの期限が切れるということで声をかけていただきました。今後、災害時においてどう迅速に情報を提供し、どう早急に業務を復旧させるのか。その際に無線が果たす役割がきわめて大きいことを示す事例の一つとなりました。