無線LAN導入でユーザー・ファーストという理念実現に向け、大切な一歩。
医療法人清心会 山本病院 様
私立の精神科医療機関として約100年の歴史を持ち、長年にわたって地域の精神医療に貢献してこられた山本病院様。2011年、それまでのオーダリングシステムをバージョンアップし、電子カルテの導入に踏み切られましたが、これと合わせて無線LANを導入することになり、アクセスポイントおよびネットワーク管理ソフトウェアを導入していただきました。
取材協力
株式会社 コムネットシステム様
概要
大正2年創立。約100年の歴史を持つ大阪の精神科医療機関。
ユーザー・ファーストをモットーに医療福祉サービスを提供。
医療法人の理念を実現すべくオーダリングシステムを導入。
歴史のある精神科医療機関と聞いています
1913年(大正2年)に大阪脳病院として創立されたのが始まりです。1950年に医療法人清心会として組織変更していますが、創立以来約100年の歴史を持ちます。MRIなどの最新の検査機器を備え、入院もできる精神科医療機関として地域の方々のこころの健康を担っています。
理念をお聞かせください
「地域のすべての人々にこころの健康に関するサービスを提供し、こころ豊かな地域社会づくりをめざします」「人権を尊重した安全で良質な医療福祉サービスときめ細やかな保険福祉サービスを実践します」「ユーザー・ファーストをモットーにたゆまぬ研鑽と努力を続けます」の3つを理念に医療サービスを提供しています。
病院運営のICT化についてはいかがですか
理念にうたっているユーザー・ファースト。この考えに基づく医療サービスを提供していくためには業務の効率化や医療サービスの向上につながるICT化は避けて通れませんでした。そこで2005年にオーダリングシステムを導入して紙から電子メディアへの移行を図り、そして今回、そのバージョンアップを計画したのです。
医療法人清心会 山本病院
精神医療が「入院から地域へ」という動きの中、長年にわたって地域精神医療に注力をされている病院です。医業はサービス業をモットーに患者様を第一に考えた満足度の高い医療サービスを実践されています。
目的・課題
2011年、電子カルテおよび無線LAN導入を決意。
システムとネットワークを切り分けて個別に発注。
分離発注は信頼性のみならずコスト面でも有利。
どういうバージョンアップだったのですか
電子カルテの導入に踏み切ったのです。それに合わせてネットワークを構築する必要があり、無線LANの設置を決めました。病棟で端末に情報を入力したり、見たりできるようにするには無線通信は不可避と判断したわけです。配線類で乱雑になりがちなナースステーションをすっきりさせたいという気持ちもありました。
発注をシステムとネットワークに分離されたとか
システムとネットワークは不可分なものですから、まとめて一つの業者に発注するのが普通なのでしょうが、それだとネットワークがどうしても後回しになりがちです。そこでシステムとネットワークを切り分け、別の業者さんへ発注する形にしました。もちろん業者さん同士で綿密な打ち合わせをしてもらい、導入に支障がないようにしました。
実際にやっていかがでしたか
それぞれ専門家が自分の分野に特化して取り組んだわけですから、システム、ネットワークとも非常にレベルの高いものができたと思います。まとめて発注する場合より、コストの面でも有利になりました。その中でネットワーク構築をお願いしたのがコムネットシステムさんで、同社から勧められたのがバッファローさんの無線LANだったのです。
解決策
40台のアクセスポイントと管理ソフトウェアを導入。
院内LANとインターネットを分離し、プロキシサーバーで接続。
24時間365日の常時監視。維持管理を「見える化」。
導入商品
どういう提案でしたか
病棟の1階から9階までと同じ敷地内にある地域包括支援センター緑風園とデイケアセンターとあわせて計40台のアクセスポイントを設置し、管理ソフトウェアを合わせて導入して通信環境を整えるという提案でした。バッファローさんの機種を選んだのはコムネットシステムさんが「安全性が高くコストも有利。公共施設でも実績があり、信頼性が高い」と評価していたからです。工事がしやすいということもおっしゃっていました。
セキュリティーへはどう配慮されたのですか
医療機器への影響がないように検査機器のあるフロアには設置せず、また院内LANと外部のインターネットを分離し、接続の必要があるときはプロキシサーバーを介して行う構成にしました。ファイヤーウォールもかけていますから、安全性は十分に保証されていると思います。実際に試験運用段階では問題は発生していません。
保守管理はどのようにされていますか
コムネットシステムさんに委託し、24時間365日常時監視してもらうようにしています。そのためにアクセスポイントと同時に、ネットワーク集中管理ソフトウェア BUFFALO Admin Tools BN-ADTを導入しネットワーク管理の効率化をはかっています。また、無線の場合、見えないことからくる不安がつきものですが、今回の案件ではシステムの状態を「見える化」してもらい、毎月レポートをいただく形にしています。2011年5月からテスト導入を行い、9月から本格運用を開始しています。
効果
現場の医師や看護師から高評価。
医療の質向上と医療ミスの防止に貢献。
訪問看護での利用拡大を計画。
実際にお使いいただいてどうでしょうか
ノートパソコンを約130台配り、お医者さんや看護師の方に使っていただいていますが、評判は上々です。医師の中には常にパソコンを持ち歩いている方もおられ、情報を見たり入れたりするのにいちいち診察室やナースステーションに戻らずにすむのがありがたいと言ってくださる方もいます。とにかく高評価をいただいています。
診療の質向上にもつながっていますか
精神科は他の診療科目と比べ、患者さん一人当たりの診察時間が長くなる傾向があります。その分、医師の負担が重くなるのですが、その負担やストレスが少しでも軽くなることで医療の質が向上していくことを期待しています。看護師の場合も同じです。また、情報をスタッフが共有することで医療ミスの防止につながることも期待しています。
今後についてお聞かせください
本格的な運用を始めた段階ですが、問題がなければ、いずれは訪問看護でも使っていきたいと考えています。ユーザー・ファーストという当院の理念を実現していくためにも電子カルテは不可欠ですが、スタッフに負担の少ない無線通信が可能になったことで、その理念の実現に向けた大切な一歩が踏み出せたのではないかと考えています。
取材後記
山本病院様の場合、初めての無線導入に加え、システムとネットワークの分離発注、維持管理の「見える化」といった先進的な取り組みをされましたが、情報部門が独立して専従のスタッフがおられること、その方々がシステムをしっかり把握されていること、そして病院と販売店が一体化して動いたことで先進的な試みが成功したと言えそうです。