「GIGAスクール構想」対応で小・中学校の無線LAN環境を教室から運動場まで強化。無線LANアクセスポイント1台あたりのクライアント同時接続数と実績がポイントに

大阪府河内長野市教育委員会様

 大阪府河内長野市教育委員会は、文部科学省の「GIGAスクール構想」に対応するため、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大の影響による臨時休校期間などに、市立小学校・中学校全20校のネットワーク環境の強化を実施。構想の「児童生徒1人1台端末」に応える、1台あたりクライアント端末40台以上の同時接続が可能な無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」を679台、また屋外設置用に耐環境性能モデル「WAPM-1266WDPRA」40台を採用し、教室や体育館だけでなく運動場でも安定した高品質の無線LAN環境を実現。ICTを活用した教育の可能性を広げることに成功しました。

取材協力

日本電通株式会社

概要

「GIGAスクール構想」にICT推進自治体として素早く対応

「児童生徒1人1台端末」に耐える無線LAN環境を全校で整備

ICTを利活用した教育を推進している河内長野市

 全国で3番目に「教育立市宣言」をしたことで知られる大阪府河内長野市は、2009年に政府が打ち出した21世紀の学校づくりを目指す「スクール・ニューディール構想」にいち早く対応。そこからの歩みを、河内長野市教育委員会事務局 教育推進部 教育総務課 課長の山崎広雄氏(以下、山崎氏)は「市立小・中学校に約2,000台のパソコンを導入し、無線LAN環境も導入し、トップクラスのICT環境を維持してきました」と語ります。このようにICTを利活用した教育に力を入れてきた同市が、2019年末に文部科学省が発表した「GIGAスクール構想」で教育ICT環境の拡充に取り組んだのは自然な流れでした。

GIGAスクール構想に応える無線LAN環境を構築

「無線LANアクセスポイントは、できるだけ高性能なものを選びたい」という早川氏

 同市ではこれまでの知見の積み重ねから、GIGAスクール構想の「児童・生徒1人1台端末」を実現するには、強力なネットワーク環境が必要と判断。河内長野市教育委員会事務局 教育推進部 教育総務課 主査の早川卓志氏(以下、早川氏)は「デジタル教材を有効活用するためにもネットワーク基盤の整備を優先しました」と説明されます。そこで同市では市立小・中学校の無線LANネットワークの刷新と強化に取り組み、高品質な環境を構築しました。

目標・課題

児童生徒全員がノートラブルかつ安定してつながる無線LAN環境が必須

デジタル教材の利活用など含め、将来性を考えたシステムを構築

“ノートラブル”で児童生徒、教職員が使えるように

 早川氏によると、これまでも河内長野市の小・中学校では教師が端末の画面をプロジェクターや大型テレビへ無線で投影したり、児童・生徒がグループ学習で十数台の端末を活用する授業を行っていたそうです。
 そこからGIGAスクール構想に対応するには、まず無線LAN環境を今度は教師と児童・生徒が1人1台のタブレットを利用できる状態へアップグレードすることを第一の課題と設定。「実際に1人1台の学習用端末を渡しても、安定してつながらないと授業になりません。」と早川氏は話します。

予算の許す限り、ネットワークを優先する方針を策定

ICTを推進している市として「GIGAスクール構想」を進めていくと語る山崎氏

 この方針について、山崎氏は「今後、1人1台が実現しても、動画などが止まってしまう事態が発生すれば台無しになってしまいます。そういったことがないよう、まずネットワークへの投資を重視しました。設備は短期間で何度も更新できません。将来を見据えたプランを構築、実現することが子供たちにとって良い環境整備になると考えました」と付け加えてます。こういった検討の結果、予算の許す限りネットワーク基盤の強化を優先し、運動場や体育館といった場所へのネット環境の拡充を含めた、1から作り直すレベルでの取り組みがスタートしました。

大阪府河内長野市

 河内長野市は、大阪府の南河内地域に位置している市で人口は約10万人です。楠木氏ゆかりの地で国宝・重要文化財が多いことから「文化財のまち河内長野」として有名でしたが、2019年に日本遺産『中世に出逢えるまち〜千年にわたり護られてきた中世文化遺産の宝庫〜』に指定されたことであらためて注目を集めました。全国で三番目に「教育立市宣言」をしたことでも知られており、子供から大人まで様々な世代の学びをサポートしています。大阪都心にも近く通勤通学に便利な立地でありながら、自然を満喫できることなどから住宅地としても人気が高い、活気ある市です。

所在地(市役所)

〒586-8501 大阪府河内長野市原町一丁目1番1号

電話

0721-53-1111(代表)

解決策

同時接続台数の多さと屋外動作の実績からバッファロー製品を選択

バッファロー製品なら無線LAN機器の台数を減らせコスト面でも有利

導入商品

11ac/n/a & 11n/g/b
DFS障害回避機能搭載
無線LANアクセスポイント

11ac/n/a & 11n/g/b
防塵・防水・耐直射日光
無線LANアクセスポイント

PoEスマートスイッチ
16ポート
ハイパワーモデル

ネットワーク管理ソフトウェア

教室や運動場で全員が安定して使えることがポイント

 河内長野市では、教育委員会のセンターサーバーと各学校がVPN網でつながり、学校内にネットワークが設置されています。各学校からインターネットに接続するには、まず、センターサーバーを経由する方式です。現行設備でデジタル教材を利活用することを考えると、まず優先したのは市立小学校13校、市立中学校7校の無線LANなどのネットワーク環境の整備でした。
 無線LANアクセスポイントはバッファローのトライバンドモデル「WAPM-2133TR」679台と、屋外への設置が可能な耐環境性能モデルの「WAPM-1266WDPRA」40台を導入。早川氏は「全国の納入実績を調べる中で、40台以上の端末が『WAPM-2133TR』1台に同時接続している導入実績があった点を重視しました。」と話します。無線LANアクセスポイント1台あたりの同時接続数が多いと全体の導入台数を減らせられるため、コストとメンテナンス面でも有利と判断されたようです。また、以前から体育教員から要望があったこともあり、体育館と運動場の環境も整備。優れた耐環境性能により屋外で安定して稼働する「WAPM-1266WDPRA」を利用しています。工事などを担った日本電通株式会社 アドバンストテクノロジー事業部 GIGAスクール推進室 室長 辻田康秀氏(以下、辻田氏)は、バッファローのネットワーク製品について、ネットワーク管理ソフトウェア「WLS-ADT/LW」対応によるメンテナンス性の高さなどを評価します。

教室には多台数同時接続に強いトライバンドモデル「WAPM-2133TR」を採用。
屋外への設置が可能な「WAPM-1266WDPRA」を運動場用として校舎壁面に設置。

河内長野市の教育ネットワーク構成図。各校の無線LAN機器は教育委員会の管理PCに導入されているネットワーク管理ソフトウェア「WLS-ADT/LW」でリモート管理されるため学校個別での管理対応を軽減できる。

効果

ピンチをチャンスに変える柔軟対応で短期間での環境構築に成功

「GIGAスクール構想」から先を見据えた準備も同時進行で開始

短期間での構築に成功。今後はネット接続部分を強化

 "コロナ禍"による臨時休校の期間に工事を進められたため、想定よりも早く小・中学校内の無線LAN環境の構築を実現。工事後の状況を「『指導者用デジタル教科書の読み込みが早くなった』といった話を聞いたり、体育の鉄棒の授業でタブレットが使われているのを見たりしてホッとしました」と早川氏は語り、「運動場だけでなく、プールや学校菜園などでも新しい活用方法が出てくるのではないかと期待しています」と付け加えます。今後は、デジタル教科書のクラウド利用が予測されていることもあり、インターネット接続部分を高速化、大容量化していく計画を進めていくとのことです。また、他の周辺市町村とも情報交換をして、地域の学校全体の教育ICT環境が大きく発展することを期待していると話しました。

「GIGAスクール構想」から先の対応も視野に入れる

 河内長野市では、構築した環境を活用したオンライン授業の研究を進めており、児童生徒も端末の使用練習を始めているようです。デジタル教科書やデジタル教材が本格的に活用される時代への備えは順調に進んでいます。この状況を見て、山崎氏は「今、教科書とノートが山のように詰め込まれた重いランドセルを背負って子供たちは通学していますが、いずれ、クラウドなどを活用して必要な教材が入ったタブレット端末を持ち、ほぼ手ぶらで通学できるような風景が当たり前になる思います」と話します。日本電通株式会社 アドバンストテクノロジー事業部 GIGAスクール推進室 シニアマネージャー 山下真弘氏(以下、山下氏)も「児童・生徒の皆さんに快適に使っていただくことがゴールだと思っています」と環境整備から先の活用までを見据えたコメントを寄せています。
 今後は、GIGAスクール構想に沿った形で、本格的に「1人1台」の状況へと推移していきます。早川氏はこの変化について「これから本市にもChromebookが導入されます。なにより、保管庫にずっと眠っている状態は避けたいですね。気軽に活用できる環境を整備していきたいと考えています」と語ります。
 以前からの教育ICT環境への取り組みが、GIGAスクール構想を機に、無線LAN環境などの大幅な強化で区切りを迎えた河内長野市。今後のさらなる発展を視野に入れ前へ進んでいます。

「児童・生徒の皆さんに快適に使っていただきたいです」と語る山下氏

「工事後が活用のスタートなのでしっかりサポートしていきます」と辻田氏


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